グリー吉田大成氏に聞く、ヨーロッパ市場への大きな手応え【gamescom2012】

2012-08-18 14:42 投稿

●年末までにはグローバル市場で成果を期待したい

2012年8月15日~19日(現地時間)、ドイツ・ケルンにて、欧州最大規模のゲーム見本市“gamescom2012”が開催。会場で、イベントへの初出展を果たしたグリー(⇒関連記事はこちら)のグローバル展開のキーパーソンにお話をうかがうことができた。ここでは、グリー 執行役員 メディア事業本部長の吉田大成氏へのインタビューの模様をお伝えする。吉田氏は、『釣り★スタ』などのプロデューサーを務め、GREEソーシャルゲームの躍進に貢献、現在はグローバルメディアの戦略を手掛けている(gamescom2012開催2日目の8月16日にインタビューを実施)。

――gamescom2012に出展してみての手応えはいかがですか?

吉田 初日は、業者日で、メディアさんやデベロッパーさんがメインだったのですが、僕らが想定している以上にたくさんの方にお越しいただきまして、改めてグリーの印象が深まったのではないかという印象を持ちました。2日目に一般日が始まると、グリーブースにたくさんの方が来ていただいて、皆さんがけっこう夢中になって遊んでくださっているのが印象的でした。そういったところを見ると、「ヨーロッパでも受け入れられるんじゃないか?」という思いがあります。ヨーロッパの一般のユーザーの方にとっては、“グリー”という会社に対する印象はけっして深くはないと思うのですが、純粋にgamescomに出展しているひとつのブースとして見に来てくれて、出展されているゲームを熱心に遊んでくださる。今回僕らがgamescomに出展した目的としては、ヨーロッパでこれから事業を展開するうえで認知度を高めたいという思いがあったのですが、「出展してよかった」というのが率直な感想です。

――「ソーシャルゲームだから……」ということで、意識することなく楽しんでいる感じかもしれませんね。

吉田 gamescomにいらっしゃる方って、基本は家庭用ゲームやPCのオンラインゲームを遊びに来たお客さんだと思うんです。そんな方たちが何の違和感もなくスマートフォンを持ってゲームを楽しんでいらっしゃることがすごいことだと思います。一般のお客様には、ソーシャルゲームとか、コンソールゲームとかの別け隔てはないのかもしれないですね。

――今回のgamescomで、とくに力を入れていたタイトルは?

吉田 まずは『探検ドリランド』ですね。日本でも成功している『探検ドリランド』が、ヨーロッパでもある程度の手応えを感じられたのは収穫でした。そして何よりも『モンプラスマッシュ』。『モンプラスマッシュ』にはいちばんお客さんが並んでいたので、「これはいけるかな?」と大きな手応えを感じているところです。かわいいキャラクターがヨーロッパのゲームファンにも受けたようですね。あとは、『Wackey Motors』。試遊台のうちのいくつかは対戦ができるようになっていたのですが、皆さん楽しんでくださっていたので、「これは、もしかしてスマートフォンのひとつの新しいゲームジャンルとして、しっかりと成立するのかな」という思いがありました。『Wackey Motors』に関しては、本格的なレースゲームというよりは、デフォルメタッチでカジュアル寄りにしているのですが、結果として、それがこちらでも受け入れられることになったのではないでしょうか。

――考えてみると、ソーシャルゲームでレースというのは、あまりないですね。

吉田 そうですね。雰囲気としては、オンラインゲームに近いテイストになるかとは思うのですが、『Wackey Motors』のようなゲームが受け入れられることで、よりチャレンジしながら新しいソーシャルゲームの形を模索していけるということで、そういう意味ではすごく大きな可能性を感じました。

――『探検ドリランド』に関しては、日本と同じビジュアルで展開されて受け入れられているのが新鮮でした。たとえば、『海賊王国コロンブス』などは海外展開に合わせて、大胆にビジュアルを変更してカルチャライズを施したように思うのですが、『探検ドリランド』はあえて、カルチャライズはせずに?

吉田 はい。我々としては、いろいろと試したいと思っているんです。『探検ドリランド』はいま日本でアニメも放送していますが、海外市場ではIP(知的財産)展開も念頭に入れています。日本の人気ゲームやアニメのビジュアルは、そのまま世界でも受け入れられているケースも多いですし。

――なるほど。『探検ドリランド』に関しては、ゲームの枠を超えた、世界的なブランドとして育てていきたいということですね?

吉田 そこにチャレンジしていきたいという思いはありますね。

――手応えはいかがです?

吉田 いま、アメリカや欧州向けに実際にゲームを展開しているのですが、けっこうお客さんがついてくれているので、「カルチャライズをしなくてもよかったかな」と判断しているところです。とくに『探検ドリランド』はアジアのほうで人気になり始めていまして、スマートフォンで配信したシンガポールや台湾などでは少しずつ順位が上がっているんです。「ああ、広まりつつあるな」という手応えはあります。

――会場で流されていた、『Assassin’s Creed Utopia』や『War Corps』などの映像も美麗でびっくりしました。

吉田 そうですね。「スマートフォンでもここまでできるんだ!」という感じですね。このへんの映像美はまさにスマートフォンならではで、フィーチャーフォンではけっしてできなかったことです。リッチな映像がお好きな方には注目していただきたいタイトルです。“ソーシャルゲーム”というものの固定観念を壊すようなゲームになるかもしれないですね。ゲームファンに訴求するタイトルをリリースすることで、ファンの拡大にもつなげていきたいと思っています。

  

●各国に開発拠点を設ける真の理由とは?

――あと、GREE UKで開発スタジオを8月に立ち上げたとのことですが、なぜイギリスに開発拠点を?

吉田 世界の主要地域に開発拠点を作るというのは、グリーのグローバル戦略の一環としてあったのですが、イギリスに開発スタジオを作ったのは、人材の集まりやすさとか、アクセスのよさとかを考慮してのことです。UKに出てくるということは、ヨーロッパ圏の人たちからすると違和感がないことのようで、いまGREE UKにはヨーロッパ中から優秀な人材が集まっているんですよ。ちなみに、GREE UKは、9月上旬にはロンドン市内の“イギリスのシリコンバレー”と呼ばれるようなところに引っ越す予定です。

――いまグリーさんの世界での開発拠点って?

吉田 日本と韓国、中国、アメリカ、そしてイギリスですね。韓国スタジオで作ったタイトルは、もうまもなくリリースされる感じです。中国スタジオの作品は、じつはすでに1本日本向けに出しておりまして、これからチューニングをかけながら、徐々に展開していく予定でいます。そのほか、中国では年末から年明けにかけてタイトルをリリース予定なのですが、それは中国で採用したメンバーが作っているゲームになります。

――各国の開発スタジオは、必ずしもカルチャライズのみの拠点というわけではなさそうですね。

吉田 違いますね。各国の開発拠点はそれぞれ強みが違うと思っていまして、その強みを活かしたタイトルを作ってもらいたいと考えているんです。たとえば、日本はカードバトルが非常に得意だし、韓国だとオンラインゲームに対するノウハウが豊富です。ヨーロッパに関しては、カジュアル系が得意だったりするわけです。各国のゲーム文化に即してゲームの開発者が育っていって、各国ならではのタイトルが出てくる。それで多くのタイトルラインアップが揃えられるのかなと期待しています。

――なるほど。それぞれ開発者の感性が違うので、いろいろなものが出てくる可能性があるのですね?

吉田 そうですね。韓国はオンラインゲームが発達しているのですが、日本で成功しているモデルを教えると、それをアレンジしたアイデアがどんどん出てくるんです。そして作るスピードも早い。

――どこからから、世界を席巻するタイトルが出てくると?

吉田 可能性はあると思いますね。あと、もうひとつ僕らが強みにしているのが、開発間の情報をオープンにしている、ということです。各拠点で何を作っているのか、企画書から運営上のKPI(重要目標達成指標)までネット上で見ることができて、さらに試遊できるようになっているんです。各国で作っているタイトルを見ながら、たとえば日本のメンバーとUKのメンバーとでコミュニケーションをとって作品をさらによくしていける。各国の強みがだんだんと統合されるというか、化学反応を起こし始めるのではないかと期待しています。

――なるほど。お互いがいいタイトルを出すだけではなくて、各国のノウハウをオープンにすることによって、よいところを吸収できるわけですね。

吉田 そうなんです。各国が切磋琢磨しながら開発している感じですね。じつはこの点に関しては、グローバル展開をする上で最初から目指していた部分で、作る以上は独立性を保ちながらも情報共有もしていくということを組織作りとしては重要視していました。現地に行ってもらったスタッフには、そのへんを大事にしてもらっているところではあります。

――その成果はいつくらいに?

吉田 年内から年明けには。ソーシャルゲームのマネタイズに関しては日本がいちばんよく理解していると思うので、そこを各拠点が吸収して、新たなソーシャルゲームが出てくるのが年内とか、年明けになるのかなと。そこで、いくつか結果を出せればいいなと思っています。

――では、5月にグローバル展開を果たしたGREE Platformの現状を教えてください。

吉田 実際にグローバルプラットフォームを展開してみて、まだテスト段階でチューニングをやり始めているところも多いのですが、ぼちぼち各国のランキングに入り始めている感じですね。そこで得たノウハウを全ゲームで展開することによって、全世界で受け入れられるような結果が出るのではないかと思っています。

――見つかった課題みたいなものはありますか?

吉田 ありましたね。ひとつは技術的な部分で言いますと、ネット環境がいい国と悪い国があるということです。ネット環境の悪い国に対しては、なるべくアプリの通信時間を少なくしたり、通信時間そのものを減らすことによって、ユーザーさんの継続率もぜんぜん変わるということがわかっています。あとはゲームの遊びかたのサイクルです。日本だと1回につき5分~7分を複数回という感じなのですが、ヨーロッパだと1回のプレイサイクルが15分~30分くらいという方が多いんです。5分くらいで体力がなくなると、「ぜんぜん遊べないから……」ということで、辞められてしまう。15分以上遊べたほうが、つぎのモチベーションにつながるみたいなんです。そういう意味では、地域ごとにゲームバランスも変えるといった、チューニングはでき始めているのかなと思っています。

――ああ、先ほど『探検ドリランド』に関してはカルチャライズはしないとおっしゃっていましたが、カルチャライズはしなくても、もしかしたら国ごとにチューニングする可能性が高い?

吉田 そうですね。『探検ドリランド』に限らず、日本以外の地域では、ゲームバランスも含めてチューニングをかけています。たとえば、ボタンの配置を変えたり、ボタンのデザインを変えたり……といったことはちょこちょこやっています。家庭用ゲームのカルチャライズに関しては、リリースする前にいろいろと調べて、「きっとこうだろう」と想定しながら事前に変更した部分が多かったと思うんです。でも、いま僕らがやっているのは、リリースしてみてユーザーさんの反応がよくなかったら改善していくという作業です。家庭用ゲームのカルチャライズとはぜんぜん違う。ユーザーの利用状況に応じてカルチャライズできるというのが、ソーシャルゲームの強みかなと思っています。

――出したものでも、結果がよくなかったら果敢にカルチャライズすることも辞さない?

吉田 もちろんです。たとえば、チュートリアルなんかも、日本と同様に5分くらいで設定すると翌日再びアクセスしてくれる率がものすごく悪くなってしまうんですね。それが15分、30分と伸ばすと、どんどんアクセス率が上がっていく。「ああ、こういうことなんだ!」という気づきがありました。そのへんはやってみないとわからないことです。そのへんの試行錯誤は、あえて日本で展開していたタイトルをそのまま海外で出すことで得られたデータなので、まずは日本で成功したものを海外でも投入してみるという戦略は、そういった意味では意義のあることだったと思っています。そういった意味も含めて、海外展開に関しては、大きな手応えを感じています。

――その手応えが確信に変わるのはいつごろに?

吉田 (笑)。僕自身としては、早く結果を出したいというのはありますが、タイトルが出揃う年内くらいまでには、成果が出てくるんじゃないかな。ご期待ください。

(C) GREE, Inc.

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