『プロ野球ロワイヤル』配信直前記念! プロデューサー馬場保仁氏 × 横浜DeNAベイスターズGM高田繁氏インタビュー【前編】

2016-03-30 12:00 投稿

プロ野球チームを保有するDeNAだからこそ、つくれる野球ゲーム!?

プロ野球チームのGMとして、街をつくり、選手を育て、人事・編成をしてチームを強くしていくスマホアプリゲーム『プロ野球ロワイヤル』が、いよいよ明日(2016年3月31日)に配信開始となる。これに合わせて、チーム編成を担うGM(ゼネラルマネージャー)とはどういった仕事なのかを探るべく、横浜DeNAベイスターズでGMを務める高田繁氏(文中では高田)と、『プロ野球ロワイヤル』のプロデューサー馬場保仁氏(文中では馬場)との対談を実施。あまり知られていないGMの仕事や、チーム編成についてお話をうかがった。

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▲高田繁氏(写真左)と馬場保仁氏(写真右)。対談はキャンプイン直前の1月28日に、横浜スタジアムで行われた。

GMにはGMの、現場には現場の仕事がある

 
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――今回は、リアルなGMの仕事を知り、よりディープに『プロ野球ロワイヤル』を遊んでもらうべく、開発元がDeNAということで、横浜DeNAベイスターズで実際に腕を振るわれている高田GMにお話をうかがえればと思います。まず、我々には想像もつかないのですが、プロ野球のGMの仕事とはどういったことをするのでしょうか?
高田 GM制度はMLB(メジャーリーグベースボール)では一般的で、野球ファンの方はMLBのGMのほうがなじみがあるかと思いますが、日本のプロ野球のGMは少し違います。DeNAベイスターズに限定した話になりますが、まず私は経営には一切タッチしていません。本社とお金の交渉をすることはなく、決まった予算の中で監督、コーチ、ドラフト、トレードなどのチーム編成をやっています。ただ、それらに関してもすべてを好き勝手にやるわけではありません。たとえば今年の場合、監督の人選で「ラミレス氏はどうですか?」と球団社長に提案して、社長といっしょに面談して人柄などを見ました。最終決定は経営陣が行うのです。私はその前段階で編成を決めていく立場(仕事)ですね。

――1軍だけではなくファーム(2軍)の編成もされるのですか?
高田 そうですね。我々の場合、1軍のチーム編成までは私を中心としたフロントでやります。そして、試合に関するオーダーや作戦には一切口を出しません。そこは監督とコーチのフィールドですから。ただ、1軍と2軍のあいだで選手を入れ換えるときはフロントに確認が入ります。逆に、ファーム(2軍)に関してはすべてフロント主導でやっています。

――え!? ファームのほうがすべてなのですか?
高田 もちろん実際の試合での作戦は別ですよ(笑)。ただ、「この選手を先発で何試合くらい使ってほしい」、「この選手は結果はどうであれ何打席以上立たせてくれ」といった指示を出しています。もちろん、試合に負けてもいいとは思っていませんが、ファームは“1軍に選手を送り出すための育成の場”と定義していますから。先発で育てるのか、三塁手で育てるのか、外野手で育てるのか、といった育成計画を我々が立てています。これはチームでの役割のバランスやドラフト、補強に深く関わる“編成”の部分ですからね。

――基本的に、入ったばかりの若い選手は体作りが中心、徐々に実戦で経験を積ませる流れになるのでしょうか?
高田 逆ですね。若いうちからドンドン試合に出していくのが我々の方針です。練習も大切ですが、とにかく試合で経験を積ませます。試合でしか培われないものは多いですから。もちろん、一度決めたらずっと試合に出し続けるというわけではなく、毎月1回は育成会議をして軌道修正をして、「まだ体力的に厳しかった……」と判断すれば練習中心の方針に戻しますよ。また、シーズン中の1軍とファームの選手入れ換えにはフロントの承認が必要ですが、ひと言でいうなら“1軍はシーズンに入るまで”、“ファームはシーズン中もフロント主導”という形ですね。
馬場 1軍とファームの選手入れ換えもすべてGMを通すんですね。把握が大変じゃないですか?
高田 毎日ファームから報告が上がっていて、いまなら“右の先発投手ならこの選手”、“左の代打ならこの選手”、“レギュラーで使うならこの選手”という形で推薦選手が決まっています。1軍選手の故障も含めて1軍から声がかかったときにはすぐに対応できる体制になっています。

 
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――支配下登録選手枠の使い方もGMの仕事になるのでしょうか?
高田 そうですね。私たちの場合、枠に関してはいまは70枠のうち66~67人にしてあります。急遽外国人を獲るであるとか、育成選手を支配下登録したいといったケースもありますから。適正な人数としては、66人くらいだと考えています。
馬場 シーズン中に外国人選手を獲る場合は、どこかから推薦がくるのですか? それとも高田GMが探しておられるのですか?
高田 アメリカにスカウトがいますので、リストがたくさん挙がってきます。そこから“いまは内野手が欲しい”、“抑え投手はいないか”などを調べていくといった具合ですね。
馬場 高田GMも現役時代に守備位置のコンバートを経験されましたが、コンバートに関してもGM主導ですか?
高田 そうですね。監督やコーチが勝手にコンバートすることはないです。

――ライトからセンターへ、といった変更は比較的頻繁に見る気がするのですが。
高田 それは大丈夫です(笑)。打順や外野のどこを守るかというのは監督判断です。ただ、外野手を内野手にしたり、右打者を左打者に変更する場合はフロントの了解のもとにやるという形ですね。
馬場 なるほど。では投手に新しい球種を覚えさせる、というのはどうでしょう?
高田 それも現場でやります。そのためのピッチングコーチですから(笑)。ただ、オーバースローをアンダースローに変更したり、先発投手を抑えで使う場合はフロントの許可が必要になります。このあたりはチーム編成に関わる部分ですからね。

――細かいながらも、線引きはハッキリしているんですね。
高田 そりゃあそうです。現場の責任と判断でやるべきことに対して、例えば「何であそこでピッチャー変えたんだ!」なんて言ったら、現場から「じゃあ、アンタがやれよ!」って言われますよ(笑)。

――たしかに(笑)。
高田 そんな状態だと監督なんてやっていられないと思うので、絶対ダメですよね。チーム作りはフロントでやるけれども、いざ試合になったら監督やコーチを信頼しています。ただ、ファームに関しては明確に“育成の場”という位置づけなので、起用方法の指示はこちらからも出す、といった感じですね。

人数が多ければ多いほどいいというわけではない

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馬場 お話にあった“試合でないと育成できないこと”というのはどんなことでしょうか?
高田 基本的にあらゆることは実戦でなければうまくならないですよ。例えばバッティングにしても、練習で打撃投手が投げる球は“打たせるための球”ですから、全然違います。もしかしたら、いまの私でもちょっとやれば打てるかもというくらいの(笑)。
馬場 もしかしなくても打てそうな気がします(笑)。
高田 冗談はさておき、“ブルペンではスゴイけどマウンドに行くとダメ”という選手もよく聞くでしょう? 実戦を経験しないとうまくならないところはいっぱいあります。
馬場 走り込みで体力をつけたり、基礎的なフィジカル部分は練習で底上げできるけれど、実戦でなければ身につかない技術の部分も多いのですね。
高田 そうです。ですので、ファームといえども試合に出るチャンスを与えず、何年かやってダメだから戦力外というのは、よくないと考えています。故障でもない限りはファームで若い人をどんどん使っていくのが我々の方針です。実力差があればもちろん実力が上の選手を使いますけど、同じくらいの実力のふたりがいるならば若い選手に多くチャンスを与えたい。いちばんいいのは、若手、中堅、ベテランのバランスが取れている状態です。いまのウチは少し若手が多いですね。とくに若返りを意識しているわけではないのですが、過渡期でしょうか。
馬場 チームのカラーは出ていていいですよね。若手が育つまでの間は外国人助っ人でしのぐということもできますし。
高田 チームの考えとしては、若手がどんどんチャンスをもらえる環境にしたいと思っています。例えばホークス(福岡ソフトバンクホークス)のように3軍まであって、多くの戦力を抱えるというやり方はできませんが、若手にとってはチャンスが多くあるチームだと思います。そのうえで、チャンスをもらっても活かせない、実力がなくて消えていくというのは仕方のないことですけどね。
馬場 サッカーのようにレンタル移籍があればいいと思うんですけどね。
高田 似たような制度はありますけど、難しいですよね。

――1軍登録、レギュラーの保障や試合での使われかたの問題が出てきたり。
高田 そうですね。なので、適正な人数で編成することが重要になります。2年くらい前はピッチャーの数が多すぎて、故障もないのにファームでも試合に投げられないという状態もありました。そこで、断腸の思いで人数を減らし、どんどん試合で投げて、試合で得た課題を練習するという形を取れるようにしました。1軍は実力勝負ですが、ファームでもチャンスがないという状態は避けようと。試合に出せえてもらえずに、年齢が高くなったから戦力外というのは違いますよね。
馬場 適正な人数と野手投手のバランスはどのくらいだとお考えですか?
高田 理想としては70人の登録枠のうち66人くらいを支配下選手として、そのうちピッチャーが33人くらいでしょうか。少しピッチャーの数が多めですが、1年を棒に振るような故障者が出る可能性もありますしね。
馬場 そうなんですね。素人考えでは人数が多いほうがいいと思っていました。選手を試合に出してあげるために、適正な人数があるということが目から鱗です。
高田 ホークスのほか、ジャイアンツ(東京読売ジャイアンツ)も今年から3軍を持つみたいですけれど、これは独自に試合を組めるからできることなんですよ。3軍を持つということは選手だけではなく、監督やコーチが必要になりますし、韓国や台湾に遠征に行ったりと、ものすごくお金がかかります。私たちにかぎらず、多くの球団は真似ができないと思います。当然、人数が多いほどいい選手が出てくる可能性は高くなりますけどね。じゃあ、人数が少ないと強いチームができないかというとそんなことはありません。ファイターズ(北海道日本ハムファイターズ)は育成選手も獲っていないですが、これは最初から若い人を試合で使って強くしようという考えだからです。我々も似たような考えでやっているのですが、芽吹くのはもう少し先でしょうか。『プロ野球ロワイヤル』でも筒香(嘉智選手)のような高校生スラッガーや、2016年のドラフトなら創価大学の田中(正義)投手がドラフトで獲れれば、チーム作りが大きく前進するんじゃないかな(笑)
馬場 そうですね(笑)。有望な選手を獲得して、それこそ、しっかり育成していただければ…ですね。

日本ではGMになれる人材が少ないのが問題

 
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――つぎの質問ですが、日本のプロ野球チームではGM制度を採用していない球団もあります。GM制度にした場合のメリットはどんなものがあるのでしょうか?
高田 むずかしいですね。状況によってメリットもデメリットもありますから。まず、アメリカの場合はGM主導ですべてを決定してから「このチームでどうぞ」と現場に投げるのが一般的です。でも、日本の場合は監督に元スター選手を連れてくることが多いじゃないですか。そういう人は当然、編成にも口を出したいわけですよ(笑)。逆に、球団の経営陣には野球をあまり知らない人がくることも多いですよね。そうすると、たとえばドラフトでもどうしても監督に相談するんですよ。そうすると、監督は来年すぐにでも活躍できそうな即戦力を獲りたがるんですよね。そりゃそうです、自分のクビがかかっているんですから(笑)。こうなると、長期的な編成のビジョンが抜け落ちがちになってしまいます。その点、GM制度であれば即戦力が必要な年、数年先を見据えて獲得したい選手など、目先のことに囚われないチーム作りができると思います。

――先々を見据えた編成はフロントじゃないとむずかしいということですね。
高田 そうですね。監督が変わってもチームの方針自体はブレることなく進められますから。ただ、現状では採用が難しい球団も多いと思います。1軍経験があまりない人や、野球をあまり知らない人が“チーム編成が優秀だから”という理由で来たとして、スター選手だった監督、コーチが言うことを聞くと思います? なかなか難しいですよね。なので、私のように現役をやり、監督やコーチをやって、年齢もある程度高い人間がGMとして入るしかないのが現状です。そして私の場合は、球団買収後に最初からGM制度をとっていて「そういう条件で監督をやってもらえますか?」とお話をしてから監督をお願いしています。そこを含めて判断してもらうわけです。なので、ほかの球団では、いまからGM制度を作ったとしても衝突することが多そうな気がします。

――なるほど。
高田 アメリカの場合は、現場経験がなくても大学を出てすぐに優秀な人材がGM職に付くこともあります。監督も元スター選手であることが絶対条件ではなく、いきなりメジャーの監督に抜擢されることは少ない。1Aから2A、3Aと監督として実績を積んでいくケースが多いですよね。
馬場 文化も違いますし、同じことを日本でやるのは……。
高田 時間がかかるでしょうね。今回、ラミレス監督ではなくて“無名だけど優秀な人材”を連れてきたとすると、各方面で納得しない人が多かったことが想像されます。元スター選手を監督にするという慣習がなくならない限り、GMという職種もある程度実績がある人間じゃないと勤まらないと思います。必然的に、現状の日本球界ではGMになれる候補者が少ないんですよ。

――高田さんも最初にGMのお話があったときは、想像もしていませんでしたか?
高田 スワローズ(東京ヤクルトスワローズ)での監督を終えた後は、もう野球に関することは一切やらないと思っていました(笑)。選手、監督、コーチ、評論家、ファイターズでのGMと、ひと通りのことはやったので。だけど、そのころに春田元オーナーと、池田社長から「球団の話を聞かせてほしい」と連絡をもらったので、「知っていることでよければ話しますよ」と返事をしてお話だけさせてもらったんですよ。最初はGMをやる気はなかったのですが、「我々は球団経営について何もしらないから2年間だけやってほしい」とお願いされて、結果として受けることになりました。
馬場 そして気づいたら、早5年目ですね(笑)。
高田 最初に参入した年は、もう12月だったので、ドラフトも終わって編成もほぼ終わりという状況だったので実質的な任期は1年でした。なので、当初からもう1年、計3年はやらないといけないなと思っていました。それからもうひとつ、春田さんとの約束で「任期は2年でいいからGM制度を続けていくために後継者を作ってください」とお願いされていたけれど、後継者がいなくていまに至るわけです(笑)。そんな経緯ですが、今年は球場の運営会社も買い取って“これなら黒字にできるかもしれない”というある意味“いい時期”に差しかかっています。苦労もしましたが、球団が成長していく過程に立ち会えるのは野球人として幸せなことですね

〆用

⇒さらなる核心へ!インタビュー後編
⇒『プロ野球ロワイヤル』公式サイト

プロ野球ロワイヤル

ジャンル
野球
メーカー
DeNA
価格
無料(アプリ内課金あり)
対応機種
iOS、Android

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