人の感情で動く不思議な”necomimi(ネコミミ)”がAndroid非対応になったワケ
2012-04-27 10:44 投稿
●Android非対応となった理由とは? 開発秘話に迫る!
先日、ニコニコ生放送で行われた“ニコニコ超会議”の発表内で、脳波で動くネコミミ『neurowear Vol.1 “necomimi”(以下、necomimi)』が2012年4月28日から幕張で行われる“ニコニコ超会議”で発売されることが公表された。”necomimi”はリラックスと集中のふたつの脳波を感知して、ネコミミがクルクル回ったり、前に倒れたりと、ユーザーの精神状態を表現できる日本生まれの不思議なアイテム。昨年の東京ゲームショウ2011に出展された際は、“Android端末で脳波をモニターできる”機能があったのだが、“ニコニコ超会議”で発表されたものはスタンドアローンタイプ。「あれ? Androidとの連動機能はどこに?」という疑問が……。今回は、そんな疑問を解決するために、開発元のneurowearにインタビュー取材を行ってきた。
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neurowear プランナー 加賀谷友典氏 | neurowear プロデューサー 神谷俊隆氏 |
●試行錯誤と工夫の繰り返し。necomimiの完成は奇跡だった
――まずは、necomimiの発売決定おめでとうございます! 今回リリースされるものは、スタンドアローンタイプということですが、半年ほど前はAndroidとの連動を計画されていましたよね?
神谷氏(以下、神谷) そうなんですが、今回はAndroidとの連動機能をハズしました。これはものスゴイ大きな意思決定でしたね。ホントにこの意思決定はデカくて、去年の東京ゲームショウまでは、タブレットで脳波が見えていることが意味があるんだろうという仮説で動いていたんですよ。でも、東京ゲームショウでは人が多すぎてタブレットが追いつかなくて(笑)。でも、皆さん楽しんでくれて、笑顔になってくれていたんですよね。
加賀谷氏(以下、加賀谷) 我々は、Androidタブレットで脳波をモニタリングができるからおもしろいんだろうと、思い込みみたいな感じを持って動いていたんですよね。でも、東京ゲームショウでモニタリングしなくてもみんな楽しんでくれて、「結局は、近くに人がいたり、鏡があればそれでいいんじゃないの?」っていうことに気づいてしまってんですよ(笑)。
神谷 Androidを持っていない人もたくさんいますしね。より多くの方に楽しんで、使ってもらえるように、スタンドアローンにしました。あとは、コストの問題もあったんですよ。我々は、いろいろやりたかったのですが、Bluetoothを使ったスマートフォンとの連動をやってしまうと、目標としていた1万円を切る価格を実現するのが難しかったんです。
▲こちらは製品版として発売されるバージョンのひとつ前のタイプ。プロトタイプに比べ大幅に軽量化されている。
――今後、Androidとの連携モデルがリリースされる可能性はありますか?
神谷 もしかしたら作るかもしれませんが。ちょっと明言はできませんね。
――今回はニコニコ超会議での販売となっていますが、その後量販店などでも販売する予定はありますか?
神谷 そこはまだ未定ですね。ニコニコ超会議ではかなりの数を用意してはいるので、来場していただいた方でしたら買えるとは思うのですが……。
加賀谷 確か10万人くらいの来場者数でしたよね? だから、ニコニコ超会議で全部はけてしまうのか、全然読めなくて。
神谷 ひとりで何台も買う人も出てくるでしょうからね(笑)。生産しているもののすべてをニコニコ超会議に運びこむので、来場していただければ買えると思いますよ。超会議後は、海外販売用として生産していく予定ですので日本ではしばらく在庫切れ、ということになるかもしれません。
――Youtubeの再生回数も200万回を超えてますし、欲しい人はかなりいるんじゃないですか。僕は買いますよ!
神谷 ありがとうございます(笑)。もし売り切れてしまっても、夏くらいには流通し始めるとは思うんですけど。ニコニコ超会議が、necomimiを手に入れる最大のチャンスであることには、間違いないですね。
――さきほどコスト面の問題について触れていらっしゃいましたが、ほかにもゲームショウで出展していたものと変わった点はありますか?
加賀谷 そうですね。ゲームショウに出展したのは、採算度外視で作ったプロトタイプだったんです。ほかにもフランスとかいんなところで出展させてもらってるうちに、製品化をご要望いただくことが増えてきて。necomimiの製品化でいちばん苦労したのが、コストを抑えて素材と機構の安全性、耐久性をいかにキープするかだったんですね。使っているうちに壊れてしまったこともあって、necomimiが製品化されるまでに、コンセプトモデルも含めて最終的に8バージョン作りました。
神谷 市販するにあたって、耐久性っていうのは大事ですからね。あとは、重さをどう軽くするかとか、電池をどうするかなどでも悩んで、何度も変更しました。たとえば、バッテリーを使用するとなると、リスクをゼロにできないんですよね。ユーザーさんがnecomimiを落としてしまって液漏れしたり、熱を持って爆発したりすることも考えられますから。いくら可能性が低くても、絶対にゼロにはならない。それで、安全性を重視するために、製品版のnecomimiでは、単4電池4本で動くようにしました。
加賀谷 あとは、大量生産をするために機構を変えましたね。プロトタイプは、その辺をある程度無視して作れたんですけど。
神谷 その機構をどう作るかが、一番のハードルでしたね。実は、最初は1万~2万円くらいで販売できればいいなと思ってたんですよ(笑)。でも、世界中から反響がスゴくて。「それじゃあ世界中で流行らせようじゃないか」と考えると、やっぱり100ドル、1万円は切らなきゃならんと。となると、大量生産のために安価で安全な機構、構造を考え出さなければいけない。ホントにいろいろ試行錯誤をしました。設計を含めて、ほとんどいちから作り直した感じですね。
加賀谷 構造の大変更をするにあたっては、プロトタイプでできたユーザーの体験を損なわない、ギリギリのラインを見つけるのに、ものすごい労力を要しましたね。特に高かったハードルは、モーター数の変更。プロトタイプでは、片耳にモーターを2個配置していたのですが、でもそれだと重いし、コストはかかるし、大量生産の障害にもなる。で、工夫に工夫を重ねて、なんとかモーター1個で片耳を動かせるようにしたんですよ。もちろん、ユーザーの体験が損なわれないような動きを実現しています。
神谷 製品版では耳の取り外しもできるようになってますね。これは、軽くするという意味合いも込めてなんですが、耳のアタッチメントを付け替えて、違うカラーバリエーションでも楽しめるようにしています。素材感にもスゴイこだわりましたね。
――耳が取り外しできるとなると、ユーザーさんで自由にカスタマイズできそうですね。オリジナルの耳を作成して取り付けたり。あと、この取り外した耳って洗えるんですか?
神谷 あぁ、洗えるのかな? ちょっと気づかなかったな(笑)。現時点では、試しに洗ってみてくださいとしか言えないですね(笑)。あと、デコレーションだったり、オリジナルの耳の作成などのカスタマイズはユーザーさんに自由にしてもらいたいですね。ぜひとも、個性あふれるカスタマイズをして楽しんでいただきたいです。
▲ネコミミ部分は取り外し可能。製品版には写真のホワイトが同梱。別売りで複数のカラーバリエーションが用意されている。
――カスタマイズされたnecomimiのコンテストなんていうのも楽しそうですね。
神谷 やってみたいですねー。ファミ通さんでやってくださいよ(笑)
――話は戻りますが、そういえばこのバンドもプロトタイプではなかったものですよね?
神谷 そうですね。やっぱりいくら軽くしても、重さをゼロにはできませんから、激しく動くと頭からズリ落ちてしまうんですよ。それに、頭の形って人によって違うじゃないですか? ネコミミの部分がその人の頭にジャストフィットすればズレ落ちることもありませんけど、そうでないと安定しませんからね。で、落下を防いで、誰でも安定して付けられるように、後頭部の位置、目立たない場所にバンドを取り付けました。
▲バンドが付けたことで装着時の安定感がアップ。実際付けるとモーターの駆動音が意外と心地いい。
加賀谷 いやぁ、いろいろとホントに大変でした(笑)。苦しかったというような大変さではなく、楽しい大変さでしたけど。発売までこれたのは、奇跡みたいなもんです。
――そういえば、ネコミミっていうと日本っぽい文化ですけど、海外からの反響がスゴイですよね。
神谷 むしろ、海外からの反響のほうがスゴイですよ。Facebookでのリアクションも外国からがほとんどですし。
加賀谷 日本からは「売ってくれ」とかいう接触はないですもんね。ぼくらが英語でしかやってないからかもしれませんけど。
神谷 なんでかわからないけど、ロシアからの反響が多いんですよね。若干暖かそうに見えるからかな(笑)。
加賀谷 意外に、中国からはリアクションないよね。Facebookがないからかな?
神谷 あぁ、そうだね。でも、やっぱりJAPAN EXPOに出展したから北米、ヨーロッパからの反響が一番大きいかな? あとはなぜかブラジルでも話題みたいで、テレビの取材が来ましたね。
――そこまで海外メディアに注目されたのって、何か理由があるんですか?
神谷 これは仮説なんですが……。日本と海外との報じかたに理由があるのではないかと。海外メディアは「これはどういったコンセプトで、どういった未来を想定して作られたのか」という報じかたをしていたんですね。それに対して日本は「動く。カワイイ! 芸能人が反応した!!」で終わるんですよ。そうなると、やっぱりユーザーさんへの印象というか刺さり方は違いますよね。海外の人は、ただ食いついて消費するだけの日本と違って、そこから先を考えさせ、未来を想像させるような報じかたをしたので、そのせいじゃないかなと。
加賀谷 日本のメディアはnecomimiをキワモノとか、お笑い系みたいな扱いで終わりましたからね。
――もともと、ターゲットとして海外も視野に入っていたんですか?
神谷 はい。そもそも”言葉の必要ないコミュニケーション”というものを考えて作り始めたのがきっかけなので。
加賀谷 これ自体は、コミュニケーションツールでなく、コミュニケーションのきっかけを作るツールなんですよね。付けているだけで会話は進みますよね(笑)。
――どういう人たちに、necomimiを使ってもらいたいと考えていますか?
神谷 それはもう、すべての人に付けてもらいたいですね。necomimiを人の新しい器官の一部として使ってもらいたいです。
――加賀谷さんはいかがですか?
加賀谷 ぼくは、あの日本の殺伐とした電車の中で付けてもらいたいですね(笑)。いろいろなイベントを通じて、ものすごいたくさんの人にnecomimiを体験してもらったんですが、necomimiを付けた人はみんな笑顔になるんですよね。イベントなんで、みんな誰かしら友だちとかと来ているわけですが、そこで笑いが生まれるんですよ。だから、あのコミュニケーションが完全に閉じてしまった電車内とかで付けて、そこをこじ開けてもらいたいなぁと。あとは、大人しい人や引っ込み思案な人に付けてもらって、話のきっかけにしてもらえるといいなぁって考えてます。それと、神谷さんと同じく、未体験の人にはぜひとも体験してもらいたいですね。
――ところで、これは集中している状態やリラックスしている状態の脳波を読み取って動くんですよね? これを完璧にコントロールすることってできますか?
加賀谷 たとえば、ずっと付けていて「自分はこういう事を考えていると集中して、こういう事を考えているとリラックスするんだ」と認識ができれば、コントロールできるかもしれませんね。ある人は、サッカーのPKを決めるイメージを固めれば、集中できるって言っていました。なので、とにかく長時間付けて、イメージの訓練をすれば誰でもコントロールできると思いますよ。
神谷 でも、もともとのコンセプトが「人が緊張しているのかリラックスしているのかをダダ漏れにさせる」というものなので、コントロールをするというのは我々の想定している利用法とは違うんですよ。でも、想定していない使い方をしてもらえるっていうのは、楽しいことなので、ちょっと期待しています。
以上でインタビューは終わりとなったのだが……。なるほど、Androidとの連動を諦めた裏には、いろいろな苦悩があったようだ。いや、それ以外にもかなりの試行錯誤が繰り返され、想像もつかないほどの工夫がこなされていることが、今回の取材で判明した。Androidとの連携機能がなくなってしまったのは残念だが、それでも筆者の”欲しい”という欲求は収まらない! どうしてもnecomimiを手に入れたいという人は、ニコニコ超会議に行くっきゃない!!
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