【OGCレポート】徹底したデータ分析で見えたアプリマーケットのグローバル・トレンドの真実

2014-04-24 13:37 投稿

世界的な市場の成長を確信

2014年4月23日にベルサール秋葉原で、ブロードバンドコンテンツの総合カンファレンス“OGC 2014”が開催された。数多の著名人が名を連ねる本イベントの中から、今回はアプリマーケットにおける市場データのリーディングカンパニーとして知られる”App Annie”の日本カントリーディレクター・桑水 悠治(くわみず ゆうじ)氏の講演模様をお伝えする。

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▲App Annie 日本カントリーディレクター・桑水悠治氏。

講演のメインテーマである“グローバルマーケットにおける現在のアプリ市場のトレンド” に関する話の前に、桑水氏が所属する会社“App Annie”の紹介も兼ねて、同社から配信中の『Analytics』(無料)、『Sotre Stats』(無料)、『intelligence』(有料)といった製品に関する説明からスタートした。

『Analytics』

これまで、パブリッシャーは自社アプリの売り上げやダウンロード数をiTunes Connect(App Store)とGoogle Developer Console(Google Play)でそれぞれ別々の画面で閲覧して管理を行ってきた。だが、同社の『Analytics』では、ディベロッパーアカウントをApp Annie IDと紐づける(sdkの組み込みは不要)ことで、すべてのプラットフォームの売り上げ、ダウンロード数を一画面で管理することができる。

▲アプリの詳細へ遷移すると、情報をビジュアライズして閲覧することも可能とのこと。最近ではアプリ内課金の情報のほか、広告収入についてもアプリごとやアドネットワークごとで閲覧できる”ADVERTISING ANALYTICS”という製品の配信も行っている。

『Store Stats』

Storeのセールスに関する情報に関して、我々はつねに”現在”のデータしか閲覧することができなかった。しかし、同社の製品であるStore Statsを用いれば、2010年までの”過去”のストア情報を確認することができる。「どの国で人気があるのか?」、「現在の順位は何位なのか?」といった情報も合わせて確認可能。

▲アプリアイコン横にある”Unified”というマークをクリックすると、複数のプラットホーム上でリリースされているアプリの情報を一画面で確認できる。また、プラットホーム別、言語別で細分化して調べることも可能。

上記2本の製品をもとに、各アプリの売り上げ、ダウンロード数の推計というマーケットデータを有料製品として販売しているのが『Inteligence』というアプリケーション。講演のキモとなるマーケットのトレンドを解説するパートでは、この『Inteligence』のデータをもとに発表がなされた。

ゲームカテゴリがアプリストア全体でも強大な存在に

まずはじめにアプリ全体におけるゲームカテゴリが占めるダウンロード数(左)と売上の割合(右)を示したデータで、App Store(青色)、Google Play(緑色)ともにゲームカテゴリのシェアが大きくなっていることを紹介した。

アプリ全体におけるゲームカテゴリが占めるダウンロード数(左)と売上(右)の割合

2013年にはGoogle Playにおけるゲームアプリのダウンロード数が世界的に急増

2013年度と2014年度の売上を比較すると、App Store、Google Playともに全体に対してゲームの売り上げが占める割合が上昇している。桑水氏は「Google Play市場では、ゲームアプリが人気の日本、韓国が占める割合が非常に大きくなっており、その影響が市場の成長に繋がっている」とコメントしている。

2013年と2014年のOS別ゲームダウンロード数(左)&売上(右)の数値

▲ダウンロード数のチャートを見ると、App Storeのダウンロード数が増えていない反面、Google Playは1年間で約1.5倍増となっている。また、売り上げで見るとApp Storeは約2倍、Google Playは約4倍増という結果となった。売上の増加について桑水氏は「1ユーザーあたりの売り上げが増加している。Google Playのゲームカテゴリ売上もまた急成長しており、その推移はApp Storeよりも顕著」と述べた。

アプリ内課金モデルが市場を牽引

売上の源泉を示す為に提示された下のチャートには、買い切りなどの有料アプリ(斜線)とアプリ内課金を含むアプリ(塗りつぶされた色)の割合が示されている。このチャートを見れば一目瞭然だが、1年間で2倍となった市場は、アプリ内課金のビジネスモデルによって実現されたことが伺える。

有料アプリとアプリ内課金を含むアプリの割合(左がゲームアプリ、右はゲーム以外のアプリ)

▲チャートのオレンジ色がゲームアプリを、青色がゲーム以外のアプリを示している。ゲーム以外のアプリでも、アプリ内課金のモデルが成長した理由について「『LINE』のスタンプや『Pandora』における音楽アプリなどが要因。ゲームユーザーを筆頭にアプリ内課金が広く浸透したことで、アプリ内課金モデルが主流のビジネスモデルとなった」(桑水)と述べた。

国別のトレンドから見えた世界的なGoogle Playへの移行

下のチャートは、アメリカのApp Storeを100としたときに、それぞれの国におけるGoogle Playの割合を示したもの(※)。ランキングはApp StoreとGoogle Playの合計によって位置づけられている。

(※)中国ではオフィシャルのGoogle Playが存在せず、サードパーティーのストアが主流となっているため、今回はデータが存在しないのだとか。だが、「中国におけるGoogle Play市場は非常に盛り上がっている」と桑水氏。

国別のゲームアプリダウンロード数(緑:Google Play、青:App Store)

▲アメリカと中国のApp Storeからのダウンロード数が非常に大きく、世界の40%を占めている。また、全体的にGoogle Playのダウンロード数も大きくなっているが、日本、アメリカ、イギリスを除いて、世界規模でGoogle Playに移行していることが伺える。とくにドイツ、メキシコ、ロシア、フランスといった新興国では、とくにその動きが顕著となっているようだ。

国別のゲームアプリ売上(緑:Google Play、青:App Store)

▲売り上げベースでは、アメリカ、日本、韓国がGoogle Playの高いシェアを占めている。この背景を「キャリア決済の対応が大きな要因となっている」(桑水)と説明。

ロシア、中国におけるApp Store市場の成長

国別のダウンロード数、売上のデータを発表したあとは、それらのデータをもとに国別の成長率をランキング形式で紹介。ロシア、中国におけるApp Store市場が着実に成長している様子が伺えた。

国別の市場成長を示すデータ(App Store)

国別の市場成長を示すデータ(Google Play)

▲Google Play市場においては、ブラジル、メキシコ、インド、トルコでダウンロード数が急増。中でも、「日本コンテンツとの親和性の高い台湾の成長は、日本のパブリッシャーとなっても追い風となる」と桑水氏。中でも香港の市場急成長の要因として、「2013年6月よりキャリア決済にも対応したことが挙げられる」と解説した。

各国のアプリマーケットを攻略するために最適な戦略

前述したデータをもとに、桑水氏から各国のアプリマーケットの攻略法についても発表された。国ごとで市場が盛んなOSが異なっているため、その国々で盛んなマーケットへアプリを配信していくことがグローバルでの成功の鍵となりそうだ。

日本と米国

App Store、Google Playともに市場が盛んなため、2ストアリリースが有効。

中国

App Storeのみでリリース、Google Play向けには、“360”、”91.com”、”シャオミン”、”ワンドゥージャ”、”Tencent”といったメジャーのサードパーティープラットホームと決済チャネルを利用するのが有効。「プラットホームが複数存在する中国市場において、高いシェアを誇る巨大なプラットホームが出現していることは、これまで難しいとされていた中国市場攻略の糸口になる」と桑水氏。

韓国

App Storeよりもシェアの大きいGoogle Play向けで開発。

その他の国

App Storeの方が全般的にGoogle Playよりもマネタイズがしやすい。

ゲームカテゴリで成長中の国は?

現在成長中の国については、2014年1月の両ストア合計ダウンロード数で世界3位の市場に位置づけたロシア、App Storeの売り上げが上昇中の中国、そしてGoogle Playの売り上げが成長中のブラジルメキシコインドトルコ香港の名を挙げた桑水氏。これらの国のマーケットは今後注目の的となりそうだ。

世界ではiPadの市場が強い

国別のデータのあとにはデバイス別の市場データを発表。世界的にタブレット端末の需要が非常に大きいことがデータ上で明らかとなった。日本においてiPadの市場が成長しない理由を桑水氏は「日本にはフィーチャーフォンの文化が根強く残っているから、現在はモバイルコンテンツが主流となっているのではないか」と分析。また、今後の展開として「タブレットで楽しめるコンテンツがいま以上に多く生まれれば、タブレット市場も盛り上がってくるはず」とも予想した。

デバイス別ゲームアプリダウンロード数&国別ランキング(iOSデバイス)

▲日本人の認識としてはiOSアプリはiPhoneで遊ぶ印象が強いが、世界規模で見るとiPadがApp Storeのシェア全体の35%を占めほど大きなものになっている。

デバイス別ゲームアプリ売上&国別ランキング(iOSデバイス)

▲世界ではiPadの売り上げが非常に多くなっており、とくにアメリカが強い。iPadが世界のApp Store売り上げの3分の1を占めており、その中でもアメリカのiPadの売り上げは世界全体の40%を占めている。

『Flappy Bird』の成功で明瞭となったカジュアルゲームの底力

ここでパブリッシャー別のダウンロード数と売り上げのランキングが発表された。今回は2014年2月度のランキングが発表されたのだが、ランキングを見てとくに目を引くのが、今年の2月に話題となった『Flappy Bird』と、同アプリを開発したGears Studioの存在。

桑水氏は『Flappy Bird』の成功を受けて、『Flappy Bird』の類似アプリを排出するパブリッシャーもランクインしているのがおもなポイントであると、特殊な動きを見せた2月のランキングを説明した。

パブリッシャー別ゲームダウンロード数ランキング(App Store)

パブリッシャー別ゲームダウンロード数ランキング(Google Play)

▲売り上げベースで見ると中国のTencentが急成長したのが印象的であると述べた桑水氏。また「『LINE ツムツム』などのゲームが成功したことにより、メッセンジャーアプリとしての『LINE』も成長している」とLINEの成長についても言及した。

パブリッシャー別ゲーム売上ランキング(App Store)

パブリッシャー別ゲーム売上ランキング(Google Play)

▲Google Playでは、ガンホー、コロプラ、グリーといった日本のパブリッシャーが存在感を示した。桑水氏は、このほかに「中国のSunday Tozが『Anipang2』の成功によって急成長を遂げている点もポイント」であると述べている。

ダウンロード数が伸びるのはカジュアルゲームの傾向

最後にタイトル別のダウンロード数と売上のランキングを発表。パブリッシャー別のランキングで見受けられたように、やはりダウンロード数のランキングでも、『Flappy Bird』をはじめとするカジュアルゲームの台頭がより顕著なものとなっていた。

タイトル別ダウンロード数ランキング(App Store)

タイトル別ダウンロード数ランキング(Google Play)

▲App Store、Google Playともに『Flappy Bird』が上位に位置している。そのほかランクインしているタイトルもカジュアルゲームが多いことから「カジュアルゲームは、ダウンロード数を伸ばしやすい」と解説。

タイトル別売上ランキング(App Store)

タイトル別売上ランキング(Google Play)

▲App Store、Google Playともに売り上げベースで見たランキングに大きな変化はない。そんな中、桑水氏がピックアップして紹介したのはApp Storeのランキングで10位に位置づけた『Big Fish Casino』とApp Store、Google Playともにランクインを果たした『Farm Heroes Saga』の2タイトル。前者は日本において広告の主流となりつつあるテレビCMで、後者は積極的な広告キャンペーンと、Google Playホームページ上でのフィーチャーによって、それぞれ売上を伸ばしている。ゲーム自体の質も勿論重要だが、つねに新しいアプリが配信され続けてる昨今では、こうした広告戦略も今後成功するうえで重要なポイントとなってくることだろう。

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