【TGS 2012】ソーシャルゲームの未来はどうなる!? 気鋭クリエイターがグリーブースで熱く語り合う

2012-09-21 00:16 投稿

●ソーシャルゲームの今後のヒントが見えた!

2012年9月20日~23日、千葉県・幕張メッセにて東京ゲームショウ 2012が開催。グリーブースでは、“ビジネスセッション”として、ソーシャルゲーム業界のクリエイターを招いてのトークショウ“ゲームの進化は止まらない”が行われた。トークセッションに登壇したのは、gumi 執行役員 今泉潤氏、カプコン CS開発統括 東京制作部 部長 杉浦一徳氏、グリー ゲームクリエイター 土田俊郎氏という、いまをときめく花形クリエイターたち。モデレーター役のジャーナリスト 新清士氏の問いかけに対して、3人が返答していくというスタイルでトークショウは進行した。

最初のテーマとなったのが、“これからのソーシャルゲームの姿”。つまりソーシャルゲームの未来像だ。それに対して今泉氏は、「正直どうなるかはわかりませんが(笑)、“いま”の連続が未来。カードゲームも遊びかたは進化しています。“いま”を研究して進化する。その積み重ねのうえに未来があります」とコメント。杉浦氏は、「ソーシャルゲーム=カードゲームという印象が強いので、ともするとソーシャルゲームの未来=カードゲームの未来とも言われかねないのですが……」と前置きしたうえで、自身のアナログゲームにおける知見を応用しつつ、「“(クリエイターが)がんばるゲーム”はそれなりに長い年月を生き延びる、軽いノリだと勢いが続かないので、ジャンルの寿命にも影響が出てくるかもしれません」(杉浦氏)と説明しつつ、未来はクリエイターのこだわりひとつにかかっていることを示唆した。

そこで、新氏は、長くコンソールゲームを開発してきた土田氏に対し、コンソールゲームとソーシャルゲームの文化の違いについて質問。それに対して土田氏は、「発売日に向けて詰め込むのがコンソールで、発売してからが勝負なのがソーシャルゲーム」とわかりやすく説明。“ソーシャルゲームの進化”に関しては、東京ゲームショウの会場で発表された新作『プロジェクトファンタズマ』を引き合いに出しつつ、同作が家庭用ゲームとカードゲームのハイブリットであり、ソーシャルゲームの魅力であるカードを集める楽しさは引き継ぎつつも、世界観やストーリーはコンソールゲーム並の奥行きをもたせているとコメント。やりごたえのあるゲームプレイも盛り込んでおり、「『プロジェクトファンタズマ』は、自分がいま見えているひとつの“進化の道”です」(土田氏)と語った。

そして話題は、ここ5年くらいのあいだで急速にフリー・トゥ・プレイのスタイルが普及したことから、“おもしろさを数値化する”という興味深いテーマへ。今泉氏が、「本来おもしろさは数値化できないが、ソーシャルゲームのユニークなところは、おもしろさが数値化できるところ」と、課金がおもしろさのひとつバロメーターとなるとの考えを披露。「“おもしろければ、売上はどうでもいい”という人がいるが、それは少し歪んでいて、お金を払ってもらっているのがいちばんの評価軸。社内では、おもしろいものが作りたければ、“欲しがれ!”という話をしています」と、刺激的なトークを展開した。それに対しては土田氏も、「おもしろさを数値化するのは大きなテーマで、数値化しないと進歩がない。お金を払う=おもしろさではないとは思うが、“このカードを欲しい”というのをどこまで伝えられたかに価値があります」と続けた。

▲gumi 今泉潤氏。

ふたつ目のテーマとなったのが、“スマートフォンの進化が与える影響は?”。端的に言うと、マシンスペックの向上にともなうコスト問題だ。こちらに対し今泉氏は、「Wiiが流行ったということもあり、必ずしもリッチなものが求められているわけではない、というところで落としどころを探っています」とコメント。それに対して杉浦氏は、『モンスターハンターフロンティア オンライン』はサービス開始から6年目を迎え、「HD化してほしいという要望も受けますが、グラフィックはリッチにはしません」(杉浦氏)ときっぱり。その理由は、美人は3日で飽きるから。いくらグラフィックを美麗にしても、最初は感動してもユーザーはすぐに慣れる。そのための莫大なコストをかける必要があるのか、というのが杉浦氏の考えだ。グラフィックの美麗さは新規ユーザーを惹きつけるためには有益だが、一旦ゲームを始めたら、おもしろくなければけっきょくは続かない。楽しさの数値化は継続率で、グラフィックが綺麗でも継続率は上がらないというのだ。

一方で、「『メタルギア ソリッド ソーシャルオプス』などに代表されるように、グリーはリッチなグラフィックを志向している部分もありますが……」との新氏の問いに対して土田氏は、「『メタルギア ソリッド』という歴史のあるIPのゲームを作るときに、世界観をどこまで反映させられるかに注力しました。シリーズ自体は、最先端のグラフィックを志向した作品だったので、ファンをがっかりさせたくなかったという部分はあります。そういう意味では、グラフィックで世界観をどう表現するかが大きなテーマだったんです」とのこと。とはいえ、「何かを表現したいときにどう折り合いをつけるのか?」、というのは大きなテーマとしてあり、たとえばいかに表現がリッチでも通信速度が遅くなり、ユーザーを待たせてしまうようではお話にならない。バランスのいいところで両方を追求すべきだと続けた。

▲カプコン 杉浦一徳氏。

3つめのテーマは、“海外進出の課題”。いま、多くの日本発ソーシャルゲームが海外でも受け入れられているのはご存じの通りだが、今泉氏はその事実を受けて「日本のゲームは世界でも通用すると思っています」とひと言。そして今泉氏は、昨年立ち上げたgumiの福岡スタジオで、苦労してゼロから『幻獣姫』を作り上げたこと、そしてそれが、いまでは東京オフィスを揺るがすほどの売上規模になっていることを説明しつつ、「同じことを海外でやればいいなと思っています。個人的には韓国で同じことをやって、1本作ってみたいです」(今泉氏)と飄々と語った。

対するに杉浦氏は、カプコンは海外に強いイメージがあるが、(ソーシャルゲームはこれからなので)イメージ先行でプレッシャーを感じていると率直に心情を吐露したうえで、カプコンがいま苦戦しているアジア市場では、ソーシャルゲームが普及の先鋒役を担っており、アジアの数ヵ所で開発拠点を設けていることを教えてくれた。ただし、カプコンでも日本企業が海外展開するときにぶち当たる悩みと同じ苦労を味わっているようで、「先人が感じた壁をどうクリアーするか」が課題になっているという。勝負を分けるのは、いかにスムーズなチームを作れるか。コンソールはゲーム作りが終わってしまえば解散できるが、ソーシャルはゲームのリリースがスタート地点。どれだけうまく機能するチームを作れるかが、いいサービスを続けるかの鍵を握る。「組織作りは、海外でも特筆すべきことですね」と杉浦氏。

それに合わせて土田氏も、「世界で成功する方程式があるわけではありませんが、ソーシャルゲームはサービスを開始してからが勝負です。国によって遊びかたが異なるので、各国のニーズにあわせてカスタマイズする必要がある。データの見かたを意識しつつ、作り上げていくべきだと思います」とコメントした。

▲グリー土田俊郎氏。

最後に、新氏から一連のガチャの社会問題に対しての質問が投げかけられた。これに対して今泉氏は、自身が前職のテレビ業界で、ものすごく安い予算でドラマを作らされた経験を披露しつつ、「制約を受けてもクリエイティブで解決できる」との意見を披露。「社会問題は真摯に受け止めつつ、最高におもしろいものを提供していきたい」(今泉氏)と語った。

一方の杉浦氏は、現状のソーシャルゲームにおける収益の採算分岐を考えるとガチャなしでは難しいと語ったうえで、「ガチャは商品の寿命を短くしている」とコメント。ガチャの収益を全体の3~4割に抑えて新しいビジネスモデルを構築すべきだと続けた。当然のことだが、さらなるマネタイズの方法を考えるのは苦しい。でもそれは今後の業界のためには必要なことで、年内にもリリース予定の『鬼武者Soul(ソウル)』では、ガチャを超えたマネタイズをたくさん考えているらしい。そして、「最終的にはお客さんに納得していただくことが大切」と杉浦氏は言う。お客さんはちゃんと見ているので、騙されることはない。お客さんとどうお付き合いするかが大事で、「開発陣には、納得していただけるようなマネタイズを考えなさいと言っています」(杉浦氏)とのことだ。

未来像からグローバル展開まで、いまソーシャルゲームが直面している課題が語られたトークセッション。3人の率直な語りぶりに、来場者も大きな刺激を受けたようだ。

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