GREEソーシャルゲーム成功の秘密公開“セールスランキングNo.1 プロダクトの作り方”【CEDEC 2011】
2011-09-08 14:30 投稿
●GREEで培ったソーシャルゲームのノウハウが明らかに
2011年9月6日〜8日の3日間、神奈川県のパシフィコ横浜・国際会議センターにて、ゲーム開発者の技術交流などを目的としたCEDEC(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス) 2011が開催されている。
最終日となる3日目、グリーの協賛セッション“セールスランキングNo.1 プロダクトの作り方”が実施された。本セッションは、ソーシャルゲームを企画、運営するポイントを、コンソールゲームとの比較で説明。「なぜGREEのゲームはユーザーを惹きつけ続けることができるのか?」、「どのように収益化していくのか?」、「開発体制は?」といったさまざまな疑問について、グリーの土田俊郎氏(メディア事業本部)、岸田崇志氏(開発本部 ソーシャルアプリケーション(Japan)(SAJ)統括部 統括部長)が語る内容となった。主題となるプロダクトの作りかたを紹介する前に、「まずはソーシャルアプリ市場の規模について」と岸田氏は、ソーシャルアプリ市場は今後も大きく伸びていくという。また、KONAMIが家庭用ゲームの売上をソーシャルゲームの売上が上回るという逆転現象が起こっているとも。さらに、ソーシャルゲームの勢いを牽引する要因として、「スマートフォンの普及、市場拡大」(岸田)を挙げた。
また、グリーのこの半年間の取り組みについて岸田氏は「以前、弊社の田中が、“フィーチャーフォンはあと5年後にはなくなると思う。だからスマートフォンにも力を入れて、対応していく”と発言していました。ですから我々も2011年6月末までに、『釣り★スタ』や『探検ドリランド』など、内製の全プロダクトについて、スマートフォンへの移植を完了させています」と説明。加えて、この半年間におけるスマートフォン市場の変化として、「セールスランキングの上位タイトルの半数がソーシャルゲームになっていて、スマートフォンでもフィーチャーフォン版と同等の収益を確保しているプロダクトも多い」という。その収益について、土田氏もこう述べている。
「家庭用ゲームとソーシャルゲームを比較してみます。『探検ドリランド』は収益から見ても、家庭用ゲームでたとえると数百万本を販売するクラスのゲームと言えるでしょう。現在は国内のみの展開ですので、まだまだ可能性がある作品だと思います。家庭用ゲームは開発にお金や時間がかかる。そういったさまざまなリスクのある中で開発したコンソールと肩を並べる規模感のタイトルを、GREEではソーシャルゲームで作っているという自負があります」(土田)いよいよ本題へ。ふたたび岸田氏にマイクが渡り、グリーが構築する“No.1 プロダクトの作りかた”について語られていった。
まずプロダクトの組織面についてだが、“垂直統合型スキルセット”という形式を採用しているという。通常、家庭用ゲームの開発ではプロデューサーやプランナー、デザイナーなど、それぞれの役回りをそれぞれの専門家が担っているが、グリーではその枠を取り外して、プロダクトのメンバーひとりひとりがそれぞれの領域をカバーしているそうで、「これにより“新しい挑戦、スピード感が実現”できる」(岸田)
また、プロダクトは少数精鋭チームにしているとも。岸田氏によれば、5人〜7人、多くて10人の少数でプロダクトに関わるとのこと。人数を絞ることで、プロダクト内の意思決定のスピードアップにつながるほか、サービスと個人の成長を最大化させることができるメリットもあるそうだ。
以上の組織構成で、内製タイトルのスマートフォンへの移植の際も、スピードとクオリティーを維持することができたとのこと。続いて、“データ駆動型のアプローチ”。これはプロダクトのゲームに対して、メンバーひとりひとりのセンスよりも、実際にプレイしている数千万人のユーザーのデータを意識し、すべてに対してロジカルを持たせること。そしてデータマイニングツールを使い、データの収集や修正などをつねにリアルタイムで行うこともしている。さらに、各プロダクトで得たノウハウを、フレームワーク化してグリー社内で共有しているという。新しい企画を作る場合、これらのフレームワークを使ってアプローチすることも。また、新規フレームワークについても随時構築を続けおり、「このフレームワークのライブラリが開発のスピード感に関わっている」と岸田氏。岸田氏の話を受け、土田氏もこのプロダクトの組織構成についてこう語っている。
「家庭用ゲームは、内容がソーシャルゲームより複雑なので、各役職にひとりひとり専門家がいるべきだったが、これからのソーシャルゲームは垂直統合のほうがいい。では、専門家と呼ばれる人たちはソーシャルゲームの分野ではどうするのか? 専門分野を強みにしつつ、専門という枠を取っ払う心がけが必要になります。それから少数精鋭チームについては、ひとりひとりが責任感と権限を持って取り組めるのでいいことです。少数でやっていけば自然と精鋭として育ちますし、より責任をもった組織になることでスピード感にもつながります」(土田)
また、データ駆動型のアプローチについて土田氏は、「ソーシャルゲームをやっていくためには、今後このアプローチを理解していかないとゲームクリエイターとして滅びてしまうかもしれない。逆にそれを理解したうえで、ゲームクリエイターとしての過去の経験を駆使するのは非常に強みである」とした。No.1プロダクトを作るためには、“ソーシャルゲームの企画”も重要。そのためには、集客(ユーザーが集まり続ける仕組み)、活性化(ユーザーが使い続ける仕組み)、収益化(課金など収益を得る仕組み)を考えることが大切だと岸田氏。
おもに“集客”はプロモーションで新規ユーザーを獲得したり、口コミによる広がりを狙うこと。“活性化”は一度アクセスしたユーザーにダイレクトメールを送ったり、継続的にアクセスすることでポイントなどを提供し、モチベーションを持続させること。“収益化”は、セールなどのイベントを実施してアイテム購入のモチベーションを上げること。これらをすべてデータ収集の際に数値化し、中間指標として導入率、ログイン率、課金率、ARPUで判断。企画の際の材料になるわけだ。ちなみに、集客、活性、収益のモデルについては以下のとおり。
【集客モデル一例】……集客モデルは、プロモーションとバイラルがキーワードだ。3000万人に受け入れられるコンセプトメイキング(『釣り★スタ』なら釣り人口をサーチ)や、友達紹介(コインなどを獲得できる仕組みや、ひとりで勝てないモンスターを用意して、ほかのユーザーといっしょに倒すための仕組み)などの要素で招待スパイラルを作る。
【活性化モデル一例】……サイクル設計とユーザー間コミュニケーションがキーワード。『釣り★スタ』を例にすると、小さいサイクルが“魚を釣る”、中くらいのサイクルが“称号の獲得”、大きなサイクルが“魚のコンプリート”といった具合に、各サイクル(短期、中期、長期)の中でユーザーに達成感を持たせるポイントを用意するといい。また、『モンプラ』などで友だちの牧場に行くとさまざまな交流ができるようになっているが、こういった演出、仕組みも交流のモチベーションになる。
【収益化モデル一例】……納得できる失敗と劇的な変化とネットワーク効果による自己顕示欲の最大化が肝。たとえば、モンスターに負けたとき、ユーザーは非常に悔しい思いをする。そこで、購入すれば倒せるアイテムを用意し、負けたときに“アイテムを強化すれば勝てる”といったメッセージを表示して負けたことを納得させる。そして実際に購入して戦うとしっかりモンスターに勝てるという、劇的な変化を感じさせることができ、モチベーションにつながる。
これらのモデル化について、「いままで私が経験してきた家庭用と、ソーシャルゲームとのゲームデザインのいちばんの違いは、ゲームデザインのモデル化、フレームワーク化です。いくつもあるフレームワークから、自分たちが作るゲームにマッチする成功事例のモデルがどれかを話し合うことができます。そして新しいアイデアが成功した場合、その新しいフレームワークが追加され、みんなで共有できる。チャンスの幅が広がります」と土田氏。続けて、「ソーシャルゲームは、いちクリエーターの思い込みではなく、ユーザーの反応、ログデータなどを見て、最良のものをユーザーに提供できます。また、開発者にとっても、フレームワークやモデル、データに基づいて開発するのでプロジェクトが成功しやすく、つぎの投資の機会にも恵まれやすい」と語った。●GREEが描くソーシャルゲームの未来
プロダクトの作りかたについて大いに語った土田、岸田の両氏。最後に、GREEが描くソーシャルゲームの未来について、つぎのようにコメントした。
「今後は先ほどご説明したソーシャルフレームワークに加え、グローバルプラットフォーム、コンテンツ力を軸に展開していきます。グローバルプラットフォームという面では、我々は世界展開に力を入れており、今後世界10億人規模のプラットフォームを目指します。また、ソーシャルゲームはまだ5年程度の歴史であるのに対し、家庭用ゲームは30年近い歴史があります。このさき、我々が持つフレームワークとグローバルへの展開案、そこに家庭用ゲームを作ってきた方々が培ってきたコンテンツ力を融合させて、世界に出て行きたいと思っています」(岸田)
「これからはゲーム内容が広がる時代に突入します。そして、もしかするとソーシャルゲーム、コンソールゲームという枠がなくなり、全ユーザーがオンラインにつながっている状態が前提。そうなるとパッケージではなくゲーム体験を売ることを意識する必要があり、ゲームの定義も変わり、これまでゲームと呼べないものもゲームになってくる。ユーザーもどのプラットフォームでゲームを体験するか、ということになる。また、これまで海外というと欧米を意識してきたが、今後はとくにアジア市場に注目したい。世界展開に際し、コミックやゲーム、アニメなど、多様なコンテンツを出してきた歴史を持つ日本に現時点でアドバンテージがあると思うのでチャンスです。ともかく、今後ゲームはプレイスタイルも収益スタイルも市場も変わってくる時代になります。その新しい時代で世界に挑戦するというのはとてもワクワクするし、ぜひ皆さんといっしょにがんばっていければと思います」(土田)
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