ドットの神様Mr.Dotmanも登場!元ナムコのクリエイター陣に訊く『タッチ・ザ・マッピー』前編

2016-07-09 11:00 投稿

元ナムコのクリエイター陣に訊く
『タッチ・ザ・マッピー』秘話(前編)

好評配信中の『タッチ・ザ・マッピー 復活のニャームコ団』(以下、『タッチ・ザ・マッピー』)。1980年代に人気を博した元祖『マッピー』をリニューアルし、当時の開発メンバーが集結していることでも話題のタイトルだ。

▼あのマッピーが15年経て警部へ転身!
スマホで蘇った『タッチ・ザ・マッピー 復活のニャームコ団』

今回は平均年齢50歳以上、本作の開発に携わったクリエイターたちにお話を伺った。超長編となっているので、前後編で2日に分けてお届けしよう。

mappy_logo

インタビューに応じてもらったのは、小野浩氏、佐藤英治氏、田平宏一氏、森一申氏の4名。いずれも、かつてナムコ(現・バンダイナムコエンターテインメント)に所属していたメンバーだ。

ドットマン 小野浩氏

『マッピー』、『ディグダグ』、『ゼビウス』など、ナムコの名作ゲームのドット絵を数多く担当してきたデザイナー。通称“Mr.Dotman”、“ドットの神様”。今回のプロジェ クトではゲーム内のドット絵を担当した。

WA3_8264 佐藤英治氏

元ナムコのプランナーであり、『マッピー』の企画担当。『ドラゴンバスター』のディレクションや『三国志 中原の覇者』なども担当した。退社後はゲーム開発から離れていたが、今回のプロジェクトに参加。

WA3_8249森一申氏

元ナムコのディレクターで、『ディグダグアイランド』などを担当。退社後に株式会社コスモマキアーを設立し、オンラインゲームの開発を手掛ける。今回のプロジェクトにはプログラム、ディレクションで参加した。

WA3_8424 田平宏一氏

元ナムコのプランナーとして、『アブノーマルチェック』などの診断ゲームを企画。退職後は株式会社鈴屋を立ち上げ、アプリプロデュースを行う。今回のプロジェクトの企画者であり、プロデューサー。

さらに、今回のプロジェクトには、『ドルアーガの塔』、『ギャプラス』、『風のクロノア』などのサウンド制作に携わった元ナムコのクリエイター、ZUNKO氏も作曲担当で参加している。オールドゲーマーにはたまらないレジェンドが集結した『タッチ・ザ・マッピー』はどのように誕生したのか、その経緯から伺ってみた。

元ナムコのクリエイターありきのプロジェクト

――まずは、『タッチ・ザ・マッピー』を展開した経緯をお聞かせください。

田平 宏一氏(以下、田平) ナムコ(現・バンダイナムコエンターテインメント時代に同じ部署だった小野さんと、何かいっしょに仕事をしたいと考えていました。そんなとき、バンダイナムコエンターテインメントが“カタログIPオープン化プロジェクト”を展開することを聞いて、小野さんは『マッピー』も描いていましたから、これはと思い『マッピー』の企画を応募したのがきっかけです。

▼『タッチ・ザ・マッピー』誕生のきっかけ
カタログIPオープン化プロジェクトとは?

――小野さんだけでなく、佐藤さんやZUNKOさんというクリエイターが再集結しているところがスゴイですね。

田平 小野さんとはFacebookでつながっていたので直接お願いしました。その後、小野さん経由でZUNKOさんとつながって、『マッピー』大好きな森くんが「俺も入れてくれ!」と言って参加してきて、森くん経由で佐藤さんとつながっていきました。もともとこの企画自体、そういった方々あってこそと考えていたんですよ。

――元ナムコのクリエイターありきの企画発案だったわけですね。

田平 80年代の元ナムコに思い入れのある人がたくさんいると感じていましたし、元ナムコでバリバリ現役の方々もいる中で、これを活かせないのはもったいないと思っていました。今回の謳い文句を“ゲーム界のエクスペンダブルズ”(監督・主演のシルベスター・スタローン氏をはじめ、オヤジ傭兵が活躍するアクション映画)、“平均年齢50歳以上”としているのも、いいキャッチになるんじゃないかと。

――田平さんから企画を持ちかけられたとき、小野さんはどう思いましたか?

小野 浩氏(以下、小野) ドット絵を描けるのなら何でもいいよ、と。『ドルアーガの塔』とかは関わっていなかったから、自分が携わった『マッピー』と聞いて安心はしましたね。だから何の抵抗もなく受け入れて、「とりあえずやってみようや」という感じでした。

――佐藤さんは、企画を聞いたときの印象はどうでしたか?

佐藤 英治氏(以下、佐藤) 最初、知らない番号からいきなり電話がかかってきて驚きましたね。それが森くんだったわけですが。

森 一申氏(以下、森) 弊社の顧問と佐藤さんが元ナムコ時代の同期で、連絡先を教えてもらいました。佐藤さんは『ドラゴンバスター』の開発にも携わって輝かしい経歴をお持ちですが、遠藤さん(遠藤雅伸氏。代表作は『ゼビウス』や『ドルアーガの塔』など)や岩谷さん(岩谷徹氏。『パックマン』の生みの親として知られる)のようなメディア露出がないんですよね。『マッピー』を扱うわけですし、ここで佐藤さんに協力してもらえたらおもしろいことになると思いました。

佐藤 企画の説明を受けて、協力しましょうということになりましたが、そのあとでどんな会社なのか確認しに行きました。得体の知れない怪しい会社もたくさんありますから、まずは彼のアジトを見て、しっかりした会社だったので安心しましたね(笑)。

――そこでどんなお話をされたのでしょう。

佐藤 アドバイス的なものでいいので、気楽に参加してほしいと言われました。

――ZUNKOさんには、どうやって参加してもらったのでしょうか。

 『マッピー』のサウンドは大野木さん(大野木宣幸氏。『マッピー』『ギャラガ』など数々のゲームサウンドを担当)が担当されていて、当初は今回の企画にも入ってもらうつもりでしたが、都合が合わず断念しました。それでも80年代のナムコタイトルを復刻するならZUNKOさんにお願いしようということで、小野さんに頼んでコンタクトを取ってもらいました。

田平 ZUNKOさんは現在、ゲーム業界におらず、サウンドクリエイトもしていません。本人も「リハビリのつもりで作曲」していると言っていましたが、素晴らしい曲を作ってもらって感謝しています。

元ナムコ所属クリエイターたちの現在

――ゲームのお話の前に、皆さんが現在どのような活動をしているか教えていください。

田平 2014年に退社したあと、本を出したり、並行してアプリを作ったりしています。『安眠ひざまくら』という、ひざまくらの疑似体験ができるヘンなアプリを作ったら、100万ダウンロードを突破してシリーズ化もしてしまいました(笑)。また、総合学園ヒューマンアカデミー大宮校で月1回の講師をさせていただいていまして、そこで学生さんたちが作った『あいつ7の段できるってさ』もリリースしています。

 安眠ひざまくら01安眠ひざまくら ~就寝5分前の癒しタイム~ 白崎楓ver

ひざまくらの上で少女と話している感覚が味わえるアプリ。今日を締めくくる言葉を返してくれたり、昔話や子守歌で安眠をサポートしてくれる。

7の段あいつ、7の段できるってさ

2桁の数字のマスが並ぶ中で、7の段を7個消してベストタイムを更新するパズルゲーム。絶妙に頭を使う難易度が心地よい。

『あいつ7の段できるってさ』紹介記事(ファミ通.com)

 退社したのは2009年ですね。在籍時にPCオンラインゲームのビジネスに携わっていたこともあり、コスモマキアーを立ち上げてPCブラウザゲームやソーシャルアプリの開発を行っています。

佐藤 2001年に退職して、いまはゲーム業界からも離れた本当のフリーランスです。退社した時点で、ゲームはお腹いっぱいになっていたので距離を置きたかったんですね。手持ちのハードやソフトを全部しまって、一切触れていませんでした。そういう感情が癒えてきたところで今回のお話を受けて、ゲームに戻るのにはいいタイミングだったのかもしれません。

小野 2013年に退社しましたが、やっていることはドット絵作りで変わっていません。『鉄拳』や『アイドルマスター』、『テイルズ オブ』シリーズのドット絵化に携わっているので、結局はバンダイナムコエンターテインメントの仕事が多いですね。あとは、“Pixel Art Park 2”というドット絵だけのイベントにも参加しました。第1回開催のとき遊びに行って、そこで名乗ったら会場がざわついて(笑)、第2回開催のお誘いをいただきました。ここでは、退職後に制作している“絵画シリーズ”という作品を出展しました。『マッピー』にモナリザの絵画が登場しますが、こういう絵画をいまの環境で作ったらどうだろうと考えて始めたものです。

01_マッピー資料
▲小野さんのポートフォリオ。ナムコ在籍時に携わった作品では、キャラクターのドット絵のほかタイトルロゴも制作されていたという。
03_マッピー資料
▲小野さんのライフワークとなっている“絵画シリーズ”。じつは、原作『マッピー』に登場するモナリザは記憶に頼って作り、手の組みかたが反対に。今作では修正されている。

にじみ出る“マッピー愛”

――皆さんは『マッピー』に対して、どのような思い入れを持っていますか?

佐藤 入社して研修が終わり、開発企画に配属されてすぐに「お前が作れ」と言われました。よくわからないままアイデアを出し合い、先輩方に背中を押してもらいながら作りました。とくに岩谷さんには大変お世話になって、師匠と弟子のような関係です。ゲーム制作のスタートでもあり、自分の中では特別な存在になっているのは確かです。メアドには“mappy”が入っていますし、飼っている犬の名前も代々マッピーで、いまは3代目です(笑)。ですから、今回の話が『マッピー』ではなく、ほかのタイトルだったら参加していないでしょうね。

04_マッピー資料_ドットマン
▲当時の資料。もちろん、すべて手書きです!
05_マッピー資料
▲一般の文房具屋には存在しない、ナムコ特注の8×8のドット用紙。“ドットの神様”小野さんの手元にも残っていないという、当時の作業現場を感じる貴重な資料。

 ちなみに、『ドラゴンバスター』は企画段階で“ドラゴンクエスト”というタイトルだったんですよね。

佐藤 そうそう。当時、『ゴーストバスターズ』という映画が流行っていて、それで社内アンケートの結果『ドラゴンバスター』に変わったの。もったいなかったね(笑)。

小野 『ドラゴンバスター』でいいじゃんって言ったの、俺なんだよね(笑)。

――もしかしたら、あの『ドラゴンクエスト』が別の名前になっていたかもしれないんですね。そんな歴史を変えてしまったかもしれない、佐藤さんにとっての『マッピー』とは?

小野 マッピーとニャームコは、マイクロマウス(コンピュータの自律制御で迷路を走破するロボット)のキャラクターが先にあって、その立体の印象があったから、ゲームになってイメージがかなり変わりましたね。盗品アイテムをドット絵でたくさん作れたのも楽しかったし、いろいろなキャラを作れたタイトルとして思い出に残っています。

佐藤 もとからあったロボットをゲームキャラクターにしたわけですが、ロボットのままドット絵化すると、シャカシャカ走るだけで躍動感がありませんよね。“ロボットの擬人化”と言えばいいのか、楽しく見せるための工夫が必要でした。

――田平さんの『マッピー』との出会いは?

田平 僕がゲームにハマり出したのが中学校1~2年のころで、ちょうど『マッピー』が登場したときでした。地元に1軒だけのゲームセンター、というか温泉のゲームコーナーでしたが、そこに『マッピー』がありました。ただ、難しくてすぐにゲームオーバーになっちゃうんですよ。少ないお小遣いでたくさん遊ぶには、『マッピー』から離脱するしかなかったですね……。

 僕は田平くんと同い年なので、『マッピー』に出会ったのも同じころですね。かなり遊びましたし、2周くらい続けられましたよ。1周するくらいでギャラリーが増えてきて、気持ちよく遊んでいましたね。ある日、高校生くらいのお兄さんが「ふたりプレイしようか?」と誘ってきてくれて応じたんですけど、僕よりもっと上手かった。1P側で3周くらい続けていて、当時のふたりプレイはミスで交代して順番に遊ぶので、延々と見せつけられた思い出があります(笑)。

佐藤 キミたちみたいな凄腕のプレイヤーがいると、私が営業に「ゲーム時間が長い。もっと難しくしろ!」と怒られるんだよね。難しくするためのディップスイッチを作りましたが、「まだ甘い!」と言われて(笑)。空中で触れてもミスになる“ご先祖様”を作ったのも、永久パターンを防止するためでした。

(続く)

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立場は違えど、『マッピー』に強い思い入れのある元ナムコのクリエイター陣が集結した、本プロジェクト。この後、どのようにして『タッチ・ザ・マッピー 復活のニャームコ団』は日の目を見るに至るのか。本インタビューの続きは明日11時に公開するので、乞うご期待!

インタビューの続きはこちら

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▲スマホで楽しむために生まれ変わった『タッチ・ザ・マッピー』。次回インタビューで誕生の道のりが明らかに!

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『タッチ・ザ・マッピー 復活のニャームコ団』紹介動画

タッチ・ザ・マッピー 復活のニャームコ団

ジャンル
アクションパズル
メーカー
鈴屋 コスモマキアー
価格
無料
対応機種
iOS 7.0 以降/Android 4.0降
備考
本アプリケーションは、権利者の正式な許諾を得ています。
許諾番号:45110

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