【TGS2012】日本のスマホゲームは欧米の市場で通用する

2012-09-21 01:49 投稿

●“日本のゲームは海外で受けない”という都市伝説

2012年9月20日から開催されている東京ゲームショウ2012にて、初日にセガブースで開催された“SEGA_Apps Coming! Game Changer 海外展開への挑戦 欧米編”と題しトークセッションが行われた。ここでは、その模様をお伝えする。

 

司会進行は、エンターブレイン浜村弘一代表取締役社長が務め、パネラーにインキュベイトファンド 代表パートナー 村田祐介氏、サイゲームス 取締役 飯野晃広氏、ディー・エヌ・エー 執行役員 赤川隼一氏、セガネットワークス 代表取締役社長CEO 里見治紀氏の計5名が参加。このトークセッションでは、日本と海外におけるスマートフォンデバイス向けゲームの運用、展開方法についての違いをテーマに、モバイルデバイスゲーム市場の成長が著しい昨今、日本産のスマホゲームの欧米での取り組み、成功例などが語られた。

 

まず、海外で成功を収めている『キングダムコンクエスト』、『神撃のバハムート(英語版タイトル:Rage of Bahamut)』が挙げられた。『神撃のバハムート』の成功について問われた飯野氏は、「とくにゲームの仕組みを大きく変えているわけではないが、欧米ではバトルが好まれる傾向にあるので、その需要に合わせたイベントなどを盛り込んだりと、細かいチューニングはしている」と説明した。グラフィックについて問われた赤川氏は「日本と欧米での人気キャラクターが変わる」述べた。具体的には、日本で人気のあるカードは美男美女、可愛らしい少年や少女のキャラクターが描かれているが、欧米で人気のあるカードは逞しくて体格の大きい物がほとんどだという。さらに、日本で人気の少年や少女のキャラクターが闘う描写は、小さい子に戦わせるという行為に反感があるという文化があり人気が出ない場合が多く、欧米版では、かなり気を使った調整を施していると言う。さらに里見氏からは「日本では少年少女などが成長していく様子が好まれる場合が多いが、海外では強そうで解りやすいキャラクターが最初から活躍していくヒーローが好まれる」と具体的な例を挙げた。

日本と海外の文化の違いにより人気キャラクターが変わってくるとのことだが、生活サイクルから来るゲーム遊びかたについてはどうか。村田氏より、日本ユーザーと海外ユーザーのプレイスタイルの違いについて、ゲームのデザインを工夫しているかを問われると、飯田氏は、「空いた時間でプレイしてもらいたいというスタイルは変わっていない」と述べると、「欧米では電車に乗る機会が少ないからスマホゲームはやらないとか、日本のソーシャルゲームは海外では受けないとか、都市伝説っぽいことが言われているが、実際に作って見るとそうではなく、受けるゲームもある」と赤川氏。思い込みでゲームをチューニングしすぎてしまうのはよくないことだと実感しているようだ。

では、具体的には今後はどういったゲームを作っていくつもりなのか。『ソニック』シリーズなど海外で人気を持つIPを作り上げてきたセガは、「セガだからできるゲームを輩出していくということに注力している。これまでセガが培ってきたハイエンドゲームに拘りを持ちつつ、得意な分野以外では他社との提携で挑んでいくという取り組みも含め、両方を考えている」と述べた。

すでにセガと組んで『サカつく』を共同で配信したサイゲームスの飯野氏は、所謂ソーシャルゲームやブラウザゲームなどのジャンルに拘っているわけではなく、いまの国内外のユーザーが喜ぶ作品を作りたいと語った。共同制作という面で、企業文化の違う会社どうしでうまくいくのか? という問いに対し、お互いの志を信頼しているので問題ないと両社はっきりと言い切ったのが印象的だった。

ポケラボともソーシャルゲームを共同開発しているセガ。その開発現場を見てきた村田氏は「セガさんの開発者さんたちにポケラボに常駐していただいて開発したんですが、セガさんのチームが本当に楽しそうにゲームを作ってるんです。その楽しい雰囲気がポケラボ全体に広がっていて、実際にいい影響を与えていた」と、共同開発という新しい試みの可能性を語った。

さらに具体的に、1年後の海外App Storeトップセールスランキング上位に日本のゲームはどのくらい入っていると思うかが問われると、パネラー全員がApp Storeのランキング上位は3分の1以上が日本タイトルで埋まるのではないかと予想していた。

赤川氏は「世の中がすでに『キングダムコンクエスト』や、『神撃のバハムート』を知ってしまったのに対し、海外のメーカーは今後それ以上のゲームを作ってくるはず。ゲーム会社さんといっしょに日本勢として欧米市場にチャレンジしなければならない」と述べた後、浜村から「プラットフォーマーとしての視点から、どう考えているか」と問われると、「まだ本当の意味でのソーシャルサービスは完成しつくしていないと考えている。まだまだいろんな形で人と人が繋がる仕組みはできるのではないかと思っているので、そこにチャレンジしていかなくてはならないと強く感じている」と付け加えた。

飯野氏は、「海外で『神撃のバハムート』が受け入れられたのは大きな自信に繋がった。しっかりと細かく作り込んでいれば、海外でも受け入れられるというのが解ったのが嬉しいこと」と述べた。浜村より「課題があるとしたら?」と問われると、「たとえば、海外から輸入されたゲームで、日本語の翻訳が間違ってたら、もうプレイしなくなってしまったりという事例がありますが、そういった細かい部分で、現地のプレイヤーに対して、しっかりと作り込んでいけるかどうかが成功に繋がると考えている」と語った。

「残念ながらコンシューマゲームは海外より劣勢にある日本だが、モバイルデバイスという新しい市場で勢いにのれば、海外に勝てるチャンスだ」と語る里見氏は、浜村より、これまでコンシューマ向けに強いゲームメーカーが、なかなかスマートフォンゲームというジャンルで成功し難い状況にあったことをを問われると、「スマートフォンになって、ハードのスペックも上がってきたことで、ゲームの表現が豊かになってきましたので、我々が(コンシューマゲームなどで)培ってきた経験を活かせる時だと考えている」と発言。これからのスマホゲームは、グラフィックを含めハイエンドなゲームが増えていくと感じられた。最後に里見氏は「今後かなり近い未来、我々日本企業が欧米市場を含めてゲーム業界を変える存在になれる」と宣言し、トークセッションは終了した。

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