4人のヒットメーカーが語る「2014年スマホゲーム市場はどうなる?」

2014-02-28 19:14 投稿

ヒット作を持つ4人のプロデューサーが2014年のスマホゲーム市場を語る

2014年2月27日、D2C R主催のセミナー“有名ゲームのプロデューサーが語る! 2014年度スマフォゲームはこうなる!こうする!”が開催された。セミナーは、2013年のスマホゲームの状況を振り返りつつ、2014年の取り組みや市場予想を軸にパネルディスカッション形式で進行された。参加したのはヒット作を生んだ下記の4名。ちなみに、モデレーターを務めたのは、ファミ通Appの中目黒目黒。

・株式会社アカツキ
代表ゲーム『サウザンドメモリーズ』
代表取締役 CEO
塩田 元規氏

・株式会社エイリム
代表ゲーム『ブレイブ フロンティア』
代表取締役 COO
高橋 英士氏

・株式会社セガ
代表ゲーム『チェインクロニクル』
第一研究開発本部 モバイルワークスチーム チーフプロデューサー
新小田 裕二氏

・株式会社ドリコム
代表ゲーム『フルボッコヒーローズ』
コンテンツ事業本部 サービスイノベーション部 企画8グループ グループ長
まんぞう氏

最初のテーマは、2013年を振り返り、予想通りだったこと、予想外だったこと

口火を切ったのはアカツキの塩田氏。予想できたこととして、“ネイティブアプリへのシフト”、予想外だったこととして“ネイティブアプリの開発期間”を挙げた。

アカツキは2010年に立ち上がった会社。企業当時はブラウザゲームを開発していたが、1年半前にリソースをネイティブへと振り切った。しかし、当初「3ヶ月」で想定していた開発期間が3倍~4倍へ伸びてしまったとのこと。そこで、ブラウザゲームのサーバエンジニアをネイティブアプリ開発へとコンバート。結果的に多くのスタッフがサーバとクライアントの両方を開発できるようになったという。現在手がけている新作は、『サウザンドメモリーズ』の半分のリソースで開発できるところまで、ノウハウが収集できているそうだ。

続いてはエイリムの高橋氏。予想できたことは、“『パズドラ』の類似アプリ、リッチな表現、UIを持つハイクオリティアプリがバンバン出てくる”、予測外のこととして“こんなにたくさんのコンテンツがテレビでCMを打ったこと”のふたつを挙げた。

年末を思い返してみると、『ブレイブ フロンティア』はもちろん、『パズル&ドラゴンズ』、『ケリ姫スイーツ』、『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』など、スマホゲームのCMラッシュ。これだけ多くのタイトルが当たり前のようにCMを打つようになるスピードと勢いは予想外だったとのこと。そして気になるのはテレビCMの効果。「ふつうに広告を打つのとでは違ったレベルでユーザーさんが入ってきてくれるのは間違いない」と述べた。ただし、「テレビCMと同じ時期にWebでの広告を厚く打ち、取りこぼしをなくす」ことが重要と結んだ。

セガの新小田氏は、予想できたこととして“リアルタイム協力系アプリの勃興”を挙げた。

スマートフォンの特性を考えたときに「みんなで遊ぶ」のは当然の流れ。技術的な問題で実現が難しかったが、アソビズムの『ドラゴンポーカー』がその道を切り開いた。それに続く形で多くのリアルタイム協力系アプリが出てくると予想していたと語る。自身も作りたいという想いはありつつも、リアルタイム系のゲームを作るのは「バカみたいに大変」とのこと。

予想外だったことは、LINE系ゲームの踊り場感。新小田氏は「ゲームジャンルごとのユーザーのパイは多くない」と述べ、その事例としてPvP系ゲームを挙げた。『ドラゴンリーグ』などのヒット以降、各社がPvP系のゲームを配信したが、最終的に残るのはコアゲーマーで、各社はそのパイを奪い合うことになるのがいまの実情だという。続いて、王道RPGを謳う『チェインクロニクル』に追随するアプリの出現ついても言及。「スマホユーザーが王道RPGを遊ぶ」土壌を作ったのはエイリムの『ブレイブ フロンティア』だと感謝を述べた上で、しかし、PvP同様、王道RPGもユーザーのパイは限られている。「新しいジャンルを生み出さなくてはいけないかもしれない」と語った上で、既存のジャンルとしては「リアルタイム系はまだまだ伸びる市場」、「苦労して切磋琢磨してカオスの中からいいものは生まれてくる」と会場に来ているクリエイターへのエールも込めて綴った。

最後はドリコムのまんぞう氏。「日本人はRPGが大好き」と述べるまんぞう氏は、ブラウザゲーム主流のときから“RPG”というジャンルは人気で、それはネイティブになっても変わらないと予想したという。逆に予想外だったことが“パズル系ゲームの人気”。とくにLINE GAMEのパズルは自身が予想していたよりもランキング上位をキープし続けているとした。その要因は、まんぞう氏曰く、“怒り駆動”。ユーザー間のランキングで「負けたときの悔しさ」が継続プレイや課金のきっかけになっているのではないかと述べた。また、『LINE』でつながったリアルコミュニケーションも強みだと分析した。

続いてのテーマは、これはやられた! と思う他社のゲーム。ここでは4人がやられた!と思うタイトルとそのポイントに絞って紹介していく。

アカツキ 塩田氏
モンスターストライク(ミクシィ)
理由:バイラルを生む仕組みがゲーム内に入っている

エイリム 高橋氏
モンスターストライク(ミクシィ)
理由:同上
騎士とドラゴン(リプレーション)
理由:課金ゲームなのに、ガチャをユーザーに回せるまでのプレイ時間が長いという硬派さ
戦国炎舞-KIZNA-(サムザップ)
理由:ソーシャルカードバトルゲームのエッセンスをすべて詰め込んだ完成度の高さ

セガ 新小田氏
マヂヤミ彼女 ~リアルホラー系ゲーム~(Mio Yamazaki)
理由:ゲームの没入感を阻害させるスマートフォンを逆手にとって、ふだん使っているスマートフォンの中で物語が展開していく点

ドリコム まんぞう氏
ドラゴンポーカー(アソビズム)
理由:近くに人を感じられる、シャウトを使ったコミュニケーション
ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル(KLab/ブシロード)
理由:アニメに興味がない人でも取り込む仕掛け、イベントのバランスが秀逸

そして、今回のメインテーマ“2014年のスマホゲームはどうなっていくのか?”について。

そのキーワードが2極化。エイリムの高橋氏は「リッチ化、コアゲーム化に進む流れとカジュアルゲームの2極化が進み、中途半端なものは淘汰されていく」と語る。これはすでにマーケットを見ても明らか。『ブレイブ フロンティア』や『チェインクロニクル』といった王道RPGがヒットするいっぽうで、LINE系のパズルゲームや『キャンディクラッシュ』といったカジュアルゲームもトップセールス上位をキープしている。コアゲーム化の方向性ついては、「各社で見解が違う」と前置きした上で、コンシューマ的な作りと、『パズドラ』を軸としたスマートフォンならではのコアゲームに住み分けられていく可能性もあるとした。セガの新小田氏も同意見で、「それぞれの遊ばせ方において、ユーザーのパイが決まっている。ライトとコアという2極化ではなく、ジャンルごとに極化していく」と語った。また、巨大IPのネイティブアプリが数多く登場すると予想。「いまは各社がIPタイトルを仕込んでいる最中で、どこかで一気に発表、リリースされる」(高橋氏)と述べた。

アカツキの塩田氏とドリコムのまんぞう氏はマーケットについても言及。「マーケットのフェーズとして成長期後半に入る」(塩田氏)、「各社にネイティブアプリのノウハウが溜まり、2014年にかけては多くのタイトルがリリースされる」(まんぞう氏)と述べた上で、「しかし、出したタイトルに対してユーザーの総量がなくなりつつあり、市場の広がりもゆるやかになくなっていく。過渡競争が激しくなり、売れるアプリ、売れないアプリに2極化していく」(まんぞう氏)と2014年はより競争が激化すると予想した。

最後のテーマは“作りたいタイトル”について。

アカツキの塩田氏が挙げたのが“革新性とバイラル力”を持ったタイトル。「“スマホで楽しいゲームとはなんぞや”という点を突き詰めて、世の中にないゲームを作りたい」と熱い想いを語った。また、プロモーションについても言及。「マスとウェブをどういう風に組み合わせていくのか、うまい仕掛けを考えたい」と述べた。

エイリムの高橋氏は“数年経っても記憶に残るゲームを作りたい、売り切り型ゲームを作りたい”というふたつを列挙。トップセールの順位はほどほどにしか気にせず、「作りたいものを作っているだけです」というスタンスで今後も作っていきたいと語った。売り切り型のゲームについては「1000円、2000円のゲームが売れる文化がなくなってしまうのは危険」とし、どうすれば売り切り型の市場が伸びるのか?という質問に対しては「いいゲームを出すことが大切。そのためには、作り続けなければならない」と述べ、自身も「どこかで売り切り型ゲームの市場に手を出したい」と語った。

セガの新小田氏が作りたいのはズバリ“アドベンチャーゲーム”。RPGばかりがリリースされる現状に対して「右へ倣えではつまらない」、「そろそろ脱出ゲームがお金になってもいい」と発言。しかし、売れているジャンルに傾倒するのがいまのスマホ市場。新小田氏は、「エンターテイメント全般に言えることだが、儲からないと作れなくなるのは危険」と危惧しており、その背景には「人間はインプットしたものしかアウトプットできない。しかし、物理的に限界があり、それを補完するのが映画、小説、ゲームの価値」という自身の考えがある。「自分が主人公になって謎を解いて感動を得て臨場感を与えるようなものを作りたい」と述べた。

ドリコムのまんぞう氏が挙げたのは“ひとりではなく、みんなで楽しめるゲーム”。その根底には「スマホを持っている人がみんなでつながれたら楽しい」という想いがある。「いまヒットしているリアルタイム系ゲームの規模になると、最終的に残るのはコアユーザー」だと語るまんぞう氏は、「日常会話に出てくるくらい、生活の一部になるものを作りたい」と理想を掲げた。

ここでセミナーは終了。話を聞いた限りでは、開発力、運営力、バイラルを生む仕掛け、メディアとの関わり方など、2014年はこれまでのノウハウや資産を活かした総力戦になりそうだ。ある意味ではカオスな状況になってくるかのもしれない。新小田氏の言葉の通り、「苦労して切磋琢磨してカオスの中からいいものは生まれてくる」ことに期待したい。

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