声でクルマを運転する、夢のプロジェクトにスマホが果たした大きな役割

2013-04-05 10:00 投稿

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●声でクルマを動かす“VOICE DRIVER”の開発者に直撃

スマートフォンに呼びかけることで、声でクルマを運転する――そんな夢のような企画を実現したプロジェクトがある。その名も”VOICE DRIVER”だ。声認識によってラジコンカーが発進し、叫べばドンドン加速する。難しい操作を一切必要とせずに、フェアレディーZのラジコンカーを操れるのだ。2012年11月には、横浜の日産 グローバル本社ギャラリーにて、体験イベント”VOICE DRIVER CUP ジャパングランプリ”が開催され、老若男女を問わず、幅広い層に人気を集めた。さらには、Webでも“VOICE DRIVER CUP ワールドグランプリ”も実施され、世界中から10000人を超える人々がPC上から参加し、こちらも大いに盛り上がった。世界中の各国からの声で実際にラジコンカーが動く……というのは、何とも心躍らせる取り組みだ。

このプロジェクトを主導したのが、TBWA博報堂。そして、システムを開発したのが、『冒険クイズキングダム』やナカマップなどでおなじみの、あの面白法人カヤックだ。そこで今回は、TBWA博報堂のクリエイティブディレクター新沢崇幸氏、インタラクティブ・プロデューサー藤井拓真氏、コピーライター生駒健太氏と、面白法人カヤックのクリエイター村井孝至氏、衣袋宏輝氏、深津康幸氏にお話をうかがった。

※このインタビューは、2013年3月21日に発売されたファミ通App iPhone&Android NO.006のニュースコーナーに掲載された記事の完全版となります。

TBWA博報堂
クリエイティブディレクター/新沢崇幸氏……
コピーライター/生駒健太氏……
インタラクティブ・プロデューサー/藤井拓真氏……

面白法人カヤック
テクニカルディレクター/村井孝至氏……
ディレクター/深津康幸氏……
デバイスエンジニア/衣袋宏輝氏……

 

■開発は順調な滑り出しを見せるも……。

――まずは本プロジェクトの経緯を教えてください。

新沢 もともと私どもは、日産自動車さんとお付き合いがあるのですが、ちょうど日産自動車さんが新しいスローガンとして「今までになかったワクワクを。」というのを展開していたんです。そこで、「クルマで今までにないワクワクってなんだろう?」と考えたときに、「子どものころに夢想していた声で走るクルマが実現したら、どんなにおもしろいだろうと」発想したんです。そのアイディアを実現させたプロジェクトが“VOICE DRIVER”です。プロジェクト自体は2011年末に走り始めました。

――プロジェクトはどんなふうに動き始めたのですか?

新沢 最初はアプリを作るつもりでいたんですね。それが途中から「実際にイベントを開いてもおもしろいのでは?」という意見がありまして、両方のラインを走らせることにしました。アプリのほうはバンダイナムコゲームスさんに、体験イベントのほうはカヤックさんに協力を仰ぐことにしました。

――なぜカヤックさんと?

新沢 たまたま知り合いがいた……ということもありますが、テクノロジーとフィジカルな部分をひとつにまとめることができるメーカーさんって、日本でも限られていると思うんですね。それを実現できる数少ない会社がカヤックさんだと思ったんです。

――カヤックさん側は、最初はどのような形で準備を進めたのですか?

村井 最初にTBWA博報堂さんからお話をいただいたときに出たキーワードが、先ほどおっしゃっていた“ワクワクを体現したい”と、”声で操れる”というふたつでした。まずは「そのふたつが結び付くものってなんだろう?」と考えるところから企画が始まりました。そのうえで何回かミーティングを重ねて、「これはレースしかない!」ということになったんですね。とはいえ、実車で行うのは危険だし……ということで、いくつか検証を重ねた結果、ラジコンカーを走らせることにしたんです。そこから1、2週間ほどで技術検証を行い、1ヵ月後くらいには、発した声でモーターが回転して走ることができるプロトタイプができあがっていました。あのとき、みんなで「ウォー!」って感動したのが思い出深いです。

――ちなみに今回、なぜデバイスとしてスマートフォンを使用したのですか?

村井 音声入力が可能で、かつ小さなモニターを有し、カヤックが制作した音声認識アプリを搭載できるコンピューターだったからです。いまの時代ならこれしかないだろうと思い、採用しました。

――1ヵ月でプロトタイプが形になるとは、プロジェクトの進行も順調な感じだったようですね。

村井 意外に最初は順調なスタートだったんですが、そこからがけっこう、苦難の連続で大変でした。当社には声の技術があるので、ソフトウェアは基本的にはどんなプラットフォーム向けにも作れます。ですので、ソフトウェアは何の心配もなかったのですが、ネックになったのはハード面、ラジコンカーでしたね。

――そっちですか(笑)。

村井 既存のラジコンカーだと、意外と電池が持たなかったりするんです。で、いろいろ試行錯誤した結果、エナシャイザーというとても特殊な大容量の電池を搭載することにしました。それに伴いシャーシも改造を重ねました。ミニコンピューターと無線機器を搭載しているので、耐久性にも気をつけないといけないという理由もあったんです。一方で、軽量化も果たさないといけない……という矛盾した要請も抱えておりまして、結果としてマシンが完成形になったのは、イベントの直前でしたね。まあ、相当高級な完全改造車となりました。

――それは、ご苦労がしのばれますね。

村井 はい。とくにひときわ苦労したのは、複雑なシステムを全部繋げたときですね。イベントでは、1レースにつき3台のマシンがコースを3周するという構成なのですが、各3台のマシンを操るためには当然、3人分の声を認識できるようにしないといけない。声は、波形解析したうえで数値に変換してシステムの基幹サーバーに送ります。そのデータを今度は現地のサーバに飛ばし、さらにマシンに送る……という流れなのですが、この一連の流れがすごく複雑になってしまったんです。しかもラグも出てしまう。きちんとしたレースになるようにラグを縮めつつ全体を調整するという点で苦労しましたね。

――なるほど。音声認識でどうやってマシンを動かすか、というのがもっとも苦労する点だと思っていたのですが、むしろそのあたりはあっさりとクリアーされた感じですね。

村井 そうですね。ただ、調整にはけっこう時間を要しました。会場では多くのお客さんがいらっしゃったり、小さいお子さんがあり得ないくらい大きな声で「ウーッ!」って言うんです(笑)。けっきょくは専用のマイクスタンドのアプリを使ったのですが、音を拾うという部分に対してはかなり工夫しました。

――TBWA博報堂さん側から見て、実際できあがったものに対してはどんな感想を?

新沢 もう大満足でしたね! イベントでは、本当にお子さんたちが来てくれて、「わあわあ」、「キャーキャー」喜んでくれて、本当に楽しんでくれたのがよかったです。結果として、本プロジェクトのコンセプトであり、目標だった“ワクワク感”が生み出せたと思います。

▲2012年11月に行われた”VOICE DRIVER CUP ジャパングランプリ”の模様から。

 

■今後の目標は、世界各国でグランプリ開催?

――今回のプロジェクトを終えての感想をお願いします。

衣袋 テーマ的なところで言えば、子どもの夢や「スゴイ!」と感じていただける気持ちが、最終的にイベントなどで純粋な楽しさへと繋がっていったというところが、よかったと思います。

藤井 いまの自動車産業は、「若者にどのようにクルマに接してもらうか」、「どうクルマを身近に感じてもらうか」というところにすごく悩んでいます。これまでのクルマを単純にグラフィカルにカッコよく見せてアピールするだけでなく、このようなデジタルテクノロジーを使った新しい取り組みで、若者にちょっとでもクルマを身近に感じていただけたのではないか……という思いはありますね。

――今回のプロジェクトから、声について新しい印象を受けるということはありましたか?

新沢 声っていいもんだよなぁ、というのは本当にありますね。今回、日産自動車本社で行ったイベントのほかに、都内のスタジオにコースだけ作っておいて、Ustreamで声を出すとクルマが走るという、Webイベントをやったんです。しかも、24時間耐久イベントです!  明け方とかになると、さすがにもうフラフラだったりしたのですが、世界のどこかにいる方が「ブーン」って、がんばってクルマを走らせようとしている声を聴いていると、とても元気が出ましたね。お子さんなんかも、声を出していると顔がどんどん元気になってくるんです。そして、周りにいる人みんなのテンションが上がってくる(笑)。声というのは、純粋にプラスのエネルギーの塊なんだなっていうのがわかって、イベントをやってみて本当によかったです。

村井 声でワクワクするという、単純なことを目的として、すごく複雑な仕組みを組んじゃったんですが(笑)、ちゃんとハマったということに喜びがありました。みんなの前で大声を出すというのを大真面目にやって、おじいちゃんやおばあちゃんが笑っていたり、小っちゃい子が大喜びしている……デジタルの技術云々といった、難しいことを考えさせずに、そういった空間を作れたのがいちばんうれしいです。

――カヤックさんとしては、今回のプロジェクトを経て、「今後こうしてみたい」といったことはあります?

村井 今回のように、「キャンペーンのためにハードウェアデバイスを作る」というのは、当社でもそんなに事例がないんです。みんなが作れる人になる……という展開は当社の理念とも合致しますので、当社の得意とするところのソフトウェアとインターネットに、ハードウェア作りも交えてリアルイベントを絡めていくという流れは、今後も積極的に広げていきたいですね。

新沢 僕たちが今回のプロジェクトを、アプリから始めて最終的にはイベントにまで持っていったのは、まさにそれが理由です。ゲームの中だけで終わっちゃうと、ちょっともったいなくて、やっぱり目の前で本当にモノが動くという喜び、とくにクルマみたいなものが動く喜びは、何ものにも代えがたいものがあると思っています。ソフトとハードの融合がいまのトレンドでもあるし、そこに活路を見出して、今後もおもしろいことをやっていきたいです。

生駒 フィジカルな体験やいままでしたことのない体験こそが、世の中で流行り、広告効果をもたらすという動きが全体的に起こってきていますからね。

――インターネットなどで、手軽に知ることができるいまだからこそ、フィジカルな体験が求められているということですね?

生駒 テクノロジーって、基本的にはやっぱり体験の拡張だと思うんです。人間の欲求があって、その欲求を実現するためにテクノロジーは存在する。「早く遠くまで移動したい」という思いがクルマを生んだりするわけです。まあ、僕は空想しかできないですが、そこにエンジニアがいたら、新しいテクノロジーが生まれる。そんな協力関係でおもしろいことができたらと思います。

――ちなみに、今後イベントの第2弾、第3弾の予定などはありますか?

新沢 本当は大きなクルマのイベント、たとえば東京モーターショーなどに出展できるといいんですが……。そのあたりは今後の課題になりますね。

――“ジャパングランプリ”と銘打ったからには、FIのように世界でも開催するとか?

新沢 そうなんです! 可能なら世界各国でもやってみたいですね。“ドバイカップ”とか(笑)。あとは、本物のクルマを走らせることですかねえ。そもそもこのプロジェクトは、「本物のクルマを動かせたらおもしろいだろうなぁ」と思って始めたことなので……。今回声を出したらエネルギーに変わるという仕組みは実用性のあることがわかったので、つぎはゴーカートあたりで試しつつ(笑)、最終的には本物のクルマを動かしてみたいです。

数々の試行錯誤を乗り越えて、「声でラジコンカーを動かす」というプロジェクトを実現したTBWA博報堂とカヤック。スマートフォンが果たした役割も大きい、ということを聞くと、「いかにも高性能ぶりを誇るスマートフォンならではだなあ」と実感したりもするが、「実車も声で走らせたい」と、その夢はとどまるところを知らない。そう、“VOICE DRIVER”のプロジェクトは始まったばかりだ。

 

 

インタビューでも触れているとおり、このプロジェクトとは別に、『ボイスドライバー』というアプリが配信中。こちらは、カヤック版とは別物で、“声でクルマを運転する”というコンセプトのもとに、バンダイナムコゲームス協力のもと、制作されたアプリ(iOS版のみ)。気になる方は、一度遊んでみてください。

ボイスドライバー

メーカー
NISSAN MOTOR
配信日
配信中
価格
無料

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