売上は2週間で7000万円! 『ファイナルファンタジーIII』から見るAndroid市場のいま
2012-07-24 15:20 投稿
●予想外のスピードで成長するAndroid市場とスクエニの戦略
[注目記事]
※『星葬ドラグニル』配信中! いきなりですが、スクエニオリジナルの本格RPGです!
スクウェア・エニックスが運営するAndroid専用ゲームマーケット“スクウェア・エニックスマーケット”(以下、スクエニマーケット)。2011年12月にサービス開始以降、スマホオリジナルのRPG『ケイオスリングス』シリーズや『いただきストリート for SMARTPHONE わたしのお店にタッチして!』、『ナナシ ノ 或プリ』など、つぎつぎと新作をリリース。有料ゲームが売りにくいといわれるAndroid市場で、着実に会員数、売上を伸ばしているという。いっぽうでは、2012年6月28日にGoogle Playで『ファイナルファンタジーIII』を配信。瞬く間にランキング上位へと駆け上がった。独自マーケットとGoogle Playの両方で成功を収めている同社の戦略とはどんなものなのか。そしてAndroid市場をどう見ているのか。スクエニマーケットの責任者であるモバイル事業部マネージャー“山口和彦”氏とモバイル事業部プロデューサーの“大津安徳”氏に話を伺った。
スクウェア・エニックス モバイル事業部マネージャー “山口和彦”氏 | スクウェア・エニックス モバイル事業部プロデューサー “大津安徳”氏 |
――まずは、スクエニマーケットが立ち上がった経緯を教えてください。
山口 我々がAndroid向けコンテンツの制作を検討し始めたのが、2010年の秋ぐらいでした。その頃、世界ではAndroidのユーザー数が急増していることが報告されていて、シェアとしてもiOSをいつ抜くかっていう話が出ていたころだったと思います。日本では、Xperia、HTC Desire、IS03などがその勢いを加速させた時期でした。Androidがイケイケになるのではという状態の中で、我々もAndroid向けコンテンツを制作しましょうという話になりました。
大津 まず最初に売り場として考えたときには、当然、Android Market(当時)が最初の候補にあがったんですけど、無法地帯と揶揄されるほど未整備な状態でしたので、その中で我々のコンテンツを配信することに大きな抵抗がありました。『ドラクエ』なり『FF』なりのエミュレータソフトがそのまま上がっていたり、アダルト向けソフトもあったりで、いい環境ではないなと判断しました。その後も、どういった改善がなされるか不透明だったので、それだったら自社で、自分たちからお客様へ自信を持って提供できる場を作ろうというのが、その当時のきっかけでした。
――当時からAndroid市場は有料アプリが売れないという意見が多かったと思うんですが、そこについてはどのようなお考えだったのでしょうか。
山口 そのような話は耳にしていたので、正直、すぐに売上に結びつくとは私たちも思っていませんでした。ただ、Androidのユーザー数、シェア率が伸びるっていうのは、明らかだったので、そういったものは後からついてくると考えていました。そのときはAndroid向けアプリを制作すること自体にまったく疑いはなく、やるべきこととして考えていました。
――いまAndroidでもiOSと同じようにフリーミアムが主流になっていますが、スクエニマーケットでは月額課金制でポイントサービスを採用されていますよね。
山口 フィーチャーフォン向けのゲームポータルサイト“ファイナルファンタジーモバイル”、”ドラゴンクエストモバイル”、”スクエニモバイル”というサービスの中で、月額サービスとポイント制が受け入れられ定着していたため、今回も月額制を取り入れました。ただ、月額コースに入ることに抵抗があるお客様もいらっしゃいますので、従量課金という選択も可能にしました。
大津 キャリアの引き継ぎサービスもあったので、もともとサービスを利用いただいていた方がスマホに機種変したときに、そのまま流れられるようにというのもありましたね。
――なるほど。マーケット立ち上げの際に「これだけは外せない」というこだわりはありましたか?
大津 最初からポータルサイトにしたかったので「『FF』もあって『ドラクエ』もあって、ちゃんとスクエニのものが遊べる。しかもクオリティが高い」というのは、唯一こだわりとして考えているものです。『クロノ・トリガー』や『ドラゴンクエスト モンスターズ ウォンテッド!』、『ファイナルファンタジー』がローンチタイトルだったんですけど、それをどうしても間に合わせたいというのは最初からありましたね。『ドラクエ』とか『FF』とかを期待してきてくれた人をガッカリさせたくなかったし、ないと寂しいですからね。
▲現在は、iOSから誕生した完全オリジナルタイトル『ケイオスリングス』シリーズもスクエニマーケットで配信されている。
――確かに。スクエニの名を冠したマーケットですからね。では、運営面で大変なことはありますか?
山口 運営業務は30~40人くらいでやっているのですが、携帯電話での動作検証が負担になっています。検証は、国内で発売されている全端末で行っています。その試験に通ったものだけを対応機種として発売しています。これはフィーチャーフォン時代から同じことをやってきたのですが、仕様が異なる端末にアプリを対応させていくのは本当に大変です。
――これからリリースされるタイトルは、売り切りタイプが多いんでしょうか?
山口 そういったわけでもないですね。コンシューマ向けタイトルの移植であれば、売り切りタイプのほうがお客様にもわかりやすいと思いますし、納得していただけるかと思います。ただ、新作アプリに関しては、売り切りに限られません。
――Androidだとフィーチャーフォンで配信されたタイトルをスマートフォン向けに移植して出すというのがひとつの流れとしてあると思うんですが、御社はそういったタイトルがないですよね。
山口 フィーチャーフォン向けのアプリをそのままAndroidに移植したアプリもたまに見かけます。開発費を抑え、スピーディーにコンテンツを提供するための、ひとつの選択肢だと私も考えています。ただ、いまのスマートフォンではPSPなどの携帯ゲーム機と遜色ないくらいの表現力が発揮できるので、そのうえでフィーチャーフォンのアプリを動かすと、物足りなさを感じてしまう。お客様に満足や感動を与えることはできないかなと。逆にフィーチャーフォン向けのアプリを単純にスマートフォン向けに移植して売る方が、むしろ難しいのではないかと思います。
――『ファイナルファンタジーIII』はすでにスクエニマーケットで配信されてましたが、そのあとにGoogle Playでもリリースされたのはなぜですか?
山口 スクエニマーケットは国内向けサービスなので、海外のお客様には提供できていませんでした。Google Playの問題も解消されてきたと判断したため、この度、世界に向けて『FFIII』の配信を決めました。
▲シリーズの中でも人気の高い『ファイナルファンタジーIII』。iPhone、iPadアプリで昨年リリースされ、いまなお高い人気を誇る。
――Google Playで配信してみて、実際どうでしたか?
山口 そうですね。正直、『FFIII』を出すまでは、ここまでダウンロード数が伸びるとは思っていませんでした。Androidでは、2週間で5万ダウンロードを達成しました。日本では1400円で販売していますので、単純計算ですが、2週間で7000万円の売上です。ここまで伸びるとは思っていませんでしたね。スクエニマーケットで『FFIII』はすでに配信されていたので日本での売上はそこまで期待していませんでしたが、実際には多くの日本人のお客様からご購入いただいております。スクエニマーケットでは訴求できていないお客様がこんなにいたのだということを実感しました。Google Playはやはり王道であって、多くのユーザーにリーチできる場だと感じましたね。
――2週間で7000万はすごいですね! さすがは『FF』(笑)。
山口 やっぱりソフトのブランドが大きかったと思います(笑)。ただ、驚くのは売上だけではなくて、その『FFIII』ですらランキングで最高4位にしかなれていないということです。日本でのダウンロード数だけで5万を達成したわけではないですけれど、これだけダウンロードされたのに4位ということは、当然ながら3位以上は相当の売上になっているということで、市場がそれだけ育っていることを実感しました。
――現在のiOSとAndroidの売上比率はどれくらいなんでしょうか?
山口 『FFIII』でいうと、直近の比較ではGoogle Playのほうが断然多いです。ただし、『FFIII』のiOS版は1年以上前に配信開始されています。iOS版が配信開始された当時と比較すると、Android版はiOSの6~7割くらいです。依然としてiOSのほうが売上が大きいですが、その差が縮まってきたと思います。
――Android市場も売れる市場に変わってきていると?
山口 それはすごく感じます。以前は無料アプリばかりが目立っていましたが、Google Playのランキングの集計方法や見せ方が改善されたおかげか、いまは有料ゲームが目立つようになってきたと思います。Androidユーザー数も増えてきていて、市場全体も間違いなく大きくなってきていると感じます。
大津 『FFIII』がGoogle Playで順調に行っていますし、スクエニマーケットも順調でサービス開始以来右肩上がりで売り上げを伸ばしていまして、7月も過去最高の売上になることが確実になりましたので、本当にAndroidの伸びを感じます。
――お話を聞いているとGoogle Playの持つ訴求力は非常に大きくなってきたと思うのですが、逆にいま独自のマーケットを持つ意義は何なんでしょうか?
山口 独自マーケットを作った理由でもあるのですが、やはり第三者のプラットフォームを使うと、いろいろな制約がついてきます。たとえば、こういった課金方法はダメだとか、こういったアプリケーションはダメだとか。第三者の決定に従わざるを得ない部分が出てきてしまう。それがスクエニマーケットだと、自社の責任と判断でコンテンツなりサービスを運営できます。他社の方針、決定に左右されない、自社マーケットをもつことが大きな意義を持ちます。
――戦略というと具体的にはどういったものになるんですか?
山口 サービス面で他のプラットフォームより魅力的にする、付加価値をつけていくことです。アプリは、Google Playを含めいろんな場所に置いていいかなと思っています。スクエニマーケットでしかアプリが買えなくするのではなく、複数の選択肢がある中で、お客様にスクエニマーケットで買うのが一番お得、便利、安心など、と思っていただけるサービスを提供していきたいと考えています。たとえば、6月、7月はWebマネーキャンペーンをやりました。抽選で『拡散性ミリオンアーサー』のオリジナルのカードをプレゼントする企画です。8月には月額コースのポイントアップキャンペーンを企画していて、こういったものは他のプラットフォームではできないと思います。
――Google Playで5万ダウンロードを達成したことで、スクエニマーケットの戦略に変化が生じたりはしましたか?
山口 もともと専売というコダワリはなかったので、結果を見て大きく戦略を変えるという考えはありません。ただ、各プロデューサーのAndroidに対する見方がポジティブに変わってきましたので、力の入れ方も変わってくると思います。
――専売にコダワリはないとのことですが、コンテンツを配信する際の優先度としては、スクエニマーケットとGoogle Playではどちらが上なんでしょうか?
山口 それは、間違いなくスクエニマーケットです。ただ、『FFIII』以外のアプリもスクエニマーケット専売とはせずに、Google Playに提供していくことを検討しています。
――なるほど。iOSとAndroidでマーケットの特徴に違いはありますか?
山口 ダウンロード数の動きに違いがあります。App Storeの落としきりアプリは、配信直後の1~2日目のダウンロード数がピークで、そのあとカクンと下がると思います。一方で、Google Playの場合は違う動きをしています。『FFIII』の場合は、配信7日目がピークとなり、その後は緩やかにダウンロード数が下がっています。App Storeの場合は短期に集中したダウンロード数を稼ぐ、Google Playの場合は長期にゆっくりダウンロード数を積み上げる特徴があると思います。ただ、この特徴もGoogle Playの変化、アプリのラインナップの変化によって変わってくるかもしれません。
――最後になりますが、直近で配信されるタイトルを教えてください。
山口 スクエニマーケットからは、8月上旬から中旬に『乙女ぶれいく!』。8月末に、『ファイナルファンタジーレジェンズ』を予定しています。Google Playからは『拡散性ミリオンアーサー』を含め複数のアプリの配信を予定しています。
※スクウェア・エニックスマーケットはこちら ▲『乙女ぶれいく!』は高校生の主人公が、見た目は人間とまったく変わらないヒト型アンドロイド“オートメカノ”と共同生活を過ごすというアンドロイド少女育成ゲーム。プレイ ヤーは、彼女たちとコミュニケーションを取ったり、新しい知識を教えたりしながら、オトメーターと呼ばれる好感度を成長させることによって、“オートメカ ノ”と親密な関係を築いていく。
※『乙女ぶれいく!』公式サイトはこちら
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▲『ファイナルファンタジーレジェンズ 光と闇の戦士』は、2010年にフィーチャーフォンで配信された『FF』シリーズ。クリスタルをめぐる王道のストー リー、ジョブチェンジシステム、アビリティ、ドット絵の美しいグラフィックなど、往年のシリーズの魅力を色濃く受け継いでいる。
※『ファイナルファンタジーレジェンズ 光と闇の戦士』公式サイトはこちら
▲『拡散性ミリオンアーサー』。App Storeで配信以降、トップセールスランキングの上位に君臨し続ける怪物級のソーシャルゲーム。プレイヤーは100万人いるアーサーのひとりとなり、外敵や謀略を企てる者から大陸を守り、真の王を目指す。鎌池和馬氏によるシナリオとキャラクター、有名クリエイターが書き起こした美麗なカード、デッキの組み合わせで発動するコンボ、因子を賭けたユーザーとのバトルなど、思わずハマってしまう要素が満載。
※『拡散性ミリオンアーサー』公式サイトはこちら
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