Mobage『みんなと モンハン カードマスター』の配信間近、カプコンの杉浦氏にソーシャルゲームの戦略を訊く
2012-02-16 17:00 投稿
●ソーシャルゲームの制作方針は“郷に入れば郷に従え”
全社を挙げてソーシャルゲームに積極的に取り組んでいく戦略を明確に打ち出し、昨年にGREE向けに『バイオハザード アウトブレイク サバイヴ』や『モンハン探検記 まぼろしの島』の配信を開始したカプコン。カプコンの誇る看板タイトルのソーシャルゲーム化ということもあり、『モンハン探検記 まぼろしの島』の会員数が瞬くうちに50万人を超え、GREEのゲームランキング上位の常連となっている。また、カプコン看板シリーズのソーシャルゲーム化タイトル『バイオハザード アウトブレイク サバイヴ』も好調に登録数を伸ばしているのはご存じの通り。そんなカプコンが、『モンスターハンター』シリーズの新作ソーシャルゲームとして、『みんなと モンハン カードマスター』を、ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)が運営するMobageに向けて、2012年2月21日(火)より配信する。カプコンが見据える、ソーシャルゲームに向けてのさらなる戦略とは? ここでは、カプコン 東京制作部 開発運営室長 兼 ソーシャル事業室長であり、プロデューサーの杉浦一徳氏に話を聞いた。
▲カプコン 東京制作部 開発運営室長 兼 ソーシャル事業室長でありプロデューサーである杉浦一徳氏。 |
――まずは、今回Mobage向けに『みんなと モンハン カードマスター』を配信することになった経緯からお教えください。
杉浦 Mobageさんのプラットフォームで、カプコンが新しい組織としてのソーシャルゲームの第1弾を展開するにあたり、何がいいか……というときに、やはりカプコンの誇れるIP(ブランド)でベストを尽くしていきたい!ということで、『モンスターハンター』を選びました。
――GREEで『モンハン探検記 まぼろしの島』、『バイオハザード アウトブレイクサバイヴ』と続いたので、ここへきてのMobageでの展開が少し意外だったのですが……。
杉浦 (笑)。カプコンがコンシューマーゲームでマルチプラットフォーム戦略を展開しているのはご存じかと思うのですが、ソーシャルゲームのプラットフォームに関しても、僕らには「このプラットフォームだけ」という考えかたはないです。よっぽどビジネス的にきびしいプラットフォームだったらさすがに撤退しますが、「やりかたによっては、プラットフォームごとにいくらでもやりようがあるのではないか?」というのがそもそものカプコンのソーシャルゲームのプラットフォームの発想です。ましてや、Mobageは3500万人を超える会員数を擁しているわけですから。今後も、当然Mobageさんで出るタイトルもあれば、GREEさんで出るタイトルもある。もちろん、そのほかのソーシャルゲーム系のプラットフォームも検討しています。正直なところ、僕らからするとプラットフォームはあまり気にしていなくて、そのタイトルを適材適所でいろいろなプラットフォームに出せたらいいなと思っています。というわけで、ぜひご興味のあるプラットフォーム様はご連絡をお待ちしています(笑)。
――なるほど。今回もGREEの『モンハン探検記 まぼろしの島』をそのまま持ってくるわけではなくて、あくまでMobageというプラットフォームを考慮して『みんなと モンハン カードマスター』を投入するというわけですね?
杉浦 はい。最初にDeNAさんともお話したのですが、ただ単に『モンスターハンター』というIPを持ってきて、「『モンハン』だから、やっぱりアクションゲームだろう」というのは、プラットフォーム的に違うだろうと。やはりMobageというプラットフォームのお客様に合う形で、『モンスターハンター』というものを料理すべきではないか、ということになったんです。そこで出てきたのがカードゲームというアイデアですね。
――それで、gloopsさんと共同開発することになったんですね?
杉浦 その通りです。gloopsさんを指名させていただいたのは僕自身なのですが、Mobageのプラットフォームで展開するのだったら、Mobageでいちばんのメーカーさんと協力してやりたいと思っていました。何よりも、gloopsさんには、Mobageというプラットフォームでカードゲームを大成功させていることに対して一日の長がある。今回は『モンスターハンター』を知らない方やMobageでカジュアルにゲームを楽しんでいるお客様に受け入れてもらえるところまでゲームを落としこまないといけないと考えていました。もともと、「郷に入れば郷に従えで、『モンスターハンター』をソーシャルゲームとして作りたい」というのが大前提だったんですね。コンシューマーの『モンスターハンター』とはかなり違うものになるけれども、そこは逆に割り切らないと、Mobageのお客様がついてこられない。だったら、その“郷”を知り尽くしている会社といっしょに組んだほうがいいものができるだろう、ということでgloopsさんにお声をかけさせていただきました。もちろん、『モンスターハンター』というブランドを展開するにあたり、守らないといけないラインというのはあるので、その点に関しては、意見交換は盛んに交わしています。
――なるほど。とはいえ、そこまで発想を柔軟にできるのも、カプコンならではと言えそうですね。
杉浦 戦略と戦術があった場合、本来勝負は戦略で9割がたが決まってしまうというのが私の持論です。日本人の悪い癖で、いくら不利でも戦術で覆そうという美徳が残っていますけど。僕が最初にソーシャルゲームをリリースするにあたって思ったのは、ソーシャルゲームならではの“キモ”を尊重するということでした。もちろん、カプコンらしさもすごく大事ですが、ソーシャルゲームらしさを見極めないとよくわからない作品となってしまい、失敗に終わってしまう。その点は予想できていたので、 “郷に入れば郷に従え”ということは、メンバー間でしっかりと話し合ったつもりです。
●オリジナルのソーシャルゲームも作ってみたい
――では、少しゲームのことについて聞かせてください。今回発表された『みんなと モンハン カードマスター』ですが、どのようなコンセプトになるのでしょうか?
杉浦 gloopsさんが一日の長をお持ちになっているカードゲームの楽しさと、ギルドとしての魅力を強く打ち出した作品になっています。本来の『モンスターハンター』というブランドから判断すると、ミッションにモンスターが出てきて、ハンターカードを育てていく……ということにすれば、より『モンスターハンター』らしく見えるということはわかっていました。でも、人だけ育てることにすると、Mobageのお客様にはほかのソーシャルゲームよりも縛りが多いぶん、とっつきの悪いものになってしまう。そこで、あえて『モンスターハンター』らしさは崩してしまってでも、カードゲームとしての魅力を活かすことにしました。
――1対1での戦いもあれば、ギルド単位での戦いもあるということですね?
杉浦 はい。とにかく、ソーシャルゲーム的なテイストはけっこう尊重しています。たとえば、本当であれば『モンスターハンター』は“狩り”なのですが、カードゲームなので“バトル”という単語を使うべきだろうと。『モンスターハンター』の単語を使ってしまうと、逆にソーシャルゲームのお客様にはわかりづらいだろう……というところはすべてソーシャルゲームに合わせました。Mobageのお客様は、基本的には『モンスターハンター』というタイトルの名前を聞いたことはあっても、実際にゲームに触ったことがない人がほとんどだろうということが想定できたので、gloopsさんやMobageさんのゲームでよく使う単語のほうを尊重しています。これも、“郷に入れば郷に従え”の一例ですね。
――GREEで『モンハン探検記 まぼろしの島』を展開してみて、『モンスターハンター』は知っているけど、遊んだことがないユーザーさんが多いという実感は受けられました?
杉浦 それはもちろん。正確なデータは取れていないので、ある程度のアンケート結果だったり、限定的なユーザーからの調査になってしまうのですが、ほかにも『バイオハザード アウトブレイク サバイヴ』だったら、ゲームよりも映画で『バイオハザード』シリーズの存在を知っていて、なんとなく知っているぶんカプコンのゲームで遊び始めた、という方が多いですね。
――なるほど。
杉浦 ということから判断しても、カプコンがソーシャルゲームを展開するにあたっては、“純粋にソーシャルゲーム事業を拡大する”ということのほかに、“ソーシャルゲームを取っ掛かりに、ソーシャルゲームのユーザーさんにもカプコンの誇るIPを認知していただく”というメリットもあるということです。仮に、カプコンの誇るIPをソーシャルゲームに落し込むことで、“昔テレビゲームで遊んでいたことがあるけど、いまは離れてしまっている”という方や、“テレビCMでゲームのことは知っているけど、遊んでみたことがない”という方に興味を持ってもらえるきっかけになるのだったら、そこには大きな意味があります。当然、ソーシャルゲーム事業はビジネスとして成り立たせることも大事なのですが、ゲームそのもののことを考えると、ほかにもたくさんの意義がある。
――なるほど。カプコンさんがソーシャルゲーム事業を展開するにあたっては、複数の目的があるということですね。
杉浦 そうはいっても、ソーシャルゲームでオリジナルタイトルとかも作ってみたいんですけどね(笑)。カプコンという会社は、昔からオリジナルタイトルを作っていくことを怠らない会社だからこそ、これまで大きなIPが生まれてきたという歴史があります。当然、オリジナルの大きなIPをソーシャルゲーム側でも作る努力はしていかないといけないかなと思っています。さらに言えば、ソーシャルゲームに関しては、オリジナルのIPがヒットしているケースが多いので、ヒットする可能性がぜんぜんないわけではない。われわれとしても、そこには大きなチャンスがあるということで、「ぜひ、やりたい!」と、じつはオリジナルのIPもすでに数ライン走っていたりします。
――おお! となると、逆にソーシャルゲームからコンシューマーに……という流れもあり得なくはないですよね?
杉浦 そうですね。ぜひ実現したいですね!
――ちなみに、いまトータルで何タイトルくらい開発しているのですか?
杉浦 明確にはお答えできませんが、いまのところ7~8タイトルが走っていますよ。とくにいま強く考えているのが、スマートフォンでの積極的な展開です。フィーチャーフォンに関しては、カードバトルを始め各社さん成功のパターンをお持ちだと思うのですが、スマートフォンに関しては、まだそこまでの売上を達成するビジネスモデルが確立されてはいない。各社さん懸命にがんばっているというのが現状だと思っています。ですので、いまカプコンが複数走らせているラインには、フィーチャーフォンとスマートフォンの両方で展開するゲームと、スマートフォン向けに純粋にゼロベースから作るソーシャルゲームの両軸を開発中です。スマートフォンの場合は、どうしてもApp Storeだったり、Androidマーケットで販売することになるので、勢いワールドワイドが前提になります。ワールドワイドとなると、カプコンの場合、世界中のファンに熱心に支持していただいているIPもありますので、そっちで展開してみたい……とか、いま、いろいろなタイトルが社内では動いています(笑)。
●開発スタッフのモチベーションは極めて高い
――今後、カプコンさん配信のいろいろなゲームが楽しめそうですね。それにしても、GREEでの1作目が『モンスターハンター』、Mobageでの1作目も『モンスターハンター』と、絶対に外せないIPなので、相当なプレッシャーがあるかと思うのですが……。
杉浦 そうですね(笑)。これだけのIPともなると、当たって当然みたいなところがあるのでなかなか……。オンラインゲームもそうでしたが、「これが当たらなかったらつぎはどうすればいいんだ?」という切り札を最初から投入していますので、そういう意味ではプレッシャーは相当あります。これで結果が出なかったらカプコンのソーシャルゲームの未来はないので、「100%成功させないといけない」という気持ちです。幸い『モンハン探検記 まぼろしの島』が順調だったので、『みんなと モンハン カードマスター』も順調に行くと、僕らは信じて疑わないんですけどね(笑)。100点は絶対に取れると信じていまして、あとは300点取れるか、500点取れるかだと思っています。
――改めてうかがいますが、ソーシャルゲーム事業を展開されてみていかがですか?
杉浦 いちばん強く感じるのは、やっぱりスピード感ですよね。もちろんゲームにもよるのですが、たとえば『モンスターハンター フロンティアオンライン』で言えば、モデル1体分作るにしても武器ひとつ作るにしても、当然のことそれなりに時間がかかります。さすがに1日、2日で作って実装できるものではないです。それがソーシャルゲームだと、「モンスターを投入しよう」と判断すれば、極端な話その日のうちにできてしまうんです。ゲームがシンプルだということもあるのですが、スピードというところは相当意識していますね。
――運営面に関してはいかがです?
杉浦 うーん。オンライン事業の方の運営がいま50点だとすると、ソーシャルゲームは30点以下かなあ。オンライン事業のほうは、なんだかんだ言ってもスタートしてか5年以上経っているので、そのぶんのノウハウも溜まっていますし、人材も充実してきているので、まだまだ不満もありますが何とかなっています。ソーシャルゲーム事業のほうはようやく軌道に乗ったばかりでスタッフも本当に少ないですし、発足したばかりでチームとしてはまとまり切れていないところもある。正直、まだまだお客様からお叱りを受けていることのほうが圧倒的に多いかなと、僕はひしひしと感じています。今年1年でどこまでサービスと運営を充実させられるかというのが大きな課題かなと思っています。
――ここ1年が大きな勝負ということですね。
杉浦 とはいえ、もともとカプコンにも「ソーシャルゲームを開発したい」という若手スタッフはそれなりにいまして、これまでは私が準備に追われていたこともあって、すぐにゴーサインを出してあげることができなかったんですね。そういった意味では、若手のスタッフがかなり辛抱していた部分があるのですが、そのぶん『モンハン探検記 まぼろしの島』や『みんなと モンハン カードマスター』では鬱憤を晴らしたというか(笑)。現場の雰囲気を見ていると、みんなモチベーションが高いです。
――カプコンさんにおいては、コンシューマー系の開発者さんとソーシャルゲームの開発者さんの垣根はなさそうですね。
杉浦 それに関しては、いくつか言えることがあるのですが、ソーシャルゲームを担当しているスタッフのうちのある程度の人数は、当然ですがモバイルの開発チームなんです。ですので、そこまでソーシャルゲームに対して抵抗感がないというのはあります。さらに言えば、中には過去にアーケードゲームの開発を担当していた者など、いろいろなキャリアのスタッフもいるんですよ。これはスタッフの受け売りですが、アーケードゲームは少しずつお金をもらっていくというビジネスなので、若干ソーシャルゲームに似ていると感じたそうです。アーケードゲームの「ついついおもしろくて、ワンコイン入れてしまう」というのと、ソーシャルゲームの「ついついおもしろくて課金してしまう」というのは、考えかた的に似ていると。あと、オンラインゲームのスタッフも相当入っています。彼らはもともとアイテム課金をやっていますので、ソーシャルゲームのビジネス構造にも抵抗感がない……という感じで、会社の中でもソーシャルゲームに親和性の高いスタッフが集まったというところも、チームがうまくひとつにまとまっている理由かなという気はしますね。
――では、最後にファミ通.comの読者に向けてのメッセージをお願いします。
杉浦 とにかく、『みんなと モンハン カードマスター』を楽しんでみてください。気軽に楽しんでいただけるようにゲーム性から絵柄まで、カジュアル向きに作ってはいますが、ちょっと遊んですぐに飽きてしまうことがないように、敷居は低くも奥が深い作りにしています。そういう意味では、ソーシャルゲームのユーザーで、『モンスターハンター』シリーズそのものを遊んだことのない方にはぜひ一度触れていただきたいです。熱心なソーシャルゲームユーザーさんにこそ遊んでもらって、ほかとの違いを味わってもらいたいですね。また、このゲームをきっかけに『モンスターハンター』に興味を持っていただけたら、ぜひテレビゲームやオンラインゲームの『モンスターハンター』シリーズにも触れていただければうれしいです。
『みんなと モンハン カードマスター』は、2012年2月19日(日)午前11時までMobage内特設サイトにて事前登録を実施中。事前登録をするとゲーム内で使用できる“限定レアカード ティガレックス”をプレゼント。こちら、この機会でのみ入手可能なカードとなっているので、この機会に事前登録をしてみるべし!
▲『みんなと モンハン カードマスター』に事前登録すると、全員に限定レアカードのティガレックスがプレゼント。 |
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