スマホで表現するコンシューマらしさとは?gumiの新作『ブレイジング オデッセイ』をスクエニの時田氏が遊んでみた!

2016-07-28 15:00 投稿

“魂は細部に宿る”

画面からおもしろそうな匂いが漂う、2016年夏に配信を控えたgumiの新作RPG『ブレイジング オデッセイ』(以下、『ブレオデ』)。本作の魅力を開発元のFenris 統括 髙田誠氏といっしょに紐解くスペシャル対談の第2弾をお届け!

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gumiの新作RPG『ブレイジング オデッセイ』に期待せずにはいられないワケ

躍動感に溢れる2Dグラフィック、爽快さと戦略性を備えたバトル、シリアスに展開するシナリオなど、昔コンシューマを遊んでいた人には懐かしく、当時を知らない人には新鮮に映るだろう『ブレオデ』。

今回のインタビューでは、スクウェア・エニックスのレジェンドクリエイターで、『ファイナルファンタジーレジェンズ 時空ノ水晶』のプロデューサーを務める時田 貴司氏を迎え、スマホで表現するコンシューマらしさ、『ブレオデ』の演出や世界観について迫っていこう。

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Fenris
統括 髙田誠氏(左)

スクウェア・エニックス
第9ビジネス・ディビジョン シニア・マネージャー
プロデューサー
時田 貴司氏(右)

対談を機会に10年越しの再会!

――おふたりはいつからのお知り合いなのでしょうか?

時田:髙田さんとは2003年からですね。半熟英雄シリーズの『エッグモンスターHERO』(DS)をいっしょにやりました。

髙田:僕がネバーランドカンパニーにいたころ。懐かしいですね。当時、時田さんはおいくつでしたっけ?

時田:39歳とかそのくらい。

髙田:僕は37歳でしたね。若かったですよね。朝帰りもあって、皆さんが通勤していくところを僕らは逆のほうに向かったり……本当に若かったです。いまはそんなの無理ですもん(笑)。

時田:いろんな意味で脂が乗っていましたね。

髙田:パワー的にはそうですよね。それで、その作品が終わった後に、時田さんと飲みに行こうってずっと言ってたんですけど、中々その機会がなくって。それで今回の対談の話になったときに、これは時田さんに出ていただくしかないと! 連絡先がわからなかったから、Facebookでいきなり飲みませんかって(笑)。それで、『ブレイジングオデッセイ』を少しやっていただきました。

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――プレイされた印象はいかがでしたか?

時田ガッツリ作ってるなって思いましたよ。コンシューマと言っても遜色ないくらい。これ、どれくらいの時間とお金をかけたんだろうなって……。いまはスマホゲームもリッチに作り込まないと差別化ができないので。

髙田:そうですね。いまはまだそれで差別化が図れると思います。でも、将来的にはそれだけでは厳しくなるでしょうね。

コンシューマらしさとはスケール感

――時田さんは『ファイナルファンタジーレジェンズ 時空ノ水晶』について、『FF』らしいコンシューマ級の作品を提供することがコンセプトのひとつと語っていました。『ブレオデ』もコンシューマライクに進めているタイトルですが、スマホゲームでコンシューマらしさを表現するには何が必要なのでしょうか?

時田:『時空ノ水晶』の場合はボリューム感。ストーリーだったりマップだったり、世界の広さというか……スケール感かな? もちろんディテール、グラフィックやサウンドも大事だけど。

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▲時空を超え、破滅する世界の未来を救うための物語が展開する『ファイナルファンタジーレジェンズ 時空ノ水晶』。“時のクリスタル”の存在が世界を大きく変えていく。

髙田:そうですね。そのスケール感がどうして必要かと言うと、暇つぶしの延長ではない、もう一歩踏み込んだ体験をユーザーに贈りたいからって気持ちがあるからなのでしょうね。“魂は細部に宿る”じゃないですけど、ディテールだとか、そういった部分を通じて、数十年後にいい体験として思い出してもらいたい。早貸さんとの対談で語ったようなことになりますけれど、そのために作っているのだと思うんです。でも、運営型ゲームの場合だとゲームサイクルも考えないといけないから、しょっちゅう喧嘩しながら作っています(笑)。

時田:いや、難しいですよ。うちも毎週何かしらのイベントをやっていますけど、そうなるとお金の取り合いよりも(ユーザーの)時間の取り合いになる。必ずしもやり込みができればいいってものじゃない。適度なサイクルで、適度に遊べることが重要。疲れてやめちゃう人もいるから、その塩梅が難しいなって。

髙田:でも、ユーザーさんの時間を奪い取るつもりなんだから、よほど自信のあるものじゃないとそんな権利はありませんよね。それに、クリエイターというか、ゲーム屋さんとしては、なるべく長い時間を自分たちのゲームで遊んでもらいたいって気持ちも強いです。

時田:結局、ゲームのノリ、お客さんのノリにもよりますよね。リリースしてみないと、生の声はわからないので。アップデートを繰り返しながらわかってくることもある。『時空ノ水晶』もリリースしてから17ヶ月が経ちますけれど、ようやくスタッフが運営のペースを確立できたところです。最低でも3、4ヶ月は運営してみないとツボはわかってこないね。

髙田:いままでのパッケージゲームは発売したら終わりだったじゃないですか。ユーザーさんも高いお金を出して買っているので、普段よりテンションが上げっているから、ある程度は我慢して遊んでくれる。でも、スマホゲームの場合は無料でも遊べてしまうので、いかに気持ちを切らさずに継続して遊んでもらうかが難しいですよね。

時田:こういうガッツリしたRPGが増えてくると、最終的にはお客さんが好みでチョイスするようになると思います。そういう意味ではコアに遊んでくれるお客さんがついてくれれば、きちんと運営できるんだなっていうのは実感できています。ファンが盛り上がっていると、久しぶりに戻ってみようかなって人も出てくる。例えるならマンガの連載ですよ。しばらく読んでなかったけれど、おもしろくなってきたらしいから久しぶりに読んでみようって。

――最近ですと王道を名乗るスマホゲームも増えていますが、王道とは何でしょう?

時田:RPGと言えばこれだってツボを踏襲しておくことですね。でも、『FF』的な王道もあれば『ドラクエ』的な王道もありますし、十人十色ですよ。“王道”と言っておいたほうが(演出としての)裏切りが有効になるって事情もありますけどね!

(一同爆笑)

髙田:僕も十人十色だと思います。RPGって自分が主人公になりきるものじゃないですか。テーブルトークから始まっていますし、役割を演じることが大切だと思うんですよね。演じるには没頭しないといけないから、世界設定やシナリオが絶対に必要。そこで好き嫌いが決まると思うんですよ。『ブレオデ』で実際に戦うキャラと物語に没入するためのキャラを分けているのもそれが理由です。主人公はプレイヤーの分身。それが僕らの王道ですかね。

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スマホゲームは必殺技を封じられたようなもの

――ゲームの演出に関してはコンシューマとスマホで作り方に違いはあるのでしょうか?

時田:スマホゲームは個室で長時間遊ぶものではないので、短くても継続性を作らないといけない部分に苦労してます。それこそ、週刊連載で毎回惹きを作って、それなりに山場もあってみたいに小刻みにやらないといけない。個室にこもって一気に遊ぶコンシューマとは考え方を変えないといけないんです。『ブレオデ』のシナリオは何名くらいで作ってるんですか?

髙田:基本はひとりです。設定を作るのはディレクターで、それをライターが起こしています。言い回しとかはみんなでチェックしますね。ディレクターは20代ですから、もう息子みたいな年齢差ですよ。

時田:若いですね! 僕がスーファミのゲームを作っていたころ、それくらいの年代だった。でも、その世代が頑張るのが正しい気はしますよね。アニメとかマンガがそうですけど、20代くらいの人が作ったものを10代が見ると、熱い感じが伝わるんですよ。親父世代より兄貴世代の方がリンクできる部分があるというか、憧れや共感が持てるんじゃないかな。

髙田:そう思います。

時田:『時空ノ水晶』は30代がメインですよ。オールドユーザーの反応がいい(笑)。逆に若い子にはスーファミのころにあったような表現は新鮮に感じられることもあるみたいです。

――スマホだからこその演出の苦労はありますか? たとえば、コンシューマだと主要キャラが死んでしまうみたいなドラマチックなことができますよね。

時田仲間を殺せないのは必殺技を封じられたようなものです。だからNPCに死んでもらう(笑)。引き継ぐキャラがいれば仲間を殺してもいいんですけど、やっぱりキャラへの愛着もあると思うので。

髙田:僕らの場合もガチャのキャラは絶対に殺せないですね。でも、NPCは死にます(笑)。ネタバレになるので詳細は話せませんけど。やっぱりNPCでやるしかないのかなって。そういう展開、本当は大好きなんですけどね。

――『ブレオデ』の主人公は記憶喪失ですよね。生きてはいますけど、中身が無い状態というか。

髙田:ネバーランドでは主人公の設定について昔から議論があったんですよ。『ドラクエ』派なのか『FF』派なのかって。要するに主人公がしゃべる、しゃべらないの違いなんですけど、これってかなり重要です。『ブレオデ』の場合は『ドラクエ』ですね。かなりプレーンな性格で、主人公がしゃべるときは選択肢が出て、プレイヤーが選びます。でも、結果は変わらなくて、ちょこっと台詞が変わるくらい。大筋は変わらなくても、選択することでプレイヤー本人の想いを乗せてほしいんです。それにしても、記憶喪失って便利な設定ですよね(笑)。

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▲オープニングのある出来事をきっかけに記憶を失う主人公。名前は自由に変更可能。

頑なにやる部分、柔軟にやる部分の線引きが必要

――『ブレオデ』には物語の支柱として、『FF』のクリスタルに該当するものはあるのですか?

髙田:クリスタルほどはっきりしたものではありませんけど、アパティア神殿という場所に不思議な球体があります。アパティア神殿ではキャラクターが手に入るのですが、彼らは2000年前に殺し合った英霊の魂なんです。開発の早い段階から魂との絆で難題を解決していくという骨子はできていましたね。じつは元々『ブレイジングオデッセイ』というタイトルでもなかったんです。

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▲アパティアは太古の神ラティオが強力な英雄や魔物の魂を世に留めるために作ったとされている。
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時田:なんだったの? なんとか&ドラゴン?

髙田:いやいや(笑)。反対されちゃったタイトルは『ジールオデッセイ』。ジールはドイツ語のゼーレ、魂から来てるんですけど、「それ、絶対に汁オデって書かれるからやめましょう」って、ノーと言わないことで有名な社長に言われちゃった!

――その魂、英霊は実際の神話に登場するものですか?

髙田:オリジナルです。作中の神から生み出された系譜ですね。人間とかハネビトとかケモノビトとか、5つの種族がいて、かつて光と闇のどちらかに属して戦っていたんですけど、その魂が神の遺産に保管されている、と言う設定です。彼らにもバックグラウンドがあり、戦争で親子諸共殺されていたり……死もひとつのキーワードですね。

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――やはりシリアス路線のほうが盛り上げやすいのでしょうか?

髙田:盛り上げやすいのは確かです。

時田:盛り上げると言えば、期待に応えるのも大事ですけど、予想を裏切るのも大事じゃないですか。そのバランスがメリハリを生むんでしょうね。

髙田:救いも用意しておかないと厳しいですよね。

時田:若いころは救いなんて知るかって作ってましたけどね!

髙田:尖っていたんですね。この年齢になっちゃうと落ち着きますけど(笑)。

時田:でも、年齢を重ねても変わる部分と変わらない部分があるかな。いまはより自然体で作れるようになったので、ここぞの裏切りが活きてくるんじゃないかなって。

髙田:僕も変わったつもりはないんです。でも、20代のディレクターといっしょにやってるとね、あの年代は尖ってるじゃないですか。彼も今後の対談に出てくると思うんですけど、そうやってファイティングポーズを取っているから自分を保っていられるところがある。だから、全部を潰しちゃうのはダメなんです。信頼関係が結べなくなるから。それでも、尖りすぎていると痛いので、「いや、そのこだわりって論理的じゃないよ」と伝えて、フラットに仕上げるのがおじさんの仕事です(笑)。

――若者とベテラン、どちらがやりやすいですか?

時田:エンジニアはベテラン。

髙田:その方が絶対に良いですね。

時田:逆に企画とかは若い人。職人的な人とのバランスもあるよね。

髙田:うちの企画はみんな20代なんですよ。でも、データ周りのヘッドは僕と同い年なんですね。

時田:企画以外はベテランで固めているよね。

髙田:「今回は彼を男にするんで、みなさんわかってますね! 僕じゃないですよ!」って感じに始めるんです(笑)。感性の部分は若いディレクターに任せるんですよ。それに対してNGを言って良いのは僕だけ。彼の意見を尊重して、彼が動きやすいように立ち回るんです。

時田:うちのスタッフの世代は幅広いです。『時空ノ水晶』の方針としては、メインストーリーはあるんですけど、それ以外は何をやっても自由というか、入れたいものがあるなら入れてもいいよってことにしてるんです。イメージ通りに綺麗に作るより、凸凹していてもバラエティがある方がいいかなって。スーファミの時代もそんな風に作っていましたからね。後期作品の『ライブ・ア・ライブ』とか『ファイナルファンタジーⅥ』みたいな群像劇は競作するような体制が多かった気がします。そうなると、担当は決まってるけど仕様書はないみたいなことになる(笑)。

髙田:それ、同じです。うちも書かないんですよ! 元々プログラマーがゲームを作ってしまう環境なので、仕様書を書かなくて済む場合が多いんです。直接データを見て、フムフムこうすればいいのかって、そういうタイプが伝統的に多かった。今回のモーションは凄いんですけど、これもプランナーから仕様書は出ませんから。「仕様書は出してよ!」って言ったら、わずか2行ですもん! これじゃわかんないですよ(笑)。2行の仕様書でキャラクターを毎月量産するのか……。

時田:ここからが地獄ですよ。

髙田:大変でしょうけど、頑張ろうと思います。

――最後に時田さんからエール、あるいはアドバイスをお願いします。

時田:現在はタイトルも多くて、トレンドの移り変わりも早いので、入れ替わりが激しいですよね。昔だったらもっと長くやっていけたものが、半年くらいで結果が見えてしまう場合だってあります。そういう意味では最初のボリュームが運命を左右するんですよ。あとは当初の予定通りにやるものと、お客さんの声を聞きながらやる部分はキッチリ分けないと厳しいかな。どっちかだけじゃ成立しない。頑なにやる部分、柔軟にやる部分の線引きが必要。どこに線引きをするか、それがゲームの個性だと思います。僕らも日々、驚いてますから。「これは受けると思ったのに!」ってこともあれば「え、これが受けるんだ!?」ってこともある。

髙田:乾坤一擲のつもりで作った仕様が響かなかったってこともあるでしょうし、運営してからユーザーさんと触れ合わないといけませんよね。

時田:それがおもしろいところでもあります。反応がすぐに返ってくるので。

髙田:コンシューマだともう船は出ちゃってるので、申し訳ありませんと言うしかないですからね。当時の声はハガキで届いたので、ラグがありましたし。でも、ご意見に対しては真摯に応えていこうと思ってます。8月末にはリリースされていると思いますので、来年辺り『時空ノ水晶』とコラボできたらうれしいですね。

時田:あ、その時まで頑張れってこと?

髙田:いやいや! こっちこそ頑張らないといけません。

時田:その時にはもう相手にされないかもしれない(笑)。

髙田:いやいや!! ぜひコラボキャラを作らせてくださいね。その時はよろしくお願いします。

時田:僕も楽しみにしてます!

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ファイナルファンタジー レジェンズ 時空ノ水晶

ジャンル
RPG
メーカー
スクウェア・エニックス
配信日
配信中
価格
無料(アプリ内課金あり)
対応機種
iOS/Android

ブレイジング オデッセイ

ジャンル
RPG
メーカー
gumi
配信日
2016年夏配信予定
対応機種
iOS、Android

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