【独占】元『ぷよクエ』Pと『クロノ・トリガー』シナリオライターがグリーで新作を製作中!?(前編)
2015-09-11 14:00 投稿
偶然が偶然を呼んだまさかのインタビュー
2015年8月某日。記者の『Facebook Messenger』宛に一通のメッセージが届いた。
宛名には“高 大輔”の文字。ファミ通App読者からしてみると、『ぷよぷよ!!クエスト』(以下、『ぷよクエ』)のプロデューサーとして周知されている存在だろう。
じつは、高氏は記者が学生時代にアルバイトをしていた会社で社員として働いていた大先輩。つまり先輩後輩の間柄なのである。
とはいえ、記者がそのアルバイト先を離れて以降、4~5年は音信不通の時期が続いた。そのため、高氏がファミ通Appの記事上に突如出てきたときには度肝を抜かされたものだ。
そんな同氏から「東京ゲームショウ2015(以下、TGS2015)で発表する新作があるんだけど、興味ある?」といった連絡があった。「4年振りの連絡が仕事かよ!」とも思ったが、それは胸の奥にそっとしまっておくとしよう。
ましてや『ぷよクエ』での功績を知る人間として、高氏の新作となればこちらも記者魂をくすぐられるといったもの。
その連絡を機に急遽インタビュー取材が決定したのだが、高氏に呼ばれた先はなんとグリーのオフィス。
さらにインタビューに同席する人物が、『クロノ・トリガー』や『クロノ・クロス』、『ゼノギアス』といった多くの名作コンシューマーゲームでシナリオを担当してきた“加藤正人氏”と聞かされた瞬間、自分の耳を疑った。
また記事を読んでもらえれば分かるように、なんとこのふたり、現在グリーに籍を置いて新作の製作に入っているのだという。
両氏の経歴からはあまりにも異質なグリーという会社で、モバイルとコンシューマで多大なる功績を挙げたふたりの人物がタッグを組んでいる。しかも、「かなりの力作」と豪語しているのだ。
本インタビューでは、読者の頭の中に多く浮かんでいるであろう疑問符を解消しつつ、さらには“噂の新作”についても可能な範囲で話をしてもらった。
オリジナル新作でのチャレンジを求めて
――今回、TGS2015で新作を発表されるとのことで、お伺いさせていただきました。よろしくお願い致します。
高 大輔氏(以下、高)&加藤正人氏(以下、加藤) よろしくお願いします。
――正直、取材依頼がFacebook上で来るとは思いませんでした(笑)。どこか時代を感じましたよ。
加藤 そうだったんですね(笑)。
高 「TGSに向けて新作出すんだけど、You来ちゃいなよ」みたいな感じで連絡をしましたね(笑)。
――「久しぶりの連絡がそれか!(笑)」とも思ったのですが、高さんならきっとおもしろい話を聞けるだろうなと思って、こうしてお伺いさせていただきました。ここからは仕事モードでお話させていただくので、よろしくお願いします。
高 こちらこそ(笑)。
――さっそくですが、セガゲームスで『ぷよクエ』プロデューサーとして最前線で活躍されてきた高さんと、『クロノ・トリガー』などのコンシューマーRPGのシナリオを手掛けられてきた加藤さん。おふたりがグリーに入社されるまでの歩みをお話いただけますでしょうか? まずは高さんからお願い致します。
高 セガゲームス在籍時は、『ぷよクエ』の運営プロデューサーとして2年、開発も含めると3年ぐらいでしょうか。すごくいい体験をさせていただきました。ですが、「オリジナルの作品でも勝負をしたい」とは心の底でずっと思っていたんです。
――たしかに、『ぷよクエ』は『ぷよぷよ』という大型IPを取り扱った作品である上に、運営プロデューサーとなると新作にも着手しづらいですよね。
高 もちろん“セガでゲームを出す”ということは、すごく価値のあることだと思います。会社としてもしっかりしていますし、ゲームづくりをする上で最高の環境ですから。
――それでも”オリジナルの新作タイトル作り”への想いは捨てきれなかった、と。
高 そうですね。「もっと未曾有の地で挑戦してもいいんじゃないか」とは、つねづね考えていました。
――これはユーザー目線での質問になりますが、『ぷよクエ』における高さんの存在は非常に大きなものだったと思います。『ぷよクエ』ファンの中には「もっと続けてほしかった」と思う人も多くいたと思うのですが?
高 そこは本当にごめんなさい。我侭だとは重々理解しています。ですが、どうしても自分のやりたいことを捨てきれませんでした。自分は『ぷよクエ』から離れてしまいましたが、まだまだ『ぷよクエ』は盛り上がっていくと思うので、今後も遊んでほしいです。
――そうして古巣を離れて新天地へ旅立ったわけですが、グリーを選ぶ決め手となった部分はどこでしたか?
高 自分の意思でイチから作り上げることができて、ある程度のことなら自分で決定できるところでしょうか。会社全体で見たら大きい会社ではありますが、自分の所属するWright Flyer Studios(ライトフライヤースタジオ)はまだまだ若い集団です。その分、自分の声が通りやすいと言いますか、やりたいことを自分の手で進めやすい環境なので、その点はいいなと。
――若い集団だからこそ、いい意味で土壌が固まりきっていないというのも大きそうですね。
高 そうですね。弊社はプラットフォームとしてのGREEで多方面へ展開したことによってすごく大きな会社になっていきましたが、ネイティブアプリ事業にフォーカスして考えると、まだまだこれから。ですが土壌が固まっていない分思い切ったこともできるので、それはひとつの強みだと思います。
――なるほど。そうして高さんがグリーに入られたことで、おふたりが出会われたんですね。
高 出会いは突然に……。
加藤 食パンくわえて……。
――少女マンガみたいになっていますよ(笑)。ちなみに高さんが入社されたときに、加藤さんも既にグリーにいらしたのですか?
加藤 私は、高が入社したあとにグリーにやってきました。
高 さすがに曲がり角を曲がったらぶつかって、とかではないんですけど(笑)。本当に奇跡的な出会いでしたね。
――どのような出会いだったのでしょうか?
高 私がグリーに入って「じゃあ何を作ろうか」となったときに、やっぱり“本格派のJRPGを作りたい”ってなったんです。「ファミコンやスーパーファミコンのときのRPGみたいなものを作りたい」ってずっと思っていて。それこそ『クロノ・トリガー』みたいな壮大なRPGですよ。それで構想が概ね決まった翌週ぐらいです。人事の人間から、「加藤正人さんという方が面接にきてるんだけど」って(笑)。
――加藤さんが偶然面接を受けに来たということでしょうか?
高 そうなんです!(笑)「『クロノ・トリガー』みたいなものを作ってやろう!」と思っていた矢先に、『クロノ・トリガー』のシナリオを作られた方が同じ会社にやって来た(笑)。
――それは凄い偶然ですね(笑)。
加藤 入社後にその話を聞いて、僕も驚きました(笑)。
――加藤さんはフリーでシナリオライターをやられているイメージが強いですが、現在はグリーの社員として所属されているのですか?
加藤 そうです。いまはイチ社員としてグリーに在籍しています。
高 社員であり、自分でも信じられないのですが……私の部下です!(笑)
一同:(笑)
高 こんなレジェンドを部下にするということは、凄まじいことですよ!
加藤 いやいや、レジェンドなんかじゃないですよ(笑)。
神が地上に舞い降りてきた
――そうしておふたりが出会ったわけですが、ともに仕事をしていく中で感じるお互いの印象はいかがですか? 高さんにとって、加藤さんはレジェンドのような存在だったわけですが。
高 まぁそうですね。でも、加藤が天才なのかなんなのか……最近はよくわかんないです(笑)。
――よくわかんないですか(笑)。
高 よくわかんないです(笑)。ちょっとネジが外れているなっていう部分があるので。
――神格化された存在ではなくなった、と?(笑)
高 間違いなく変わりましたね。いい意味でですけど、変人です。
加藤 ちょっと(笑)。
高 加藤の変人エピソードで印象的なものがひとつあるのですが、ゴールデンウィーク前に「ちゃんとシナリオを書き始める」って言い出して、急にシナリオを書きはじめたんですよ。それでゴールデンウィークが明けたら、A4で100枚ぐらいのシナリオがぶぁーって出てきて。
――100枚ですか!?
高 「なんなんだこの人は!」ってなりました(笑)。それと同時に「こんなものゲームで実装できるわけないだろう!」とも思ったんですが、加藤のそれを見てチー ムメンバーがものすごい乗っちゃいまして。「うぉー! 俺たちはこんなすごいシナリオが入るゲームを作っているんだ!」って、完全に実装する気満々でした ね(笑)。でもそのおかげなのか、開発スピードはすごく早くなりました。「数々の名作を作ってきた人なだけはあるなぁ」と感じましたよ。ほかに も……。
――変人エピソードがあるんですか?
加藤 これ以上は、さすがに(笑)。
高 (笑)。まぁなんと言いますか、オブラートに包んで自由な人ですよ。
――そんな加藤さんから見て、高さんはどんなお人ですか?
加藤 高とは初出社の前に開かれた飲み会で会ったのが最初ですね。実際に会ってみたら「思っていたより若いなぁ」とは思いました(笑)。
一同 (笑)
加藤 一応チームのトップなのである程度歳のいった人だと思っていたんですが、若くて、気さくで、しっかりしていて。
――自分の知っている高さんじゃないみたいだなぁ(笑)。
高 いや、成長したんです(笑)。
加藤 (笑)。でも関心しますよ。僕は上に立つのがどうも苦手で。どっちかっていうと個人主義で好きにものを作る方が性にあっているんです。上から管理して、厳しく言うのとか大嫌いなんです。だから高みたいにちゃんとチームをまとめて、いい具合に車輪を回しているのは、やっぱりすごいなぁと思います。
チームでのものづくりを求めて
――フリーライターとして活躍されてきた加藤さんですが、グリーの社員になるまでのあいだで、いったいどのような心境の変化があったのでしょうか?
加藤 13年ぐらいずっとフリーでやってきましたが、そろそろ新しいことをやりたいなと思ったのがきっかけです。ひとりでやることにも飽きてきたので、ふつうに面接をして、就職しました。やっていることは前と変わらずシナリオの執筆ですが(笑)。
――”集団での仕事に疲れてフリーになる”というお話はよく聞きますが、その逆というのも珍しいですよね。
加藤 そうですね。ただ、ここのところ外注がゆえの冷めたコミュニケーションとでも言いましょうか、そういうのが増えてきまして。シナリオを書いて、渡して、それでおしまい、みたいな。いっしょにものを作っている感覚が薄い。まるで流れ作業の一端を担っているような感じでした。そういうのが続いた結果、また集団でものを作りたくなった、というのが大きいです。
――そうなると「かつて所属していた古巣に帰ろう」という気持ちになる気もしますが、どうしてグリーに?
加藤 これは僕の性分なんですが、毎回新しいこと、次のことをしたいんです。だから何かをはじめるときは、昔いた場所に戻ったり、コネクションのある連中とよりを戻したりっていうのはなかなかないです。辞めたらもう次の会社、次の仕事場っていう風に、毎回毎回新しい環境でやってきました。
――だからこれまで携わってきた”コンシューマー”ではなく、初挑戦となる”モバイル”分野のグリーに辿り着いたわけですね。
加藤 そうですね。今回も「ぜんぜん違うことをやるか」みたいな感じで探していたら、グリーさんの方からお声掛けいただきまして。でも、僕自身ずっとコンシューマーでやってきたものだから、モバイル系とかスマホのゲームに対してちょっと否定的なイメージもあったんですよ。悪く言うと、ポチポチするだけで完結するゲームや、内容が似たりよったりのゲームで溢れかえっていたので。
――コンシューマーゲーム出身の方の中には、モバイルゲームにネガティブなイメージを持たれている方も少なからずいらっしゃいますね。
加藤 だから面接をしてくれた人間に「(モバイルゲームを)よくは思っていない」と、素直に言いました。そうしたら「業界的に、会社的に、そういう面はあったかもしれません。ですが、いまはそうじゃない。ただ純粋にいいゲームを作りたいんです」と言ってくれたので、その熱意を受け取って入社を決意した形です。
少人数がゆえに生まれる”あの頃のゲーム開発現場の空気”
――その後高さんからの誘いで加藤さんもチームに加わったわけですが、初となるモバイルゲームの現場はいかがですか?
加藤 入ってみて一番びっくりしたのが、いまのチームの人数ですね。家庭用ゲームの大作だと、100人ぐらいのチームで2~3年かけて作るのがふつうで、僕もそれをずっと見てきました。で、いまのチームに入ってみたら数十人そこらなんですよ。この体制で作っていると昔を思い出すんですよね。ファミコンやスーパーファミコンのゲームを作っていたときの感覚に、非常に近い。
――それこそ当時は少数精鋭で作られていましたからね。
加藤 昨今の100人規模のプロジェクトになるとあまり話をしない人間も当然のように出てきますが、いまは数十人なので、誰が、どこにいて、何の仕事してるのかって言うのも一目瞭然です。コミュニケーションも活発に行われているので、チーム一丸になって仕事をしている実感が得られるんですよ。いまのチームのおかげで、みんなでゲームを作る楽しさを再確認できた気がします。
――それは素晴らしいですね。
加藤 大人数の現場だと、みんなが職人気質であるがゆえに自分が関わっている領域以外には踏み込もうとしないんです。そういうのを見ていると、昔といまとじゃコンシューマーゲームの作業環境はかなり異質なものに変わってきているなって思うんです。だから、グリーに入ってチーム一丸になってものを作れるのは、とても楽しい。しかもみんな優秀なんですよ。
高 そうなんです、みんな優秀です(笑)。
一同 (笑)
加藤 大抵は「こいつの尻拭いを俺がするのか!」とか、「なんでスケジュールどおり上がってこないんだ!」ってなるんですけど、そういったストレスがまったくない(笑)。本当に優秀ですよ、みんな。
――とても楽しんでお仕事されている感じがしますね。
加藤 みんなの熱量が高いから、チーム全員で必死になって“どうしたらゲームが面白くなるのか”を模索しています。それこそ喧々諤々しながらやっていますよ。こういうのも懐かしいんですよね(笑)。規模が大きいと「人のことには関知しない」、「俺は俺の仕事だけをやる」ってなるのに、いまはグラフィックだろうが、バトルだろうが、イベントだろうが、「それ変じゃない?」とか「こっちの方が面白いよね」みたいな意見を言い合うんですよ。たまに喧嘩もしますが、気づかいなしでチーム全体が意見を言い合う姿を見ていると、「あ~ゲーム作りってこうだよなぁ」って感慨深くなります。
コンシューマーとモバイルに分け隔てはいらない
――加藤さんにとって初挑戦となるモバイルゲームのシナリオ制作ですが、何か意識されていることはございますか?
加藤 僕の中ではコンシューマーとモバイルを分けるという感覚があまりないです。どちらも同じものっていうか、面白いお話を書いて、面白いゲームできたらいいなっていう。それだけです。あえて違いを挙げるとしたら、ゲームの操作感と配信後の運営を意識したストーリーの運びかたでしょうか。けど、運営ものはオンラインゲームが随分前からやっていますからね。
――たしかに運営もの、それこそシナリオを毎月追加というのは、従来のオンラインゲームで既に成熟している文化ではありますね。
加藤 はい。だからモバイルでやっていることは特質なものではないんです。ただ、そうやって分け隔てなく考えていたら、シナリオもどーんと……。
――ながーくなってしまったんですね(笑)。
加藤 はい(笑)。「これ、本当にやれるのか?」って、僕自身もちょっと疑問に思いながら書いていました(笑)。スタッフも皆モバイルゲームを作ってきた連中なので、無意識のうちに「モバイルはモバイルでこうでなきゃいけない」っていう意識が立つらしいんですよ。だから「モバイルでこんなにシナリオが必要なのか?」っていう空気にはなりましたね。
――では、そのためにシナリオのリライトをされたのでしょうか?
加藤 いえ、その反面で「やりたい! いや、やるんだ!」っていう意見を出してくれる人間もいたので、今回はα版を作って実験をしました。ようは、現在作っているゲームシステムに則ってひとつのクエストを作り、そこに従来のコンシューマーライクな僕のシナリオを入れ込んでみたんです。それで実際に表示させてみたら案外悪くなくて。「あ、うまいことやれるんだ」って思いました。
――コンシューマーのシナリオでも、モバイルで違和感なく読めるんだ、と。
加藤 はい。チーム内には”モバイルはモバイル”、”コンシューマーはコンシューマー”と住み分けて考える人間ももちろんいて。でもα版で動いているものを見たら、スマホの操作性、スマホの遊びかたを活かしたまま、コンシューマーライクで壮大なお話のRPGが作れるっていうのを自分含め理解できました。
――つまり今回の作品では、コンシューマーの様式に沿って書かれたシナリオがそのまま入れ込まれている、というイメージになるのでしょうか?
加藤 ほぼほぼそうですが、展開の速さだけは意識的に変えました。僕はどうしても起承転結にこだわる性分なので、起承の部分がのんびりしているというか、いつも僕が書いた話は序盤がゆったりとしているんです。それで中盤から怒涛の展開がはじまって、どんでん返しの連続になっていくという(笑)。周りからもよく「序盤が弱い」と言われました。これは、買ってもらえれば最後まで遊んでもらえるコンシューマーだから許された書き方でしたね。
――無料でプレイできていつでも辞められてしまうモバイルゲームだと、序盤の弱さは致命的かもしれませんね。
加藤 おっしゃるとおりです。試しに遊んでもらったその瞬間に怒涛の展開が起きて、面白さを実感できる。そうじゃないとダメなんです。序盤で「なんかゆったりしていて変化ないね」って飽きられてしまったら、それで終わりです。だから、今回のシナリオでは序盤の展開にかなり注意を払いました。今度の俺は、ちょっと違うぜ的な(笑)。
一同 (笑)
今回の記事では両氏のこれまでの歩みや出会いにフォーカスしてお届けしてきたが、9月14日(月)公開の後編では、ついに”噂の新作“の秘密が明らかに!? 乞うご期待!
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