【CEDEC 2014】わずか2ヶ月でリアルタイムバトルを実装可能に! 『聖剣RoM』で見せたPhoton Serverの実力とは?

2014-09-02 22:57 投稿

リアルタイム通信がより簡単に行える!

2014年9月2日(火)から3日間に渡って、パシフィコ横浜で開催中の日本最大規模となるコンピュータエンターテイメント開発者向けカンファレンス”CEDEC 2014″。

この記事では、9月2日(火)に行われたセッション、“リアルタイム通信が劇的に簡単に! 『聖剣伝説 RISE of MANA』がPhotonで実現したもの”をリポートしていく。

Photon Serverとは?

ミドルウェア形式で提供されているサービス。自身の環境にインストールして利用することができ、アプリ部分はServer SDKとしてソースも配布されている。SDKを利用して外部DB(データベース)との連携やロジックのカスタマイズも可能。

Photonネットワークエンジンとは?

マルチプレイヤー対応のゲーム向けにリアルタイム通信を行うためのサーバーシステムとクライアントフレームワークを提供。プレイヤー間の通信を簡単に行えるようになるツール。

この講演のポイント

●サーバーに対して過度な負担を与えるため、開発が難航するであろう”リアルタイム通信”。『聖剣RoM』のレイドバトルでもリアルタイム通信が行われているが、”Photon Server”を用いることで、「開発に1年かかる」と言われていたものがわずか2ヶ月で完成。

●Photonはリアルタイム通信を行うゲームに必要な機能を網羅している。
⇒ロビー、マッチメイキング
⇒ルームの作成、参加
⇒オブジェクト同期、イベント同期など。

●『聖剣RoM』のリアルタイム通信は、『聖剣伝説2』のマルチプレイの再現を試みたものになっている。

●Photon Serverがあることによって、プログラマは”ブロードキャスト処理”、”リアルタイムの同期処理”、”ルーム内でのメッセージ送信処理”といったプログラムを書かずに済む。

登壇者

小山田 将 氏

株式会社スクウェア・エニックス
第10ビジネス・ディビジョン
プロデューサー

作原英輔 氏

株式会社FIXER
Enterprise Cloud Unit
General Manager

新 清士氏

フリー

並木健太郎 氏

CMO クラウド株式会社
Photon 運営事務局
テクニカルスペシャリスト

Photon Serverは機能・コスパともに◎

まずはじめにGMOクラウドの並木氏が登壇し、PhotonならびにPhoton Serverの概要に関して説明を行った。

▲GMOクラウド 並木健太郎 氏

Photonの基本説明が終わると、並木氏はPhotonの動作イメージに関して言及した。

Photon Server内には、マスターサーバー(≒ロビーサーバー)とゲームサーバーといったふたつのものがあり、クライアント(≒ユーザー)がアクセスを行うと、ユーザーの集まる”ルーム”の作成が可能なマスターサーバーへと接続する。

マスターサーバーに接続したことでルームの作成が開始され、それに併せてマスターサーバーが使用するゲームサーバーを決定。クライアントに対して使用するゲームサーバーの通知を行い、通知を受けたクライアントが指定のゲームサーバーへ接続を行うことで、サーバーへの接続が完了する。

その後、ふたつめのクライアントがマスターサーバーへ接続を行うと、マスターサーバー内に存在するルームの検索を開始。マスターサーバーは現存するゲームサーバーに接続するよう、ふたつめのクライアントに対して通知を行い、指定のサーバーにふたつめのクライアントが接続すると2種のクライアントがひとつのサーバーに接続した状態になるのだ。

これによって、リアルタイムバトルのような同期などが可能になる。

最後に「Photon Serverの価格は高いのでは?」という質問が並木氏に飛ぶと、「価格も低く設定しており、同時接続500のクラウドサービスで1万円程度になっている」(並木氏)とPhoton Serverのコストパフォーマンスの高さもアピールした。

『聖剣RoM』最大のネックはマルチプレイの実現だった

『聖剣RoM』のプロデューサーでもある、スクウェア・エニックスの小山田氏が登壇。Photon Serverを活用した『聖剣RoM』の企画立ち上げ当時の話から、Photonを活用するまでに至った経緯を説明した。

▲スクウェア・エニックス 小山田 将 氏

まず、小山田氏は『聖剣RoM』企画当時については、続編計画のなかった『聖剣伝説』シリーズを「今後10年続けられるか?」といった基本軸をもとに

1、大前提としてユーザーに知ってもらえる市場での立ち上げ

2、フリートゥプレイへの挑戦

3、シリーズ『聖剣伝説2』をベースに、現代技術でどうアレンジするか?

といった『聖剣RoM』における3つの企画コンセプトを設定。それらのコンセプトを実現するために構想を練っていく中で、自然と要素が決まっていったという。

ソーシャルゲーム黎明期であった2年前の7月に、『聖剣RoM』の立ち上げを行ったという小山田氏。「グリーさんやモバゲーさんのソーシャルゲームが売れ始めた時期だったこともあって、スマートフォンゲームの市場でアイテム課金のビジネスは成り立つと思った」と現在のフリートゥプレイのスタイルが確立されることは念頭にあったようだ。

また「『聖剣伝説』シリーズ正当後継作品として、ポチポチ系のソーシャルゲームではなく、アクションRPGにこだわりたかった」という想いもあったが、「『聖剣伝説2』最大の特徴である”マルチプレイの実現”が最大のネックになっていた」と開発の苦労話も語ってくれた。

マルチプレイの実現にあたって、「社内のエンジニアからは、「いまの開発体制だと、1年は開発期間を見たほうがいい」と言われました」と小山田氏。スクウェア・エニックスという大企業ゆえの悩みとして、セキュリティ面でも不安要素が多かったようだ。

その後Photon Serverに出会ったことで、当初の想定よりも圧倒的に早い、わずか2ヶ月間でリアルタイム通信の実装に成功したのだという。「リアルタイム通信の実装成功後は、半年間でプリプロを行い、その間でリアルタイム通信のテストも行えた」とのこと。

また、開発に携わった人数を聞かれると、「全体だと20名程度ですが、プログラマーについてはクライアント専門が2名、サーバー専門が2名でした」と、少数人数のチームで開発に臨んだことを明らかにした。

Photon Serverはエンジニアにも優しい

小山田氏に続いて、FIXERの作原氏が登壇。『聖剣RoM』のリアルタイムレイドバトルのシステム構成やPhotonの有用性について述べた。

▲FIXER 作原英輔 氏

現状の『聖剣RoM』におけるリアルタイムバトルは、クライアントの限界もあり4名でのリアルタイムバトルになっている。だが、作原氏によると「最大30名での同時プレイも可能」なのだという。

作原氏は、Photon Serverを用いた『聖剣RoM』のシステムを解説するにあたって、簡易的なシステム構成図を公開。解説をする中で、「Photon Serverが独立して処理ができるため、日本と香港のようにデータセンターを分けてサービスの展開ができる」コメントし、Photonのメリットについても触れた。

また、Photon Sereverに関する現場プログラマーによる意見も紹介。

作原氏は「Photon Serverが機能してくれるため、プログラマは”ブロードキャスト処理”、”リアルタイムの同期処理”、”ルーム内でのメッセージ送信処理”といったプログラムを書かずに済むのメリット」と、Photonの”簡単に作れる”部分の具体例を開発の側面から示した。

Photon Serverは100人単位のプレイも実現できる

最後に登壇者3名と司会の新氏の4名による、パネルディスカッションが行われた。

小山田氏は『聖剣RoM』の企画の経緯について聞かれると、「石井(浩一)さんが、『聖剣』の新作が出ないことを気にされていたので、「それなら僕に作らせてください!」と会社に直談判した」と当時の様子についてコメント。会社内で承認を得た後は、『聖剣伝説』シリーズを開発した石井浩一氏と田中弘道氏に挨拶をしにいき、”正統後継者”として太鼓判をもらったのだという。

 

また、「少数のチームとのお話でしたが、(『聖剣伝説』という)ブランドの体現は難しかったのでは?」という質問に対して、小山田氏は「『FF』を作っていたディレクターとアートディレクターが全体的なゲームコントロールを行っていたことが、スクウェア・エニックスとしては珍しい体制だと思います」と述べ、「石井さんがいないところで、『聖剣伝説』になるのか?という不安点もあった」だったのだという。しかし、エースディレクターとエースアートディレクターの力で、『聖剣伝説』シリーズ正統後継作品と呼ばれる『聖剣RoM』の完成に至ったのだとか。

「レイドバトルがキーになると思ったきっかけは?」という質問に対しては、「『ファイナルファンタジーブリゲイド』でギルドバトルが流行っていた時期だったので、それの一歩先を行くという意味でリアルタイムレイドバトルが来ると思いました」と返答。ただ、前述したとおり開発の工数の多さから、エンジニアからは「(『聖剣伝説』シリーズ)今後も続けていくならば、諦めるポイントもあるのでは?」と諭されるほどだったという。

小山田氏は「MMOには向いてませんが」と前置きを置いた後に、「(Photonは)MOのような少人数のプレイにはマッチしていると思います」とPhotonの使いどころに関して言及。さらに「コマンド型のMMOのような遊びであれば、100人単位でのプレイも実現できる気はする」と、Photonのさらなる可能性についてもよい印象を持っているようだった。

最後に「今後はどうなる?」といった質問には「『聖剣RoM』としては、co-opプレイや魔ペットの新しい遊びを追加実装して行く予定です」(小山田氏)「Photonの使い切れていない機能を引き出しながら、新しい遊びを展開していきたい」(作原氏)「Photonそのものもバージョンアップを予定しているので、それによって今後も使いやすくなっていきます」(並木氏)とそれぞれコメントを述べて本講演は終了した。

スマゲにおいて年々”リアルタイム”というものが重要視されている昨今。業界的にはまだ未知数な部分が多いPhoton Serverではあるが、簡易的にリアルタイムバトルのサーバー構築ができるのは、ゲームメーカーにとっても大きな武器になることは間違いないだろう。今後のPhoton Serverを用いた新作にも注目していきたい。

聖剣伝説 RISE of MANA

ジャンル
アクションRPG
メーカー
スクウェア・エニックス
配信日
配信中
価格
無料(アプリ内課金あり)
対応機種
iOS 7.0 以降。iPhone、iPad および iPod touch 対応。 iPhone 5 用に最適化済み  Android 要件 4.0 以上

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