河津氏らが語る新しい『サガ』の形――『ロマンシング サガ リ・ユニバース』開発者インタビュー

2018-12-27 12:00 投稿

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ロマンシング サガ リ・ユニバース

挑戦しつづける『サガ』のエッセンスはスマホになっても変わらない

スクウェア・エニックスから配信中の『ロマンシング サガ リ・ユニバース』(以下『ロマサガRS』)。本作は、スマートフォン向けRPGでありながら『ロマンシング サガ』の完全新作と謳われている。

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スマホのIPタイトルといえば、派生作品かリメイクといった形での配信が多い中、非常に挑戦的な試みである本作。そこに込められた思いとはどんなものなのか?

今回は『サガ』シリーズ総合ディレクターである河津秋敏氏(文中では河津)、『ロマンシング サガ2』のリマスター版をはじめ、本作でもプロデューサーを務める市川雅統氏(文中では市川)、そして開発を担当するアカツキでチーフプロデューサーを務める山口修平氏(文中では山口)に、『ロマサガRS』について語っていただいた。

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▲左から山口氏、河津氏、市川氏。

『ロマサガRS』が生まれたきっかけ

――まずは、あらためて『ロマサガRS』を開発することになったきっかけについて教えていただけないでしょうか?

市川 ここ数年、『サガ』シリーズでもいろいろな作品が出ているのですが、それとは別に、現行のユーザー層ではない、新たなファン層を開拓するためのものを作りたかったんです。昔ゲームで遊んでいたけど最近遠ざかっていた人や、そもそもシリーズを知らない若い人など。そういう人たちに『サガ』を遊んでもらえるようになる“きっかけ”作りをしようという思いが根本にありました。

――「新作がスマホ?」という声も多くありました。

市川 プラットフォームにスマホを選んだのも、コンシューマーだとハードを持っていない人もいる。そんな中で、スマホなら誰でも触っていただけると思ったからです。

――その中で、アカツキさんとタッグを組んで開発をすることになったのはどういう理由からなのでしょうか?

市川 これまでさまざまなディベロッパーさんが手掛けたゲームを多く触ってきて、その中でもとくに幅広い層へタイトルを出していると感じたのがアカツキさんだったんです。ゲームに対する考えかたなども我々と合いそうだと感じたのも大きかったですね。

山口 ありがとうございます。

――アカツキさんはこのお話が来たとき、いかがでしたか?

山口 まず思ったのは、これは責任重大だなと(笑)。とはいえ、アカツキにとって、これは新しいことに挑戦できるまたとない機会でしたので、「ぜひいっしょにやらせてください」とお伝えしました。そこから『サガ』シリーズを好きな人たちでチームを組成しなければいけないな、と思い、早速社内に声をかけてみたんです。

――確かに、シリーズが好きでやり込んでいるからこそわかることもあります。

山口 そうしたら、「じつは……」と言い出す“隠れ『サガ』ファン”が大量に見つかったんです。結果、問題なくチームも組むことができました。世代的にも『ロマサガ』シリーズから入った人、『サガ フロンティア』シリーズから入った人とうまく分布していて、バランスよく編成できたと思います。

――オンライン向けのシリーズ作品には『エンペラーズ サガ』や『インペリアル サガ』などがすでに出ていますが、それらと『ロマサガRS』の差別化はどのように図っているのでしょうか?

市川 まずはアカツキさんといっしょにスマホゲームのトレンドを分析しながら、スマホゲームに『サガ』のエッセンスをどうやって落とし込むかを考えました。マルチプレイやレイドバトル、ギルドといった定番の要素についてはかなり研究もしました。

山口 そうですね。かなりたくさんのタイトルをプレイしました。

市川 そうしてたどり着いた答えは、スマホというものありきではなく、まずは『サガ』シリーズのエッセンスをどうゲーム全体に盛り込むか、というところを考えていこうというものでした。

――あまりスマホというプラットフォームを意識せずに作っていった、ということでしょうか。

市川 そうですね。最近のスマホゲームは、ヒットした作品のゲームシステムにIPの魅力をうまくはめ込んでいく……という作りかたをしているものもあるかと思います。しかし『サガ』シリーズというのは、作品ごとに新しいことに挑戦して独特のシステムを作り上げてきた歴史があって、既存のものを流用していく手法はそもそも“魂が違う”と思ったんですよね。それより、歴代シリーズの魅力をひとつひとつ分解していって、それらをスマートフォン上で実現できるよう思考を重ねることにしました。

河津 そういう作りかたをしよう、というのは自然に決まっていきました。開発陣全体が『サガ』シリーズというものがどういうものなのかという認識を共有できていたと思います。

市川 一方で、開発期間中に家庭用ゲーム機で発売された『サガ スカーレット グレイス』や『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望』にも相当影響を受けています。

山口 開発陣もプレイしていて、「あ、これいいな」と思ったものはどんどん取り入れていましたから(笑)。

河津 『サガ』シリーズはそういうところがありますね(笑)。『サガ スカーレット グレイス』も、前作のシリーズの影響を受けていましたから。

市川 たとえば、ゲーム終盤でも序盤に覚えた技をずっと使い続けられるようなエッセンスは『ロマサガRS』のバトルでも大いに組み込まれています。“全力AUTO”で強力な技をバンバン出させるよりも、マニュアル操作で鍛え上げた初期技を使ったほうが効率よくダメージを与えられる、なんてこともプレイスタイルによってはあると思います。

――とはいえ、ベースは『ロマサガ』シリーズにあるのですよね?

市川 そうですね。影響は受けましたが、やはり根本にあるのは『ロマサガ』シリーズです。

山口 影響といえば、リマスター版『ロマサガ2』をスマホで遊ばせていただいた際、トライ&エラーを繰り返しながら少しずつ進んで行く『サガ』の遊びが、意外にスマホにも合っているな、と感じたんです。この感覚を大事にしていけば、『ロマサガRS』は今までにないおもしろいスマホゲームにできそう、という手応えが得られましたね。

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▲スマホでも手軽に遊べるようになった『ロマサガ2』。

――『サガ』らしさと、いうところへのこだわりが強く感じられるのですが、河津さんご自身が考える“『サガ』らしさ”というのはどのような形で盛り込んでいるのでしょうか?

河津 ユーザーがゲームに対して“挑戦”できるのが『サガ』らしさかなと考えています。こちらが提供したものの範囲内だけで遊んでもらうのではなく、そこから逸脱して自由にチャレンジしてもらうようにしたいとはずっと考えてきました。

――市川さんや山口さんたちにアドバイスはけっこうされたのでしょうか?

河津 僕のほうから「あぁしたほうがいい、こうしたほうがいい」というのは言わないようにしています。僕が言った時点でそれが正解だと思われてしまったら、皆さんの中からそれ以上のアイデアは出なくなってしまいますから。それはそれで『サガ』ではなくなってしまいますからね。ここだけはマズい、というところ以外は何も言わないつもりでして、おふたりもしっかりそこを理解して、『ロマサガRS』を作ってくれたので、僕も安心して見守ることができました。

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『ロマサガRS』のストーリー、そしてバトルについて

――今回『ロマサガ3』の300年後を舞台にすると決めたのは、どういった経緯があったのでしょうか?

河津 シリーズの続編ということで『ロマサガ3』をベースにすることはあらかじめ決めてあったのですが、どうせなら直接の繋がりを作ればファンの皆さんにも驚きをもって迎えてもらえるのではないか、という思惑もありました。

――確かに『ロマサガ3』のリマスター版とともにかなりの反響を呼びましたよね。

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▲『ロマサガRS』とともにHDリマスター版『ロマンシング サガ3』の新情報もTGS2018にて発表された。スマホ含む全8プラットフォームで販売予定で、配信日は2019年初頭を予定している。

※画像は開発中のものです。

河津 人気のIPをスマホで出す場合、再構成してまったくの別物を作ることがほとんどだと思うのですが、『ロマサガRS』は23年前の作品である『ロマサガ3』の完全なる続編として作っています。じつは、『サガ』シリーズを通してみても続編ものを作ったことはないんです。つまり、続編を作ること自体がすごく挑戦的なことだったりするんですよ(笑)。

――言われてみれば、これだけシリーズ作品が出ているのに、それぞれ直接の繋がりがあったことはありません。

河津 しかも、それを家庭用ゲーム機ではなくスマートフォンでやるというね。いろいろな意味で新しい挑戦になっているわけです。300年後の世界を考えるのは楽しい作業ですね。たとえハッピーエンドで終わったとしても、300年も幸せな状態が続くわけありませんから。サラたちが救った世界がどうなったのか。当然“何か”が起こってしまっているのですが、“何か”の中身や、その物語の行方がどうなるのかなど、いろいろ想像すると皆さんも楽しめると思います。

――スマホゲームの場合、家庭用ゲームと違って“尺”が決められておらず、自由に作ることができる反面、将来を見越してある程度余裕を持たせた作りにしなければならない難しさがあると思うのですが、『ロマサガRS』ではどのように対応していくのでしょうか?

河津 その点については、配信後のユーザーの反応を見ながらじっくりと考えていくことになると思います。ストーリーにもさまざまな仕掛けを盛り込んでいますが、どこがフックするのか、どのキャラクターが人気になるのかなど、やってみないとわからないことばかりですからね。それができるのもスマホゲームのいいところですよね。

市川 リリースから半年くらいの「最初はこうしていこう」という大枠の展開は河津と話をしてある程度まとめてあるのですが、それさえもユーザーの反応次第で変わっていくと思います。

――リリース時点で配信されるストーリーは、それだけでひと区切りつくようになっているのでしょうか?

市川 全体の“序章”という扱いではありますが、ひとつのまとまりにはなっています。残念ながら、大きな謎が解き明かされる……という段階まではまだ行きませんが。

――ということは“死食”については、まだ……?

市川 すごく気になるところだとは思いますが、「どうなるのか?」と感じながら楽しんでいただければと。

河津 僕たちもある意味楽しみにしています(笑)。家庭用ゲームでは、ネット上にすべての情報が出た状態でプレイされる人もいると思いますが、『ロマサガRS』ではこの先どうなるのかが誰にも、制作側にさえもすべてはわかっていないので、スリルを味わいながら展開を楽しめるのではないでしょうか。テーブルトークRPGのゲームマスターのような気分です。

――メインストーリーについては河津さんと、とちぼり(木)さんで担当されているのでしょうか?

河津 ポルカのシナリオについては、とちぼりさんに書いてもらっています。

市川 大枠については河津が設定を行い、その後のことはとちぼりさんにおまかせする形ですね。

河津 その中でどこまでやっていいのかだけ、僕がチェックしています。とちぼりさんのシナリオは、主人公がアグレッシブに行動するという特徴があるのですが、ポルカもかなり自分から動くキャラクターになっています。従来の『サガ』シリーズでは、“プレイヤーに行動を委ねる”ためにあえて受動的なキャラクターに設定していたので、この点も『ロマサガRS』ならではの特色になっているかもしれません。

――ポルカが主人公の本編と並行して、イベントでも本編とは別のストーリーが展開すると伺ったのですが。

市川 そうですね。あるキャラクターにスポットを当てたサブストーリーだったり、クリスマスやハロウィンなど季節もののオリジナルストーリーを展開していこうと考えています。

山口 キャラクターたちの魅力をより深く知ることができるようなものはもちろん、腕試し的なものも考えています。

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▲本編だけでもワクワクさせてくれるものだったが、さらにストーリーが楽しめる 『ロマサガRS』。楽しみだ!

――オールスターものだけあって、キャラクター作りにもすごく力が入っていますよね。

市川  『ロマサガRS』の特徴のひとつにキャラクター育成があります。“自分が好きなキャラクターを育ててパーティーを組む”という『サガ』シリーズのテーマをできる限り満たすべく、育成についてはかなり細かくバランス調整を施しています。

山口 オールスターものである以上、どのキャラクターを使っても戦えるように工夫を重ねました。よくあるのは、強いキャラクターを優先して使わざるを得ず、お気に入りのキャラクターを泣く泣く諦めるというケースです。本作では、なるべくプレイヤーがお気に入りのキャククターで冒険を楽しめる、編成の“自由度”を保つよう努力しました。

市川 攻略に必要な編成に、少しアレンジを加えてもクリアーできるのが『サガ』シリーズの醍醐味でもあると思っているので、そのエッセンスはどうしても入れたいと思っています。新たなスタイルを手に入れるために課金していただくシステムにはなっているのですが、低いレアリティーのスタイルでも、鍛え上げれば高レアリティーの育っていないスタイルよりも強くなるようにしたいと思っています。運営を考えると一考の余地はありそうですが、現状はこのバランスで行くつもりです。

山口 よくあるソーシャルゲームだと、“最強パーティー”のパターンがある程度決まってしまうことが多いのですが、『ロマサガRS』ではそのパターンが非常に多岐に渡るようになっています。最初は好きなキャラクターで進めてもらいつつ、詰まったらいろいろと試行錯誤してみてください。考えることが多くて難しい面もありますが、慣れると本当に楽しいんですよ。

――プレイヤーとしては嬉しい限りですが、開発のことを考えるとバランスの調整がとてもたいへんそうですね……。

市川 正直、この調整にものすごく時間がかかりました。

河津  「そろそろお見せできます」と言われても、そのあとすぐに練り直しが入って何度も延期されてしまって、なかなか見せてもらえませんでしたからね。僕も楽しみにしていたんですけど(笑)。

市川 その節は申し訳ございませんでした(笑)。

河津  『ロマサガRS』は育てる要素がものすごく多いのでたいへんかもしれませんが、それだけじっくり遊べるものになっているので、当初からのテーマである“広げていく”、という意味ではいい作品になったのではないかと思います。

市川 世にこれだけ多くのゲームが溢れている中、ユーザーの皆さんは「変わったものがほしい」と思っているはずなんですよ。そこで『ロマサガRS』のシステムはそういった人たちに大きなインパクトを与えるものになっていると思っています。

山口 ユーザーが遊べる要素は“やり過ぎ“なぐらい詰め込みましたからね。

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『ロマサガ3』で描けなかったストーリーが『ロマサガRS』に

――『ロマサガ3』も制作中とのことですが、『ロマサガRS』との関連もあるのでしょうか?

市川 『ロマサガRS』はもともと『ロマサガ3』をベースにした作品ですので、『ロマサガ3』本編で語られなかった物語については『ロマサガRS』で出てくる可能性があります。

河津  『ロマサガ3』で語らなかった要素について、ユーザーの皆さんが想像を膨らませてくれていたりして、「今後どうなるんですか?」と聞かれたりもするんですよ。『ロマサガ3』はリメイクといっても今から大きく変えることはできないですが、『ロマサガRS』では、皆さんが気になっているところを補完できるようにできたらいいなと思っています。

市川  『ロマサガRS』は続編でありスピンオフ作品でもあるので、そのあたりは語りやすいかなと思っています。これまでゲームで語る機会がなかったエピソードなどもあるので、そのあたりは折を見て実現したいですね。それからゲームだけでなく、舞台などとも連動してつなげていければもっとおもしろくなると思います。

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――それでは、最後にこれから『ロマサガRS』をプレイしようという読者に向けてコメントをお願いします。

市川  『サガ』シリーズは、ゲームの各作品はもちろん、舞台から入ってくれた人もいて、本当に幅広いファンの方に支えていただきました。『ロマサガRS』も、いろんな人に楽しんでもらえるような作品に仕上げましたので、まずはダウンロードをしてプレイしていただければなと思っています。基本プレイは無料ですしね(笑)。

山口 『サガ』ファンの方には当時の気持ちに戻ってチャレンジしていただきたいですね。プレイしたことがない人には、これまでのスマホゲームにはないような歯応えが感じられると思うので、新しいRPGの魅力を知って『サガ』のことも好きになっていただけたらうれしいです。

河津 スマートフォンというのは遊びやすい環境ですし、われわれとも双方向でコミュニケーションを取りながらゲームを作っていけるのが魅力だと思っています。まずはプレイしていただいて、「ここをこうしてほしい」とか「このキャラクターの話がもっと読みたい」という声を寄せてください。それを反映したりして、よりよいものにしていけたらと考えています。

ロマンシング サガ リ・ユニバース

対応機種iOS/Android
価格無料(アプリ内課金あり)
このゲームの詳細を見る
ジャンルRPG
メーカースクウェア・エニックス/アカツキ
公式サイトhttps://www.jp.square-enix.com/saga_reuniverse/
公式Twitterhttps://twitter.com/romasaga_rs
配信日配信中
コピーライト
備考© 1993,2010,2016,2017 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
Planned & Developed by ArtePiazza

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ILLUSTRATION: TOMOMI KOBAYASHI

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