【UNITE JAPAN2014】マーケッター以外も必見! アプリを収益につなげるための4要素 

2014-04-08 18:05 投稿

日本のデベロッパーを盛り上げたい!

2014年4月7日、8日にかけて都内で行われているUnity主催の公式カンファレンス”UNITE JAPAN2014”より、Google坂本達夫氏の講演“Google for Games – グーグルのゲーム向けソリューションで世界を目指そう!”の内容をお届けする。

坂本氏は2011年にGoogleに入社し、アドモブ事業をメインに担当。アドモブとはアプリの中に配信される広告のことで、アプリの配信者に収益が入り、デベロッパーを助ける仕事だと坂本氏はコメント。

そんな坂本氏の今年1年のテーマは、日本のアプリデベロッパーをもっとサポートしようというもの。そのきっかけはとなったのが昨年のGDC(ゲームデベロッパーズ カンファレンス)。坂本氏は日本のデベロッパーがたくさん来ているものかと楽しみにしていたのだが、思ったほど参加企業は多くなかった。そこで見かけた中国の担当者と話をすると、中国からはなんと100社くらいが来ていたそうだ。うれしそうにアテンドの話をする中国の担当者を目にした坂本氏は、なぜおもしろいゲームを数多くリリースしている日本のデベロッパーが、世界の舞台でフィーチャーされないのかと疑問に感じ、そこでアドモブを使って日本のデベロッパーを盛り上げたいと思ったのだそうだ。

デベロッパー内での連携をしっかりと行う

坂本氏はモバイルゲームの成功に必要な4つの要素として、開発、獲得、エンゲージメント、収益化を挙げた。iPhone初期は個人がサクッと作ったものが広告予算をかけなくてもランキングの上位に行って設けることができたが、いまは状況がまったく変わってしまった。そうなるとデベロッパーもやることが細分化し、作る人、調べる人といった具合に複数のセクションが必要となってきた。そのこと自体は悪いことではないが、細分化しすぎてほかの人がやっていることがわからなくなることが問題だと指摘する。

「たとえばあるタイトルをロンチします。マーケット側はダウンロード数を上げたいからいろいろと仕掛けます。それによってランキングは上がりますが、開発側はそれを想定していないので増えすぎたユーザーでサーバーがダウンしてしまう、といったこともあるわけです」(坂本)
それを避けるためにも、自分たちがやっていること以外の部分を知ってほしいと坂本氏は提言する。

開発について

Googleといえば多くのコンテンツを生み出す開発者集団と一般的には思われているが、じつはそうではないと坂本氏は言う。

「Googleはあまりコンテンツを作っていません。力を入れているのはエイプリルフールくらいですかね(笑)。それよりも皆さんが作るコンテンツのインフラのお手伝いや仕組みづくりをやっています。いまの時代は良いコンテンツをつくることが何より大事であって、悪いコンテンツをマーケティングでゴリ押しする時代ではないんです」(坂本)

「現在モバイルのゲームはネイティブアプリにシフトしていっています。スマートフォン使用時間の80%以上の人がアプリを使っていて、そのうちの30%がゲームアプリをプレイしているというデータが先日発表されました」(坂本)

現在Google Playでも月間20億以上のアプリがダウンロードされており、デバイス数も10億以上使われているそうだ。とはいえ、地方や上の世代に目を向けるとまだスマートフォンを使っていない人もいるし、これからもまだ伸びていく市場ということなのだそう。そういった状況のなかでアプリのビジネスをやるのであれば、まずは適切なプラットフォームを選ぶことが重要で、さらに選んだプラットフォームに適したコンテンツを配信することが必要となってくる。

例えばiOSで作られたアプリをAndroidに移植するとき、アプリ内のバックボタンをそのまま残して、Androidのバックボタンが無効になってしまっている。機能としては問題ないが、こういったこと細かい積み重ねがストレスになると坂本氏は言う。

また、それだけでなく多くの国で展開するようなサービスの場合、サーバーにも高い安定性が求められる。そういった場合に有効なのがクラウド型のプラットフォームを使うことだ。モバイルは或る日突然ヒットすることも、その逆もあるため、それにフレキシブルに対応できるサービスを選択する必要があるとのこと。

「安定したサービスが提供できるようになったらつぎに使ってもらいたいのが、Googleゲームサービス。いわゆるランキングボードです。リアルタイムで友達と競い合うということがピンと来ない人もいると思いますが、これからは少しずつそういう方向に進んでいくと思っています。ファミコンの最初のころはひとりで遊んでいましたけど、だんだんと友達とやるようになってきましたよね。ひとつのスクリーンをふたりで共有するようになったわけです。モバイルでも同じで、みんなでワイワイやる楽しみというのは根源的にあると思います」(坂本)

獲得について

「作ったアプリを出来るだけ多くの人に遊んでもらいたいということは皆さん期待していると思いますが、期待しているだけではそれは叶いません。ではどうすればよいのでしょうか」(坂本)

坂本氏はユーザーのタイプに合わせた戦略が必要と指摘する。たとえば最近増えているスマートフォンアプリのテレビCMに関しては『パズドラ』を例に出して説明。

「これはあくまで僕の想像ですが、『パズドラ』がテレビCMを展開したタイミングでは、アプリに積極的な層はもう知り尽くしているので、まだ届いていない人(潜在層)に向けて発信しよう、そういう意味でのテレビCMだったのだと思います」とコメント。

さらに、広告ネットワークを使い分けていて、“Aは1ユーザー獲得につき100円でBは200円だったら、Aのほうがいいよね”というのがこれまでのマーケティングと指摘。いまのマーケティングはそのさきに向かっているという。つまり、Aから獲得したお客さんとBから獲得したお客さんのどちらがよりお金を使ってくれるのか、そこまで見ないと意味がないと言う。

「ひとつ我々のアドモブを使ってくれたお客さんの例をあげます。最初の2週間だけで見てると、金額が倍くらいだったので割に合わないんじゃないかと言われたのですが、半年経ってみるとGoogle経由のユーザーのほうが高い利益をもたらしていたとおっしゃってくれました」(坂本)

つぎに指摘したのがWebの活用法。こちらも事例を交えて説明してくれた。

「意外と忘れられがちなのはWebの活用です。アプリの開発に注力してしまうとここを忘れがちになってしまうのですが、ユーザーさんはアプリをダウンロードするまえに情報を集めようとします。とくに積極的でお金を使おうとするようなユーザーさんはムダなアプリを増やしたくないと思っています。ですからそのアプリが本当に楽しいのか、必要なのかを知りたいと思っているのです。なかには自分の配信するゲームの掲示板を作って、ユーザー同士でコミュニケーションさせているデベロッパーさんもいます。楽しげな様子をオープンにすることは、ダウンロードしようと思っている人にも効果を発揮します」(坂本)

エンゲージメントについて

坂本氏はゲームを長く遊ばせるための工夫は開発者だけに求めるものではないと言う。

「エンゲージメントを高めるというのは、開発者だけの責任ではなく、ビジネス全体として見たときに重要な要素になります。日本を始めとした先進諸国で重要なのは、ソーシャル対応です。『ポケモン』を作った田尻さん(ゲームフリーク田尻智氏)がおっしゃっていた日本人が好むゲームに求める4つの要素は、収集、交換、育成、対戦です。これらは基本的にすべてソーシャル要素で実現されるものです。ですからそのゲームの中だけで完結するのではなく、いかにほかのユーザーとつなげて、彼ら同士のコミュニケーションをゲームの楽しみのひとつにするかというのはとても大事なことなのです。」(坂本)

続いてはレビューや動画の重要性に関する指摘。

「ユーザーがどのアプリをダウンロードしようと決めるときには、他の人の意見を重要視しています。ですから、アプリに対する評判を意図的に演出するということも必要になります。これに関して実際にやられている施策としては、マーケットにレビューを書いてもらうことなのですが、ユーザー全員に書いてもらうのではなく、一定以上(レベル10までとか)遊んでもらったユーザーに対してのみレビュー依頼の告知を出すといったことをやります。こうすることで、そのアプリに対していい印象を持っている人だけにレビューを書いてもらうことができます。なかにはネガティブなコメントがあったとしても、それに対してしっかりとした対応を行えば、ポジティブな印象を持ってもらうこともできます」(坂本)

動画に関しては、キャリアの回線が高速化してきたこと、街なかで使えるWi-Fi環境が整ってきたことを理由に重要性が高まっているとコメント。ゲームをプレイする人の95%が情報を求めてYoutubeにアクセスしているというデータもあるのだとか。チュートリアル動画などを作る必要性が高まっているようだ。

収益化について

最後にもっとも気になる収益化に関して、最新の広告形態を交えて開設してくれた。

「アプリで収益を得る方法はいくつかありますが、売り切りアプリにするか、フリーミアム方式にして機能拡張などでの課金、アプリ内でのアイテム課金、月額などの利用料の課金、だいたいこの4つになっています。あとは広告ですが、1種類ではなくいろんな形式のものが販売されています。」

「課金と広告のどちらかを必ず選ばないといけないと言うわけではなく、最近インディーズのデベロッパーのあいだで主流になってきているのが、課金と広告を同じ流れのなかで組み合わせるインタースティシャル広告というものがあります。広告スペースの中でそのアプリの課金アイテムの宣伝ができるというものです」(坂本)

あまり耳慣れない形式の広告だが、じつは新たな可能性を秘めていると言う。

「ユーザーがゲームを遊んでいてゲームオーバーになると、下からニュッと広告が出てきて、このアイテムを使えばもっと簡単にクリアーできるぜと表示されているわけです。この機能はどう使うかと言うと、一般的に課金をするユーザーというのは、そのゲームのユーザーの5~10%程度だと言われています。つまり残りの90%くらいのユーザーからは課金による儲けが発生しないわけです。ですから、ヘビーなユーザーにはインタースティシャル広告を表示させて、残りのユーザーには通常の広告を見せちゃおうというものなのです。こういった形で組み合わせることで、課金と広告の収益が半々くらいになっているよというお客さんもいます」(坂本)

さらに、自社タイトルの広告スペースとして使うことも効果的とのこと。単体で収益を上げることだけでなく、全体として収益を上げることを考えることも模索していきましょう、と提案。

持ち時間の45分、ほぼノンストップで、ときには駆け足でしゃべりまくった坂本氏。基本的な部分から解説してくれたので、マーケティングに関しては素人の記者にも非常にわかりやすかった。開発者やデベロッパーにとっては「あるある」と共感できるところも多かったのではないだろうか。収益を得るというゴールに向けてのヒントがいくつも散りばめられたセッションとなった。

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