【CEDEC2014】ソシャゲからネイティブへ グリーが生まれ変わった方法
2014-09-03 21:17 投稿
大きく舵を切ったその方法は?
2014年9月2日~4日にかけてパシフィコ横浜にて開催されている、日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス“CEDEC 2014”。本記事では、グリーの新スタジオ、Wright Flyer Studiosの軌跡について語られた講演の模様をお届けする。
本講演はグリー 取締役 執行役員 Japan Game 事業本部長 荒木英士氏が登壇し、“Webソーシャルゲーム企業がスマホゲーム企業に生まれ変わる方法 -GREE新スタジオ、Wright Flyer Studiosの軌跡”について講演を行った。
なぜGREEではなく、Wright Flyer Studiosが作られたのか?
Wright Flyer Studiosは、グリーのネイティブゲーム専門のスタジオとして作られた。その理由として、「AppStoreやGoogle Playでのプラットフォームの中で、GREEのアカウントが必要になるというのが、もういまどきではない」というのが大きかったと、荒木氏は語る。ストアのレビューの中に「GREEのゲームだから会員登録が必要」といったことがよく書かれていたこともあり、心機一転を図るために新スタジオ設立に踏み切ったという。
ネイティブゲームを作れる組織への変革
本講演のメインテーマとなる“ネイティブゲームを作れる組織への変革”は、「グリーとして、ここ2~3年は試行錯誤の年だった」という荒木氏の言葉から始まった。
「グリーはWebゲームで大成功を収めた反面、その成功体験に引きずられてしまっていた」と荒木氏は振り返る。そのせいで、まだ新しい分野でもあるネイティブゲームにどれだけ投資すればよかったか、まったくわからなかったという。さらに、Webゲームの得意なHTMLやFLASHといった技術を活かそうとして、逆に失敗。ユーザーに新しい体験を与えることができなかった。
そういったことから、社内的にもネイティブゲームにシフトしようとするも、すでにネイティブゲーム作りにもがいていた熟練エンジニアたちからは「そう簡単に言うな。ネイティブゲーム作りをなめるな」といった声が挙がったそうだ。
それまで海外赴任をしていた荒木氏の帰国後から、その体制は一変。これまでの過去の成功体験を捨てて、これまでのやりかたもすべてリセットすることに。ネイティブゲームに求められているものは何か、おもしろいものは何か、真摯に向き合おうということになったようだ。
グリーが取り組んできたこと
そして話は、これまでにグリーが取り組んできた軌跡について、3つの項目に分けられて説明された。
A)ものづくり文化の再醸成
B)Project Managementの確立
C)体制の再構築
A)について紹介する前に、まずこれまで荒木氏は「ゲームを運営して改善して、延ばしていく人が優秀だと思っていた」と言う。また、社内で挙がってくる企画書や市場調査などでも、いわゆるすでにあるジャンル+αの作品や、すでに配信されている作品と企画段階のタイトルとの比較ばかりで、「ものづくり的にそれは何か違う」となったワケだ。その事実に気づいてからは、これまでWebゲームで積み上げてきたものを全部捨てよう、ゼロベースでおもしろいものを何か?という能力を身に着ける方向性に変わっていった。
その施策のひとつが、2~3人のチームで制作期間約2週間ほどでゲームを作る“Grage Production”だ。荒木氏はこれを「筋トレと同じ」とたとえ、1人で1年間に1本のゲームを作るよりも、明らかに成長度が違うと言う。この施策によって、責任感や逃げられない状況を作り出すことで、よりよい経験を体験できるのだ。
この施策のひとつの成功例として、『CUBIC TOUR』が挙げられた。このタイトルは、プロモーション費用0円でリリースされ、わずか4日間で60万ダウンロードを記録した。
続いてB)について。少数精鋭で短期間で制作していたネイティブゲームは、規模が大きくなるにつれて、Project Managementをしないと“空中分解”してしまうようになる。そこで、専任のマネジメントコーチ(Scrumコーチ)をつけて、さらに開発の進捗状況もデータ化を行うようにしていった。
最後にC)の体制の再構築については、下記の写真のようなマトリックス組織に編成されている。
基本的に、各プロジェクトの縦軸が最優先としつつも、その横串を刺す横軸の部隊にもリーダーとなる部長という席を設けて、全体のリソース管理を行わせている。
これら上記の取り組みから、Wright Flyer Studiosが世に出したタイトルが『消滅都市』や『天と大地と女神の魔法』といったものになる。
目指すはグローバルスタンダードなものづくり
では、グリーとして、Wright Flyer Studiosとして、今後はどのようなことを目指していくのか? 荒木氏は「ものづくりの手法をよくしていきたい」という強い想いを語る。
上のスクリーンショットで書かれたことを、スタジオジブリとピクサーの“差”として挙げた。
荒木氏自身スタジオジブリはとても好きでよく観ているそうだが、「宮崎駿という1人の天才とそれ以外の人たちで構成されたチーム。ひとつの作品を作るのに6年かかかってしまう」とし、一方で、「ピクサーは毎年新作が必ず出てきて、グローバルヒットさせる監督が何人もいる」という。
荒木氏は、ピクサーのようなものづくりをこれから目指していきたいとしている。
講演の最後に、今回の公園を荒木氏は下記のようにまとめた。
「現在ネイティブゲームは、ブラウザゲーム、コンシューマーゲーム、PCゲームの流れがすべて合流している状態。僕らには各ジャンルの開発経験をしてきたエンジニアがたくさんいる。その多様性を活かして、それぞれの経験を活かして、この合流ポイントでグローバルヒットするタイトルを作りたい」
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