Mobageが提供する次世代ソーシャルゲームプラットフォームのための秘密兵器とは?【CEDEC 2012】

2012-08-22 00:00 投稿

●“Post Ex Game(仮称)”がソーシャルゲームの未来を拓く

2012年8月20日~8月22日の3日間、神奈川県のパシフィコ横浜・会議センターにて、ゲーム開発者の技術交流などを目的とした“CEDEC(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス)2012”が開催されている。

開催2日目に開催されたディー・エヌ・エー(DeNA)の協賛セッション“Mobageの今後の技術戦略”は、ソーシャルゲーム事業本部 パートナーアライアンス統括部 サービス推進部 テクニカルコンサルティンググループ グループリーダー エンジニアの水島壮太氏が、技術的な側面からMobageというプラットフォームの今後の進むべき道筋を提示したもの。キーとなるテクノロジーは、DeNAの新しいツール“Post ExGame”だ。順を追って説明しよう。

DeNAでは、これまで開発者に対して、フィーチャーフォン向けに作ったゲームを容易にスマートフォン向けに移植できる“ExGame(エクスゲーム)”というツールを提供してきた。こちらは、SWF(Flashの再生用ファイルフォーマットのひとつ)向けコンテンツをスマートフォン向けにスムーズに変換できるというエンジン。ご存じの通り、ほとんどのフィーチャーフォン向けゲームはFlashで作られており、これをスマートフォンでも動かせるようにしたのが“ExGame”だ。この“ExGame”の有用性は極めて高いようで、たとえば、この8月15日をもってAndroid向けFlash Playerのインストールの中止が決定。今後はFlash Playerが使えないAndroid端末の増加が想定されることから、「もうスマートフォンではFlashは使えないのか?」といった不安の声も上がったそうだが、ExGameで作ったソフトであれば、代替可能だという。

ちなみに、いまフィーチャーフォンとスマートフォンの市場比率は完全な意味で5:5とのこと。「ここまで来るのに1年半かかりました。今後の1年半で0:10になるかというと、そうはならないと思いますが、スマートフォンに移行が進んでいくことは間違いありません。判断が難しいきびしい時期に来ているわけですが、“ExGame”なら、もれなくカバーすることできます」と水島氏。“ExGame”が移行期にも極めて有効であると水島氏は強調する。

とはいえ、今後フィーチャーフォンの市場がなくなっていくことは間違いない。これからはスマートフォン向けゲームの開発が主流になるが、そこで出される命題がある。「スマートフォン向けソーシャルゲームはWebとアプリのどちらで作るべきか?」というものだ。水島氏はWebとアプリのそれぞれのメリット、デメリットを挙げた上で、アプリの成功例として、DeNAが協力したシリコンスタジオの『逆襲のファンタジカ』を紹介。『逆襲のファンタジカ』では、“ngCore”というクロスプラットフォーム用のエンジンを使うことで、アプリのマイナスポイントと言われていた点をカバー。Android版とiOS版をほぼ同時にリリースでき、カード画像の追加やイベントの頻度を高くするといった、即時のアップデートにも対応できたという。「アプリ系ソーシャルゲームは世界で十分通用します」と水島氏は断言する。

一方で、Web系のソーシャルゲームに関してはどうなのか? しばらくこの業界では「Webは海外では通用しない」という説が流れていた。水島氏も中国人の同僚から「中国人はスクロールした瞬間にアプリをやめる」と聞かされたり、海外は電波状況が悪く、パケホーダイもないことからWebでの展開には懐疑的だったという。ところが、その意見にまっこうから反証するゲームが現れる。言うまでもなくCygamesの『神撃のバハムート』(英語タイトル『Rage of Bahamut』)だ。当初アプリ向けに作られていた『神撃のバハムート』は途中からWeb向けにチェンジ。結果として全米でナンバーワンを獲得する大ヒット作となる。「我々にとっては衝撃的なニュース」と水島氏は語るが、じつはこの『神撃のバハムート』も“ExGame”で作られたゲームだという。さらに水島氏は、対照的に、DeNAの某内作タイトルが海外ではユーザーからの評判がまったくよくなかったと続ける。じつはこのタイトルでは“ExGame”を使っておらず、海外では約4分の1の端末にFlash Playerが入っていないため、チュートリアルでの離脱率が30%を超えてしまったというのだ。結論として、「“ExGame”を使うことで、Webでも世界で通用します」と水島氏。「ありきたりの結論ですが(笑)、Webが得意な方はWebで、アプリが得意な方はアプリで作られるのがいいのではないでしょうか」(水島)。

とはいえ、Web系のゲームはUX(ユーザーエクスペリエンス)はよくないし、画面の解像度なども粗い。「いずれはWeb系のソーシャルゲームは飽きられてしまうのでは?」という疑問が出ても無理からぬところ。そこで、DeNAでは「新しい“ExGame”が必要」との結論に至る。Flashの開発効率は高いので、いままで培ってきたノウハウや人材を活かしての次世代のWebゲーム開発を行いたいというニーズはあるというのだ。そうしてDeNAが開発に着手したのが“Post Ex Game(仮称)”というわけだ。“ExGame”では、フィーチャーフォンからの移行を最優先したがためにパフォーマンスを犠牲にした嫌いがある。そこで“Post Ex Game(仮称)”では、処理の大幅な高速化を実現。さらに、

本格的なHTML5対応のゲームを作ることも可能にしたという。「今後は、Flash to HTML5ではなくて、Flash and HTML5の時代が来ます」と水島氏は予測する。“Post Ex Game(仮称)”はすでにサードパーティーに提供され始めているが、極めて好評だという。次世代のWebソーシャルゲームプラットフォームへ……。Mobageの戦略には“Post Ex Game(仮称)”の存在が不可欠のようだ。

▲『学校の星☆-Unubore Spirits-』を例に、“ExGame”と“Post ExGame(仮称)”を比較。

▲“Post ExGame(仮称)”では、複数のSWFフィルを組み合わせることもできる。こちらはそのデモ。

▲今後は、“Post ExGame”が増えていくと水島氏。

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