ガンホー森下社長に訊く『モジポップン 100の海と情熱の大陸』制作秘話

2015-03-01 10:00 投稿

週刊ファミ通のインタビューを全文掲載

週刊ファミ通2015年3月12日増刊号(2月26日発売)では、ガンホー・オンライン・エンターテイメントとテレビ番組『情熱大陸』とのコラボで生まれたゲームアプリ『モジポップン 100の海と情熱の大陸』に関するインタビュー記事を掲載。その内容をファミ通Appでも全文掲載するぞ。

※ガンホー森下社長が『情熱大陸』に出演!制作スタッフと新規ゲーム開発も!?

※【新作】ガンホー×情熱大陸のコラボで誕生したのは文字を使った完全無料のパズルゲーム

ガンホー・オンライン・エンターテイメントが、“基本無料”ならぬ“完全無料”の本格ゲームアプリ『モジポップン 100の海と情熱の大陸』を、2月26日より配信開始した。

人気テレビ番組『情熱大陸』の密着取材を受ける過程で生まれたという本作は、ダウンロード無料、課金なしの“完全無料”ながら、驚くべきクオリティーのタイトルに仕上がっている。はたして本作はなぜ実現したのか? 企画スタートの経緯から、制作中のエピソードまで、仕掛け人であるガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役社長・森下一喜氏へのインタビューから探っていく。
(聞き手:週刊ファミ通編集長 林克彦)

ガンホー・オンライン・エンターテイメント
代表取締役社長 CEO 兼
企画開発部門統括 エグゼクティブプロデューサー
森下一喜(もりした かずき)氏 ※文中は森下008_01

「ぶっちゃけ、やりすぎちゃいました(笑)」

――まずそもそもの経緯として、『情熱大陸』の密着取材を受けたそうですね。かなりの長期間だったとか。

森下:去年の2月ごろからなので、1年間くらいになりますね。

――なぜ、その取材を受けられたのですか?

森下:もともと取材依頼を受けることは多かったのですが、正直なところ、ドキュメンタリー取材の対応って疲れるので、あまり受けないようにしていたんです。でも『情熱大陸』は、クリエイティブに対して、真摯に扱ってくれる番組だというイメージがあって。それならいいかな、と思ってお受けしました。そして、「どうやってドキュメンタリーを撮っていこうか?」となったときに、番組側としては、ゲームを作る現場に密着して撮影したいわけですよね。でも、実際にゲームを作っているところまでカメラに入られるのは、ぶっちゃけいやだなぁ、という気持ちがありました。

――それはそうですよね。それでも取材を受けることにした理由は何なのでしょう?

森下:自分たちの物作りへのこだわりって、あまり伝わっていない面があると思うんですよ。当然のことですが、アウトプット(成果)でしか見られないですから。もちろんアウトプットがすべてだから、それに異論はないんです。でもゲーム業界を知らない人には、“ゲーム会社”と聞くと、工場のようにものを作っているというか、生産ラインみたいな作り方をイメージされている面がある気がするんですよね。実際はそうではなくて、ゲームを作っているのは人間で、しかもひとりで作っているのではなく、何人もの人間たちが力を合わせてのモノ作りなんです。だから、ゲーム作りでは、ひとつひとつのプロジェクト、すべてにドラマがあります。それをしっかり追ってもらえるならおもしろいね、と。それでやってみようと思ったんです。

――なるほど。そこから、なぜ新規にゲームを作ることに?

森下:本当のことを言うと、いま、正規に作っているゲームの現場は撮られたくないですよね。見せられないところも多いです。それなら番組用にゲームを作りましょうか、と

――ああ、そういう流れだったのですね。

森下:最初は、「3~4ヵ月でパッと作って、サーバーも使わず、課金の仕組みも作らずに無料で。それならどうかな?」というアイデアが、スタッフから出てきたんです。それくらいであれば、完全無料でも開発に着手していいだろう、と。

――でも、実際には3~4ヵ月ではすまなかったんですよね?

森下なぜか1年くらいかけてしまいました(笑)。いざ作り始めたら、いつものモノ作りと同じような状況になってしまって……やはり、無料だろうが何だろうが、自分たちが作るものへのこだわりが出てきてしまうんですよね。けっきょく、カジュアルなわりに、リッチになってしまいました。

――触ってみてビックリしました。これが無料なの!? と(笑)。

森下:やりすぎちゃいましたね(苦笑)。

――ビジネスとして、採算を取る仕組みはあるのでしょうか?

森下:いえ、完全にないですね。完全無料で追加課金なしで楽しんでいただけます。本当、一銭にもならないです

――うーん、かっこいいですけど、正直なところ、それで大丈夫なんですか?(笑)

森下:まあ、アクションやRPGばかり作っているので、一度、もっとカジュアルで、誰にでも遊べるようなものを作ってみたいな、というのはあったんですよ。うちのゲームって、けっこう難しいと言われるんです。自分たちとしては、誰でもプレイできるように作っていますが、奥深い部分もありますしね。

――でも、御社のタイトル、とくに『パズル&ドラゴンズ』(『パズドラ』)ほど、“誰もが遊んでいる”と言えるタイトルはそうそうないと思いますが……?

森下:『パズドラ』は3400万ダウンロードですが、6200万台あると言われるスマートフォン端末全体で考えると、ふたりにひとりが遊んでいても、もうひとりは遊んでいないわけです。カジュアルなものは遊んでいるけれど、「『パズドラ』は難しいから」と感じている人もけっこういるんですよね。そういう層にもアプローチできたらいいな、とは思いました。まあ、この番組の取材がなかったら、たぶんやらなかったことだろうとは思いますが。

――なるほど。言われてみると、デザインを見ても、カジュアル向けを意識されているようにも感じられますね。

森下:せっかくの完全無料ですし、デザインも、小さいお子さんから大人まで、幅広い人たちに遊んでもらえるようにしています。

――海や泡の描写もキレイですし、女性にも受けそうですね。

森下:意外と、背景もこだわりすぎちゃっています。僕らも「手間をかけすぎたね」って反省していますね(笑)。じつは
音楽にも、山岡晃(※1)を投入しちゃっているんですよ
※1:山岡晃氏…… グラスホッパー・マニファクチュア所属の作曲家、ゲームデザイナー。過去に『サイレントヒル』シリーズなど、多数の人気作品の楽曲を手掛けている。

――ええっ! なんと豪華な(笑)。

森下:『LET IT DIE(レット イット ダイ)』(※2)の仕事をやりながら、こっちもちょっと手伝ってもらいました。
※2:『LET IT DIE(レット イット ダイ)』……ガンホー・オンライン・エンターテイメントとグラスホッパー・マニファクチュアが強力タッグを組んで制作中のプレイステーション4専用サバイバル“ド”アクションゲーム。2015年発売予定。

――そのほかには、どんな方が制作に参加されているのですか?

森下:家庭用ゲームをずっと作ってきているメンバーもいますし、田中弘道(※3)も参加しています。……ぜいたくなことをやっていますね(笑)。
※3:田中弘道氏……『ファイナルファンタジー』シリーズなど多数の人気作品を手掛けた後、現在はガンホー・オンライン・エンターテイメントに所属。

――ものすごい顔ぶれですね。ちなみに制作チームはどれくらいの規模だったのですか?

森下:コアのチームで言うと、6人くらいですね。それ以外に音楽や、背景まわりでは外の会社さんにも協力してもらっています。

――お聞きすればするほど、つくづくすごいプロジェクトですね。

森下:だから、ぶっちゃけつぎがあってもあんまりやりたくないです(苦笑)。本当は3~4ヵ月のつもりでしたが、やはり
作り出すとこだわってしまうし、いいものにしたいと思ってしまいますから。今回も、最後の最後で仕様の修正が入ったりしました。たとえば最初のステージも、最後の最後の段階で、「出だしのステージはもっと印象深くしたい!」と、いきなり変えたりしています。そこで半透明処理をガシガシ使って、プログラマー泣かせ、メモリ泣かせなことをやっていますね(笑)。

――そのほか、これからプレイする人に、とくに注目してほしいポイントはありますか?

森下6文字の言葉が見つかったときの気持ちよさ、“勝ち誇った感”を感じてほしいですね。ただ、見つけたうれしさのまま、勢いでバンバン文字を入れようとすると、失敗しがちなので注意したほうがいいです(笑)。あとは、意外と、思わぬ言葉が発見できることもあるんです。「こんな言葉があるんだ」、「これがつながるんだ」、という驚きも楽しいですよ。

――収録語数は、『大辞林』を主体に約19万語にものぼるそうですね。

森下:三省堂さんから辞書を提供してもらっているのですが、自分で入れた言葉を、リザルトで確認できるんです。「こういう言葉があるんだ」と意外な発見ができるというのは、僕らが意図していなかった楽しさですね。

――気軽に楽しめるうえに、勉強にもなりそうですね。

森下:もともとは、「どうしたら言葉遊びを楽しくできるだろう?」ということだけを考えて作ったものですが、結果的には、意外とためになるものを作ってしまったな、と(笑)。でも、ボス的な存在とスピードを競い合うステージもあれば、じっくり考えて言葉を見つけて遊べるステージもあり、誰にでも楽しんでもらえると思います。これを遊んでおもしろいと思ってもらえたら、ぜひガンホー・オンライン・エンターテイメントのほかのゲームも遊んでほしいですね。

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森下氏出演の『情熱大陸』は3月1日午後11時よりOA!

『情熱大陸』は、TBS系列局で毎週日曜日の23時より放送中の人間密着ドキュメンタリー番組。3月1日放送回では、『モジポップン』の制作風景を軸に、森下氏に約1年ものあいだ密着して撮影された内容が放送される。ゲームファンならずとも必見の放送となりそうだ。

モジポップン~100の海と情熱の大陸~

メーカー
ガンホー・オンライン・エンターテイメント
配信日
配信中
価格
無料(課金なし)
対応機種
iOS 7.0 以降/Android 4.1 以上

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