海外で売れるためにどうするか? 国内トップクリエイターが考えるグローバル展開【GREE Platform Conference 2012】

2012-03-23 22:45 投稿

●盛り上がらないわけがない、豪華メンバー

2012年3月23日、GREEにアプリなどを提供するパートナー企業が集って公園などを行うカンファレンス“GREE Platform Conference 2012”が都内で開催された。ここでは、パネルディスカッション“開発者の視点から見るグローバルプラットフォー ム”の模様をお届けする。今回の出席者は以下のとおり。

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<モデレーター>

 

芸者東京エンターテインメント株式会社 CEO ファンタジスタ
田中 泰生氏

<パネリスト>

 

スクウェア・エニックス モバイル事業部プロデューサー
安藤 武博氏

 

セガ オンラインエンタテインメント研究開発部 戦略企画セクション セクションマネージャー
椎野 真光氏

 

株式会社カプコン 東京制作部 ソーシャル事業室長兼 開発運営室長
杉浦 一徳氏

 

グリー株式会社 執行役員メディア事業本部長 兼 開発本部副本部長
吉田 大成氏

本セッションは、昨年8月に行われた“GREE Platform Summer Conference 2011”でも白熱したパネルディスカッションを展開したこともあって、開催前から注目を集めていた。モデレーターの田中氏は前回と同様。パネリストにも前回のメンバーである安藤氏、椎野氏が名を連ね、さらに今回はグリー、カプコンの中心人物ふたりが加わっている。まずは各自の簡単な自己紹介から。

田中 まずはテーマが“開発者の視点から見るグローバルプラットフォーム”ということで、少し楽屋でも話してきたんですが、「正直まだこれからだよね」という感じでした。全体的にかなりざっくばらんに話していくことになると思いますが、45分間よろしくお願いします。

安藤 僕はいきなり宣伝します(笑)。あ、そのまえに皆さんニンテンドー3DSの『パルテナの鏡』やってますか? すごくおもしろいのでやってみてください(笑)。『パルテナの鏡』については、ファミ通Appで連載中のブログに来週書きますので、そちらもぜひ読んでみてください。話を戻して、最近やってることをざっと説明しますね。まず“シシララオーバードライブ”という音楽レーベルをスタートさせました。皆さんポカーンとされていると思いますけど、来年のいまごろはいまスクリーンに映ってる女の子が初音ミクちゃんみたいな人気者になってると思います。この子はいろんなゲームに跨って、レーベルのイメージキャラクターとして活躍してくれるので、目にする機会はすごく増えると思います。

僕自身は『ケイオスリングスII』を出しました。おかげさまでちゃんと売れてくれましたけど、TOPセールスでは『パズル&ドラゴンズ』に勝てなかったですねー。2位まで行ったんですけど、フリートゥプレイに勝てなかったですね。ただ、ひとつおもしろかったこともあって、『(ケイオスリングス)1』と『(ケイオスリングス)オメガ』をこのタイミングで値下げしたんですよ。そしたら、リリース当初のスタートダッシュよりも売れたんです。これ2年前だったら3位まで独占状態くらいの売り上げだったんですけど、それでも届かなかった。売りかたをかえていかないといけないですね。ただおもしろさは変えたくないので、そのへんをどうしようか考えています。それともう1本『拡散性ミリオンアーサー』マスターアップしました。ジャンルはカードバトル系なんですけど、コンシューマーゲーム屋が本気でカードバトルを作ったらこうなるというくらい気合いを入れて作りました。今日はできたての動画を持ってきたので見てください。自己紹介でだいぶ時間使っちゃってスミマセン。これだけ流したらもう終わりにしますから(笑)。

ということでここで世界初公開という『拡散性ミリオンアーサー』のプロモーションビデオが公開。ヒャダインが書き下ろした主題歌をバックに、安藤氏が“本気で作った”というアニメーションが流された。

田中 すごいな……。これアニメやるんですか?

安藤 いや、やらないですよ。これだけのために作った動画です。

田中 深夜アニメで見たいなってうくらいのすごいクオリティーですね。ではつぎは椎野さん。

椎野 僕はさっくり終わらせますよ(笑)。僕はセガのなかで“オンラインエンタテインメント研究開発部”という部署を作りまして、まずはその説明をしたいと思います。もともとは『サカつく』や『龍が如く』とかのCS(コンシューマー)の部署だったんですよ。そういう部署がちゃんとモバイルのゲームを作ろうよということではじまった部署なんです。部署のボスは皆さんご存知の名越です。名越のほうからもこの部署を作ることを好意的に了承してもらって、スムーズに進みました。『龍が如くモバイル for GREE』なんかはコンシューマーの『龍が如くオブジエンド』とアイテムの連携などを行って良い効果が産まれましたね。同じくGREEさんでは『龍が如く 絆』を3月26日サービス開始予定です。

あとは『キングダムコンクエスト』ですね。このタイトルは31ヵ国で配信して、世界250万ダウンロードを達成しました。このタイトルで使ったエンジンをもとに『三国志コンクエスト』、プレイステーション Vitaで『サムライ&ドラゴンズ』を展開する予定です。『サムライ&ドラゴンズ』は今後のVitaの勢いなんかを見る試金石だと思っていて、これは非常に重要な案件ですね。

田中 Vitaはいま何台くらい出てるんでしたっけ?

椎野 60万台くらいですね。予想していたよりは少し下回っているような気もしますけど、これから伸びてくれることを期待しています。ほかにもグローバル系のコンテンツは仕込んでいるので、そのあたりの話ができればと思っています。今日はよろしくお願いします。

田中 ありがとうございます。ではカプコンの杉浦さんお願いします。

杉浦 カプコンは2006年くらいにオンライン事業を立ち上げました。僕はそのオンライン畑でやってきた人間です。『モンスターハンターフロンティアオンライン』なんかに長く関わっていました。そのあとはソーシャル事業に力を入れて、『バイオハザード アウトブレイクサバイヴ』、『モンハン探検記 まぼろしの島』などをリリースしました。いま準備をしているのが『鬼武者Soul』。これは6月末くらいにWebでまずサービスを開始して、アプリでは秋ごろにスタートできればと思っています。戦国ものの箱庭プラスカードバトルゲームの予定です。できれば打倒『関ヶ原演義』ということでいきたいなと(笑)。カプコンは東京と大阪で開発が分かれているんですけど、東京では7~8割がソーシャル系の開発に携わっています。カプコンの中ではいちばんオンラインやソーシャルに力を入れている部署ですね。

田中 なるほど。よろしくお願いします。では最語にグリーの吉田さん。

吉田 いまはメディア事業本部というところに籍を置いていまして、春くらいに出るグローバルプラットフォームやソーシャルゲームを担当しています。プラットフォームについてはアメリカと協力しながら進めておりまして、ゲームのほうは日本、アメリカ、中国、ヨーロッパで開発中です。この春に出すプラットフォームに向けていくつかのタイトルをご用意できたらなと思っています。よろしくお願いします。

田中 いま吉田さんは何本くらいのプロジェクト見てるんですか?

吉田 ゲームは数10本くらいですね。

田中 その数じゃあ、全部見られないんじゃないですか? お話を聞いていると海外のスタジオに飛び回っているようなんですけど、あれって何をやってるんですか?(笑)

吉田 2ヶ月に1度くらいの頻度で行ってるんですけど、そこでゲームをレビューします。それはがっつり見ますね。ユーザーインターフェースやアニメーション部分や、細かい部分まで指摘します。

田中 今回世界向けの『Zombie Jombie(ゾンビ ジョンビー)』がいきなり4位に入ってすごいなーと思ったんですよ。それで海外スタジオで作るのって、どうやってクオリティーを確保するんだろうっていうのがすごく不思議に思ったんですよね。

吉田 海外の各拠点に何名かずつのスタッフは送ってまして、自分たちが日本でやってきたノウハウをしっかり伝えるということを重視しています。やっぱり小まめに見ることと、その国のよさとか特徴を理解して進めることですね。苦手なところを僕らのやり方でサポートしてあげるって感じですかね。

田中 なるほど。ありがとうございます。テーマがグローバル化ということで、皆さんにも聞いてみたいんですけど、どういう考えでゲームを作られていますか?

安藤 『ケイオスリングス』は15ヵ国で1位を獲りましたけど、まったくひよらずに作りました。あの作品は思いっきりJRPGとして作っていて、海外のマーケティングの言うことを聞いてやっていたら、ああいうふうにはならなかったですよ。作るときに海外でのウケかたとかは考えないですけど、意識的なケアはしてあげないとなとは思いますね。たとえば宗教とか人種の問題ですね。『ケイオスリングス』はバトルロイヤルっぽい内容で、ペア同士が殺し合うというゲームなんです。肌の色が同じ人が殺し合うのは外国人にはあり得ないと言われたんですよね。それでキャラクターデザインと相談したら、褐色のキャラにしてくれて、最初よりかっこよくなりました(笑)。

田中 なるほど。椎野さんは?

椎野 もともと『キングダムコンクエスト』は海外で売りたかったんですよ。だから一生懸命マーケティングをして、そういう海外の人の言うことをわりと素直に聞いてやったんですね、インターフェースはこう、タイトルはこう、と従ってやったら見事にはずれたので、あまり聞かなくてもいいかなとは思っているんですよ。ただ、国内で海外向けに売るものを出すときは、現地法人とのコミュニケーションをうまくとらないといけないなというのは感じました。

田中 いまのところ2票が「言うこと聞くな」ですけど(笑)。

安藤 おもしろさの物差しは自分たちで決めたほうがいいんじゃないかとは思いますね。

椎野 ただ、じつはですね、いまようやく海外で売れてきたんですよ(笑)。売り上げベースで国内と逆転している状況ですね。だから言うこと聞いてよかったのかもしれないです(笑)。最初はゲーム性がリーチできていなかったのかなという気がしますね。

田中 ああ、なるほど。僕はカプコンさんにも話を聞いてみたいんですけど、『モンハン』は海外であまり流行ってないですけど、それはどうして?

杉浦 『モンハン』はもうタイトル名だけで海外では少し違ったニュアンスで受け取られる部分があって、あれはもう完全に日本向けで、手を広げてもアジア圏ですね。カプコンはIPを多く持っているので、その国にあったIPを出していくという戦略が重要かなと思っています。このまえの『鬼武者 soul』の発表もアクセスがいちばん多かったのは台湾なんです。

田中 では最後は吉田さんなんですが、じつは僕は『Zombie Jombie(ゾンビ ジョンビー)』を1年くらいまえに見せてもらったことがあるんです。「こんなテイストなんだー」と思っていたら、実際にスタートしたものが全然違っていた。あれはどういういきさつがあったんですか?

吉田 1年前はまだまだ現地のスタッフが入っていなかったんですよ。それが徐々に現地スタッフを増やしていって変えていきました。ユーザーインタフェースも最終的に2~3回作り変えていまの形になりました。

田中 なるほど。ではちょっとまとめたいんですが、スクエニさんとセガさんは聞かなくていい、カプコンさんは地域で切り分けている。グリーさんは?

吉田 ふたつパターンがあると思うんですよ。全世界で受けようと思ったら純日本だけじゃだめだと思います。かわいらしいものでもある程度共通のフォーマットを作る必要があるなあと。反対にコアなユーザーに寄せて現地にあわせたグラフィックとかにするのもありですね。

安藤 逆に考えると、外国人が日本向けにゲームを作るときJRPGは作らないですよね? 作っても中途半端なものができてしますので、FPSやTPSといった得意分野で勝負するということです。

田中 今後に関しては、世界中の国の人と協力して遊べる世界版『ドリランド』のようなゲームがこの先出てくるのか、アジアなどの地域ごとにまとめるのか、どちらが主流になっていくと思いますか?

椎野 これは非常に悩みどころですね。遊び方のカルチャーが国によって違っていて、中国の方は小さなバグを見つけてそこを利用してくるんですよ。社内でももし『キングダムコンクエスト』をもう一度やるのであれば、「中国などと分けてサービスをやればよかったのではないか?」という話もあれば、「これが逆に盛り上がっていいのでは?」という話もあって、これに関しては出してみないと分からないですね。

吉田 うちは、そこは調整していきたいという思いがありますね。ゲームによって試していかなければならないので、日本と分けるゲームもあれば、世界と同じにするゲームもあって、それぞれどうなっていくのか見ていきたいと思っています。ただ難しいと思うのは、どの国も平等にアイテムの価格などを同じにするのかということです。それがいいのか悪いのかも考えていかなければならないと思っています。

椎野 いま日本だとPvP(※1)からGvG(※2)になって、そこからRAID(※3)になっている流れがあるんですが、海外だとRAIDはあまり受け入れられてないんですよね。競争じゃなくて、対戦じゃないとイヤという人が多いんですよ。そもそも同盟で括られるのがイヤという人が多くて、アジアは割と同盟の結束が固く、北米とは行動パターンがぜんぜん違いますね。
※1:プレイヤー VS プレイヤー
※2:同盟 VS 同盟
※3:プレイヤーどうしで協力してモンスターを倒す

田中 では、「みんなでキングモンスターを倒そう」といったことはないんですか?

椎野 そうなると、「なんでおまえに指示されなきゃいけないんだ?」という人が出てくるんですよ。「俺は殴りたいから殴る。それができないなら同盟を出ていく」といったことが多いみたいですね。なので、遊ばれ方がぜんぜん違っていて、ひとつのゲームを考えるにしても、その辺のデザインをどういう風に割り切るかを考えなくてはならないと思います。

杉浦 僕もオンライン事業にを携わっていたんで思うんですが、農耕民族と狩猟民族ってそれぞれ個性がぜんぜん違うんですよね。極端なことを言えば、国内メーカーの某オンラインゲームを、海外の人たちにサーバーを解放した瞬間過疎化したというケースもあるんですよ。メーカーが世界中の人たちと遊ばせたいというのは“エゴ”であって、ユーザーは自分たちと同じ価値観の人たちと遊びたいんだけなんですよね。そこは僕たちはかなり気をつけて、サーバーを立てていますね。もうひとつは、世界中それぞれ法律が違っていて、国によって変わるのでひとつに集めるといっても、そう簡単なことではないのかなと。

田中 なるほど。じつはもうお時間が迫っているので、最後にお聞きしたいんですが、じつはタイトル決めで悩んでいるんですよ。グローバル展開を考えたときに、タイトルを日本と世界と共通にするのか? など、どれぐらい気を付けて決めているのかをお聞きしたいですね。

安藤 タイトルを付けるときは、まず外国人に見せる。日本人に耳障りがよくて、外国人にも耳触りがいいというように、統一ができたらそれにこしたことはないですね。『拡散性ミリオンアーサー』や『星葬ドラグニル』などの、日本人向けのターゲットのときは、アニメっぽいタイトルのほうがいいときもあるので、そういったときは日本と海外のタイトルを分けますね。ケースバイケースではありますが、外国人には必ず見せています。あとは、格好いい言葉を考えられる目利きみたいな人がいるんですけど、その人を信頼して相談とかもしてますね。

椎野 僕の場合は、タイトルにあまりこだわっていなくて、ストレートあればあるほどいいと思うんですよ。ですが、ひとつ問題があって、ストレートなタイトルだと商標をとられていることが多いんですよ。ストレートなタイトルを考えているのであれば、早めに調査しておいたほうがいいですね。凄い小さなアプリがそのタイトルの商標をとっていることもありますから。

杉浦 先ほど安藤さんがおっしゃったように、やっぱり外国人に見せるというのはよくやりますね。コンセプトやキーワードに近いもの外国人や会社の人に説明したうえで、アイディアを出してもらっています。その中からタイトルを選ぶということもありますね。あとは、うちの場合はIPタイトルが多いので、そのタイトルの後につける言葉が何がふさわしいかを考えることが多いですね。

田中 ではトリとなりますが、吉田さんはいかがですか? 『釣りスタ』などありますが、個人的にはあのネーミングは抜群だと思うんですが。

吉田 ありがとうございます。基本的にはみなさんが言われた通りだと思うんですが、僕はタイトルに入れる単語をふたつか、多くて3つに絞っています。なるべく単語はふたつにしていて、単語ふたつのうち、ひとつはモチーフや世界観の伝わるもの、もうひとつはゲームの遊び方が伝わるものを入れていますね。カードゲーム類に関してはモチーフとキーワードを足したタイトルで統一していこうと思っています。ですが、『ドリランド』に関してはエゴになってしまいますが、そのままのタイトルで続けていきたいと考えています。社内にはプロファイル専門のチームがありまして、いろんな国の方がいらっしゃるんですけど、言葉としておかしくないかを事前にチェックしていただいています。その中で、いくつか候補を挙げていただいてから決めるということをしていますね。

田中 非常にためになりました。僕の視点から見る“グローバルプラットフォーム”になってしまいましたけど、少なくとも僕にとっては有益な50分間でした(笑) 僕も頑張ってゲームを作っていきたいと思います。本日はみなさんありがとうございました。

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[注目記事]
※スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”第十四回 「『パルテナの鏡』はスマゲの何を映すのか?」

【注目】2012年3月29日発売のファミ通App iPhone&Android NO.002では、安藤氏、椎野氏に加え、アドウェイズ桑田氏、カプコン手塚氏らのぶっちゃけ対談を掲載。今年配信予定のタイトルについても語ってくれているので、要チェック!

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