iPhone版『空の軌跡』はただの移植作ではないことが判明！　開発チームを直撃取材！

●iOS版『空の軌跡』はオリジナルタイトルに！

2011年12月27日に突如、電撃発表された『英雄伝説 空の軌跡』（以下、『空の軌跡』）シリーズがスマートフォンで配信されるかもしれない！　というニュースから早1ヵ月が経過。果たしてどのような内容のものになるのか？　その続報が待ちきれないファミ通App編集部は、ライセンス契約を取得したアエリアに直撃取材。まだ制作が始まったばかりで慌ただしい開発チームに、あれこれ気になることをズバッと聞いてきました！

▲オンラインビジネス本部　エンターテイメント事業部　開発支援チーム　リーダー　畠野　貴之氏

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──では、さっそくですが『空の軌跡』の版権を取得したいきさつについておうかがいしたいのですが、いつごろから版権取得に動かれていたのですか？

畠野　そうですね、まずは『ソーサリアン』の移植を、春ごろから進めていたのですが、2011年の秋ぐらいに『ソーサリアン』のシステム的な移植がほぼ終わり、iOS版『ソーサリアン』の着地が見えてきたんですね。そのときに、「次は何を提携してやりましょうか？」という話を日本ファルコムさんと始めました。じつはそのまえから、『ソーサリアン』の出来を見せに行ったときに「つぎは何をやりましょうかね？」という話はさせていただいてたのですが、『空の軌跡』をやるという具体的な話が出始めたのは、先ほどもお話しました2011年の秋ごろになります。

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──それは日本ファルコムさんから持ちかけられたんですか？

畠野　いえ、それはこちら側から“軌跡シリーズ”をやらせていただきたいとお願いしました。やはり、日本ファルコムさんの中でもっとも勢いのあるシリーズが、『英雄伝説』の“軌跡シリーズ”だと思っております。その“軌跡シリーズ”の中でも原点となる、『空の軌跡』をiOSで描くことで、より多くの方に“軌跡シリーズ”を知っていただきたいと思いました。

──なるほど。ということは『空の軌跡』以外の『零の軌跡』や『碧の軌跡』などの軌跡シリーズも出されるんですか？

畠野　そうですね。やはり出していきたいという気持ちはあります。ですが、まだまだ先の話になるので、まずは『空の軌跡』をきちんと出して結果を残したいですね（笑）。

──そうですよね、かなり先のお話ですからね（笑）。では、実際iOS版の『空の軌跡』がどのようなものになるのかお聞きしたいのですが、現在の開発状況はいかがでしょうか？

畠野　検討を重ねた結果、そのままの移植は避けることになりました。原因として、『空の軌跡』シリーズはプレイステーション・ポータブル（以下、PSP）でも発売されていますし、iPhoneとPSPはプラットフォームは違いますが、同じ携帯機ですのでそのままの移植では納得していただけないかなと。要するに、一度クリアーしたものを最初からやり直させるよりも、新しいプラットフォームで新しい体験を提供したいと思い、移植という形は一旦棚上げにしました。世界観の設定については、現在日本ファルコムさんとお話を進めさせていただいておりまして、シリーズの隙間をつなぐ作品として、提供したいと考えております。物語は作中で触れられなかったエピソード中心になりますが、iOS版『空の軌跡』から始められた方でも、楽しめるように工夫をしていく予定です。逆に、そこから「PSP版の『空の軌跡』はどうなんだろう？」と気になってもらえるような作品にしたいと思います。肝心の主人公に関しては、現在検討中ですのでお楽しみに（笑）。

──移植作ではないんですね！　これはシリーズのファンからしたらもの凄く期待しちゃいますよね。iOS版ではオリジナルの物語になるとのことですが、『空の軌跡』シリーズは、『空の軌跡FC』、『空の軌跡SC』、『空の軌跡 the 3rd』とありますが、どこのシリーズをベースに物語が進むとかの設定はあるのですか？

畠野　そこはなかなか答えづらいですね（笑）。“FC”“SC”“the 3rd”を通して進行する時間軸というのはすごく短いので、“FC”“SC”から“the 3rd”の後日談ぐらいまでをカバーしつつ、『零の軌跡』につながる話も盛り込めたらなと思っています。

──かなりのボリュームになりそうですね。第一報には、ソーシャル性やオンライン機能を持たせるとありましたが、具体的な内容は決まっていますか？

畠野　たとえばですが、フレンドがいるとオマケで必殺技の支援があったりだとか、アイテムがもらえるとか、フレンドがいることでいろいろ恩恵が受けられるような機能を考えています。ただ、これがないと遊べないというわけではなく、フレンドがいることでゲームがより楽しくなるようにしたいと思っております。また、ゲーム内でフレンドどうしの交流できる機能も考えています。いま考えているのは、武器屋、防具屋のように“ソーシャル屋”みたいなものを作ったらおもしろいかな？　と思っています（笑）。そこに行くと、ロビーみたいになっていて、フレンド検索ができたりだとか、フレンドからクエストが受けられたりだとか、ゲームの世界観を壊さずに、ソーシャル性を取り入れたいと考えています。

──ソーシャル屋は新しいですね（笑）。やはりここで気になるのは、iOSに対応して操作性やグラフィックがどうなるか？　ということになると思うのですが、構想などはありますか？

畠野　iPhoneのようなタッチパネルは、アクションのような忙しい感じのゲームは向いていない部分もあるため、気軽に指一本でも遊べるようなインターフェースを考えています。ここはシステムやゲーム性のキモになると思いますので、シナリオと同じぐらいの重要性をもって考えています。縦持ちか横持ちか、という点でも悩んでいまして、縦持ちであれば電車の中でも、吊革につかまりながらできるので、実現できるかわかりませんが縦持ちもできれば面白いとは考えております。グラフィックに関しても、PSPの解像度に比べ、iPhoneの解像度のほうが高く、PSP版のグラフィックをそのままiPhoneに持ってきてしまうと、かなり画面が小さくなってしまうので、グラフィックの質は落とさず、iOSに対応したグラフィックで制作したいと思っております。

──さて、少しまえにライセンス契約を取得したというリリースをいただいたばかりですが、気になるのは配信日の予定！　現在の予定はいかがでしょう？

畠野　移植作である『ソーサリアン』でも、発表から10ヵ月掛かってしまったので、新規開発となる『空の軌跡』はもう少し時間がかかりそうです。今年中になんとか出したい所なのですが、正直難しいです。とはいっても、あわててリリースするよりは、しっかりといいものを作ってリリースしたいと考えております。そこに関しては日本ファルコムさんからも「時間が掛かってでもいいものを作って欲しい」との話を頂いております。

──なるほど、配信日がとても待ち遠しいです！　ちなみに、価格設定とか決まっていたりしますか？

畠野　この段階でお話するのは難しいですね。現状は未定となりますが、さすがに無料というのは厳しいと思います（笑）。開発期間がどうしても長くなってしまうので、軌跡キャラクターが登場する手軽に遊べる感じの無料アプリを、途中に提供できればいいなと思っています。この辺は日本ファルコムさんと今後詰めて行く部分なので、詳しくはお話できませんが、ご期待頂ければと思います。

──確かに無料はきびしいですよね（笑）。課金システムは取り入れられたりするんですか？

畠野　それは取り入れていこうかと思っています。たとえば、新しいキャラクターを追加したり、iOS版で人気の出たキャラクターのシナリオを増やしてあげたりだとか、お客様の生の声を聞いてアップデートや改良をしていきたいと思います。

──アップデートで遊べる幅が増えたらユーザーとしてはうれしいですね。では、最後になりますが、どのようなお客様に遊んでいただきたいですか？

畠野　そうですね、まずは“軌跡シリーズ”のファンの方に遊んで頂きたいと考えておりますが、新しいファン層も開拓したいと考えております。ゲーム機を持っていなくても、スマートフォンを持っている方って非常に多いですよね。スマートフォンを含めた携帯電話でゲームをやられている方は、コアなゲーマーとは若干違う層なのでないかなと考えていて、そんな方に日本ファルコムさんのJRPGの良さをアプリを通じて知っていただいて、日本のゲームというのはこういうものなんだぜ！　というのを感じていただければうれしいです。もちろん、シリーズのファンの方に、納得のいただける作品に仕上げるのが前提だと思っております。

──なるほど。ではファンの方も、これまであまりコアなゲームに触れられなかった方も、双方が楽しめるゲームになるんですね。いまからiOS版『空の軌跡』の配信が非常に楽しみです！　本日はありがとうございました。