スクエニ時田貴司氏渾身作『グロリアスブレイズ』 gloops加藤氏とのスペシャルインタビュー実現

2014-03-08 00:00 投稿

仰天タッグの舞台裏を直撃

スクウェア・エニックスとgloopsによる共同制作タイトル『グロリアスブレイズ ~運命の姫と8戦士~』が満を持して配信スタート。王道RPG作りを得意とするスクウェア・エニックスと、ソーシャルゲーム作りを得意とするgloopsのタッグということで、ユーザー・業界ともに注目タイトルとなった本作。共同制作に至ったきっかけや、開発中の裏話など、クリエイティブプロデューサーであるスクウェア・エニックスの時田貴司氏と、ゲームシステムを担当したgloopsの加藤寛之氏のふたりに話を聞いてきた。

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▲スクウェア・エニックスの時田貴司氏(クリエイティブプロデューサー)。
▲gloopsの加藤寛之氏(ゲームシステム)。

ガチのソーシャルゲームを勉強したかった(時田)

――スクウェア・エニックスとgloopsが組むという話を聞いてビックリしました。最初のきっかけって何だったんですか?

時田貴司氏(以下、時田) 最初は僕らのあいだでの話ではなかったんですよ。べつの人間がべつの案件でgloopsさんのアライアンス担当の人と話をしていて、「何か一緒にやりたいですね」というよくある話からのスタートだったんです。そのあと、せっかくやるんだったらうちが世界観を作って、gloopsさんはシステムや運営部分を作ってっていうマッチングがよくないですかという提案をさせていただいたようで、その人間とある日エレベーターで一緒になったときに最近忙しいっすか? 仕事一緒にしないっすか?」って言われて(笑)

――すごいきっかけですね(笑)。

時田 そのあと加藤さんと会うことになって、そこからは完全に一緒に進めることになりましたね。

――時田さんはgloopsさんと一緒にやるっていうことに関してはどう思われましたか?

時田 僕は落としきりのものだったり、『FFレジェンズ』のようなシナリオ配信型のゲームはやってきたんですけど、ガチなソーシャルゲームっていうのは作ったことがなかったんですよ。だから僕らがゼロからやるよりもソーシャルが得意なところと組んで、それにうちが得意なものを合わせてみたらおもしろいんじゃないかと思いましたね。僕も学ばせていただくつもりで「ぜひお願いします」という感じでしたね。そこでいくつかシナリオのプロットを考えましょうってことになったんですが、張り切って7つも考えちゃいました。

――すごいですね。

時田 その案はユーザーアンケートにかけたりしたんですよ。一時期擬人化が流行ったじゃないですか。ネコを擬人化した世界のファンタジーなんかも考えました。八犬伝をモチーフにした八猫伝というのも考えました。そういうのもあったんですが、結局はド直球でいこうということになって、『グロリアスブレイズ』につながったんです。

――ではかなり最初からがっつり関わっていたんですね。

時田 そうですね。ブレスト段階から関わっていました。

――加藤さんはスクウェア・エニックスとやるということに関してはどうでした?

加藤寛之氏(以下、加藤) ここまで形になるとは正直思っていませんでした(笑) 「一緒にやりましょう」ってよくある話じゃないですか。だからディスカッションだけして、終わってしまうかなって。あとは何と言ってもスクウェア・エニックスですから。僕も子どものころから遊ばせていただいていたゲームメーカーさんなので、まさかうちとはやらないでしょって自虐的に思っていたんですよね。それがあれよあれよという間に話が進んでいって、ゲームがプレイできるっていうくらいからようやく、一緒にやってるんだということを実感できましたね。いまは身が引き締まる思いですよ。

――時田さんや板鼻さん(スクウェア・エニックス、本ゲームではメインキャラクターデザインを務めている)も関わっているということもあって、読者からの反響はとても大きいです。時田さんの肩書はクリエイティブプロデューサーですが、監修とかそういったレベルではないんですよね。

時田 世界観、キャラクター設定などもろもろですね。僕がプロットを書き上げまして、シナリオスタッフとして『FF レジェンズ』や『FF IV ジ・アフターイヤーズ』を一緒に作った手塚さん(スタジオベントスタッフの手塚一郎氏)に入っていただいてます。そこでもおまかせではなくて、ふたりのあいだでキャッチボールをして作っているので、結構がっつり作っていますね。

キャラクターを大事にするようになった(加藤)

――加藤さんのほうではイケるなというタイミングはいつごろでしたか?

加藤 やっぱり世界観のプロットに合ったゲームシステムが生まれてきたときですね。最初はもう「これから何やろうか?」というレベルから始まっているので、このモデルをつくろうとか、こういうゲームをつくろうというシステムありきの開発ではなかったんですよ。うちの場合はこれまではシステムを思いついて、それに合った世界観でやっていこうというやりかただったんですけど、今回は逆でしたね。世界観を楽しめるシステムを作ってみようと。不安だったんですが、かなり形になったと思います。ですから、その構想が生まれだしてからですね、イケると感じたのは。

――なるほど。そのゲームシステムはほぼ完全にgloopsが生み出したものなんですか?

加藤 はい。ビジュアルであるとか、クリエイティブ監修はしてもらっていますが、ゲームシステムは全般、任せていただいておりますので、機能として何をやるか、何をやらないかといったことはほぼすべてgloopsで担当しています。

――いままであまり経験されなかった作り方ということですが、やってみて気付かされたことなんかはありますか?

加藤 キャラクターを大事にするようになりましたね。ソーシャルゲームでは一般的なことなんですが、キャラクターのカードってたくさん手に入って、新しいレアリティのカードがでると、古い物は即座に淘汰されていきますよね。それは僕らもずっとそうやってきてはいるのですが、キャラへの愛着という点ではシステム的に湧きにくい作りになっていると感じました。今回はキャラクターを消化させずに、継続して育成できるモデルにしてますし、メインキャラクターたちや、それを盛り上げる敵の将軍たちはかなりキャラ立ちしていますので、キャラの大事さや愛着を感じやすいゲームになっていると思います。

▲板鼻氏がデザインを担当したメインキャラクター。

――時田さんのほうで感じるものはありましたか?

時田 いちばん違うのはやっぱりゲームのテンポ感だと思います。短時間でもサクサク遊べてというのはいままでのRPGとは違うと思います。これは昔の話ですけど、ゲームボーイの『Sa・Ga』を作ったときに、どこでもセーブできるようにしようとか、マップは多いけどワンフロアは狭くしてテンポをよくしようと考えたのを思い出しましたね。ですからまずは何も気にせず話を書き始めるんですけど、途中からテンポを意識して、バトルを増やすためにどうしましょうかみたいな話し合いをしていきましたね。そこで追加イベントであったり、これはふたつの章に分けましょうとかっていうことが決まっていきました。全体構成もフィードバックを受けて変わっていきました。いまシナリオは終章前編まで作っていますけど、シナリオの終わりがゲームの終わりという形にならないよう中編後編では世界がもっと広がっていく予定です。

――いま終章という言葉が出てきましたけど、章立て構成になっているということはエンディングというか物語に決着が着くということですか?

時田 終章という言葉になるかどうかはまだ未定ですが、いったんの物語の完結があったうえで、たとえば2部、3部と進んでいければと思っています。たとえば2部は違うノリのシナリオで、とかできればおもしろいですよね。その辺の案はいまみんなで出しながら進めています。

――そこは家庭用のRPGとは違いますよね。

時田 終わらないという意味ではマンガの長期連載、みたいな(笑)。続きのようでいて毎回まったく違うものになっているマンガもあるじゃないですか。だから新章ではそういうこともできたらいいなと思ってます。

――いったん終わるというのはgloopsとしても新しいカタチですよね。

加藤 そうですね。最近でこそチョコチョコありますが、やっぱり僕らはそこをあまり意識してこなかったので。イベント単位でのストーリーというものはありましたが、そのレベルで止まっていました。そもそもストーリー本線のエンディングを作るという考えかたがまずなかったです。他社様のゲームも物語や演出に力を入れだしているので、非常に勉強になります

――スクウェア・エニックスと組んだ意味があったということですね。ではゲームについて教えてもらいたいんですけど、コマンドバトルについて少し具体的に教えてもらえますか?

加藤 これもいままでのソーシャルゲームにあった無思考でできるミッションを、選択の駆け引きが存在するコマンドバトル形式にしています。なので、アプリライクなイメージでよりゲームっぽく遊べると思います。それでいてポチポチしていくのが好きなユーザーも楽しめるよう、簡略化機能など取り入れ、多くのニーズに応えられるようにしています。デッキ構築も、強化の幅が広くなっていますので、ユーザーによってオリジナリティの高いパーティーを作ることができます。ほかにもアップデートで追加する要素としてマルチバトルというものを準備しています。

――どんなものでしょうか?

加藤 最大6人のユーザーがマップ上でリアルタイムにすごろくをするようなものです。そのなかでユーザー同士の共闘や競争が生まれる内容になっています。そこでは実際のプレイヤーとリアルタイムにコマンドバトルの駆け引きができるというものです。

――時田さんはそのシステムをご覧になっていると思いますが、世界観との親和性という点ではどうですか?

時田 基本的にはキャラクターが物語の展開と同時に増えていくという家庭用っぽいRPGに対して、チームバトルのような形で戦えるんですが、そのチームはストーリーに関係するキャラクターで組むことも、オリジナルのジョブユニットで組むこともできるので、ストーリーとシステムの自由度が融合したものになっていると思います。

――ユーザーさんにはどういう遊びかたをしてもらいたいですか?

時田 ソーシャルゲームをあんまり遊んだことのない人はストーリーを追うだけでも楽しめると思います。ストーリーの配信のタイミングもそういう人が楽しめるタイミングを狙って行きたいとは思っています。「ソーシャルでしょ? ガチャでしょ?」という人でも「おお!」と思ってもらえる内容にしたいと思っていますから。

――その辺はいま佳境ってところですね(笑)

時田 はい。ぜひ偏見を持たずに遊んでみてほしいなと思います。

――gloopsさんの方でもそういったことは意識されましたか?

加藤 基本的にはストーリーを読んでいくにあたってお金をかけないと進めませんということはしません。ユーザー同士のバトル部分はストーリーとは切り離したところになりますので、ソーシャル性というのはそういったところに入れていって、世界観を壊さないようにしたいと気を遣っています。ひとりで遊んでも楽しい、誰かと遊んでも楽しいというものにしたいので、ガチガチのギルドみたいな要素は最初は入れず、さきほど話が出た終章みたいなところまで終わったユーザーがその先の楽しみとしてギルドを組んで、違った遊びをしてほしいというような長期的な運用を計画しています。そういった意味では幅広いニーズに応えていきたいと考えております。

gloopsファンにもスクエニファンにもプレイしてもらいたい

――これまで出してきた男性向けの濃いゲームとは少し毛色が違いますけど、やっぱりまずはgloopsのファンの人が遊ぶと思うんですよ。どんな反応があると思いますか?

加藤 これまではチームでの競争心を刺激するものでしたからねえ(笑)。そういう人たちでも楽しめる要素として、マルチバトルがあります。これは共闘、裏切り、独占、何でもありなコンテンツです。ユーザーの皆さんが自由に動ける場となるので、集まる人によってさまざまな遊びかたが生まれると思います。基本システムとして楽しめる部分はコマンドバトルです。これまではログインして叩いた回数で勝てたりしてたと思うんですが、その部分を駆け引きのあるバトルで勝敗が分かれるので、競争心の強いユーザーでもハマるんじゃないかなと思っています。

――それとは逆に、時田さんが作っているということで遊ぶスクウェア・エニックスのファンもいると思うんです。そちらのファンはどうでしょう?

時田 結構ふつうにストーリーやキャラクターが凝っていて、らしいなと感じてくれると思いますよ。ド直球な感じだとは思うんすよね。一気に章を進めちゃうような人は、つぎの章を待っているあいだにデッキをカスタマイズしてみたり、遊びの幅が増えていくと思いますよ。

――しっかりと両社の強みがハマっているということですね。

時田 我々が家庭用でRPGを作るときも、僕がシナリオや世界観を担当して、バトルのシステムは別の人間が作ったりして、シナリオディレクターとバトルディレクターがいてツインエンジンのような形で作っていたんですよ。ですから今回もそれがべつの会社さんになったというだけで、じつはRPGの作り方としては鉄板のやりかたなんですよね。

――ファミ通Appで出した初報を見て今日の話を聞くと、ひとりでも遊べてみんなでも遊べてということで、なんだかPCのオンラインゲームの話を聞いているような感じになります。

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時田 パッケージプラスMMORPGみたいな感じですよね。

――もうそういうところまで来てるんですね。ユーザーもそういうものを求めてきてると思うので、すごく楽しみです。

時田 例えばこれが大ブレイクしてくれたら、ストーリー部分をまとめてコンシューマーになんてこともできるだろうし、そういうところまでつながっていきますよね。

――それってまさに時田さんがやられていた『FF レジェンズ』、『FF IV ジ・アフターイヤーズ』と同じような流れですね。

時田 『FF IV ジ・アフターイヤーズ』のときは隔週配信を考えていたけどスケジュール的に厳しくて無理でした(笑)。でもいまの時代だったら短くてもいいからどんどんアップデートしていったほうがいいですよね。毎週だとまた開発が追いつかないと思いますけど(笑)。当時は隔週を目指したけど、3週間に1本っていう感じだったかな。その代わりWiiウェアで配信したときはもう全部完成していたので毎週配信を実現できたんですよ。金曜に配信して土日遊んでもらいたいなと思って。

――でも、言うは易しというか、実際に作っていくのは相当大変ですよね(笑)。ストーリーをがっつり楽しみたいという人もいるし、ゴリゴリやりたい人もいますもんね。いま調整が大変なんじゃないですか?

加藤 絶賛チューニング中ですね(笑)。

時田 もう1週間違っただけで「こんなに変わったの!?」という世界ですね(笑)。

――そのあたりはソーシャルゲームの作り方というかスピード感に驚いています?

時田 でも僕らも昔MSXとかファミコンとかを作っていたときはそういう感じでしたよ。月に1本とか。いきなりアーケードの筐体がきて、一ヶ月で作れなんてこともありましたから、懐かしいスピード感ですよ。

――たしかに昔からのコンシューマーのクリエイターさんは意外とそうおっしゃるかたも多いです。

時田 ハードが進化してくると、ゴールが長くなるんですよ。それとプランニングしたあとのリソースが上がってくるまでの待ち時間がものすごく長いんですよ。3Dのモデルが上がってくるまでの時間が1体につき一ヶ月とかかかっちゃって。それと比べるとグラフィックも発注したらすぐできて、すぐ組み込んで、そのキャッチボールの感覚は短ければ短いほどいいですね。

――たしかに話が始まってからここまでのスピード感は尋常じゃないですよね。システムのアイデアがあったとはいえ、すごいスピードでできあがってきましたよね。

加藤 実際組み込み始めてからの開発スピードはかなり早かったですよ。

――そのあたりはさすがgloopsという感じですね。

加藤 メンバーが死にそうですけど(笑)。

――ですよね(笑)。ええと、そんななか、リリースをむかえての手応えはどうですか?

加藤 今月2月にクローズドベータテストを実施したんですけど、すごくいい意見もあれば、通信が重いので軽くしてくれといった声もいただきまして、そのあたりを改善してリリースをむかえました。よいほうの意見では「昔の良作RPGみたい」と言ってくれる人もかなりいるので、伝わっているなということも感じています。

時田 社内でほかの人間に「触ってみてよ」とお願いすることもあるんですが、「こういう方向なんだー!」「これネイティブアプリ!?」と驚いてもらえますよ。あとは最近だと若い美男美女というのがRPGのトレンドですけど、『グロリアスブレイズ』は子供から老人までいますし、皆様大好物の裏切りも用意しています(笑)。いや、皆様というより僕が大好物なのかもしれないですね(笑)。

――そういうおいしいところがいっぱい詰まっていると。

時田 メインも8人(8戦士)ですけど、敵にも同じ属性を司る8人(8将軍)がいまして、そういうライバル関係にも注目してもらいたいですね。

――ソーシャルゲームとの関わりというところでは、たとえばKPI(ユーザーの動向を数値化したもの)の観点から見ると、オジサンは数字があまりよくないからナシにしようとかいうことは考えなかったんですか?

加藤 なかったですね。オジサンであってもカッコイイキャラクターになったと思うので、そこはあまり気にしなかったですね。

――なるほど。では最後になりますが、まだ遊んでいないユーザーに向けてひと言お願いします。

加藤 これまでと違う体験やおもしろさを追求しているコンテンツになりますので、ぜひ触っていただいて最強装備していただければと思います。

時田 ソーシャルとかソーシャルでないとか以前に、僕らとしてはいいキャラクターができたと思います僕の案からさらに膨らんでいい形になって、思った以上に活き活きとしたキャラクターになりました。新しい章が配信されたら、そのキャラクターの使い道や育て方を研究して遊んでみてくださいマルチバトルも予定通り行けばかなり自由度の高いものになると思います。邪魔しあうことも協力しあうこともできるようになる予定です。

加藤 僕らが素材を用意するので、ユーザーさんがそのなかで自由に遊んでくれたらいいですね。

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グロリアスブレイズ ~運命の姫と8戦士~

ジャンル
RPG
メーカー
スクウェア・エニックス、gloops
配信日
配信中
価格
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