Amebaの新たなる挑戦、オープンプラットフォーム化に至った経緯とは?

2012-06-26 19:29 投稿

●Amebaのスマートフォン向けコミュニティープラットフォームが開始

芸能人や著名人などのブログや、『アメーバピグ』で有名なコミュニティサービスAmebaが大きく進化しようとしている。スマートフォンに特化したAmebaのコミュニティープラットフォームが、6月からサービスを開始したのだ。このスマートフォン版Amebaでは、従来からの『アメーバピグ』やブログサービスはもちろんのこと、コミュニティーアプリやソーシャルゲームなども楽しめるようになっている。スマートフォン版Amebaのサービスを開始した狙いとはいったい? ここでは、Amebaを運営するサイバーエージェントのアメーバ事業部ゼネラルマネージャーの小池政秀氏にサービス開始に至るまでの経緯などを聞いた。

――スマートフォン版Amebaを立ち上げるに至った経緯を教えてください。

小池 昨年くらいからスマートフォンがものすごい勢いで普及し始め、今後Amebaをどう展開するか、ということを社内で考え始めました。もともとAmebaは、ブログをベースにスタートし、読者や、コメントを通じてユーザー間の交流が生まれました。そこから『アメーバピグ』を展開し、多くのユーザーの皆様が集まり、より深いコミュニケーションが生まれています。Amebaは2009年に黒字化し会員数も2000万人、『アメーバピグ』も1000万人を超え、順調に成長を続けています。ただ、これからの数年で、インターネット市場の勢力図はがらっと変わると思っています。それは、スマートフォンという新しいデバイスの普及によるもので、インターネットが始まって以来の大きな可能性を秘めています。このスマートフォン市場で早期に勝ちにいくために、思い切ってフィーチャーフォンは捨て、スマートフォンにリソースを集中させ、勝負に出ることにしました。スマートフォンの伸びはすごいものがあります。Amebaでも、スマートフォンからのアクセス数は、すでにフィーチャーフォンを抜いています。 2番煎じ、3番煎じのフィーチャーフォンにいまから切り込んでも勝てるはずがありません。ですが、スマートフォンに舵をぐっと切り、全社を上げ総陣営で臨めば、本気でNo1を目指せると思っています。その第1歩として、スマートフォン向けにAmebaを一新しました。

――お話をうかがっていると、いまあるAmebaがさらに拡大するかの印象ですね。

小池 そうですね。名称は同じAmebaですが、スマートフォン版Amebaは、いま展開しているAmebaのいわゆる上位概念みたいなものとして考えていただけるとわかりやすいかもしれません。大枠のAmebaに紐づくサービスとして、従来のブログや『アメーバピグ』などと並列に、コミュニティーサービスのアプリやソーシャルゲームが存在する形になります。

――ユーザーを獲得するためのポイントはどこになると思います?

小池 ユーザーの立場に立ってどれだけ使いやすくするかということを徹底的に考え注力しました。スマートフォン版のAmebaでは、TwitterやFacebook、mixiなどのほかのSNSサイトに登録しておけば、Amebaに会員登録せずに遊んでいただけるようになっているんです。もちろん旧来のAmebaユーザーは、登録情報をそのまま引き継ぐことができます。また、サイトの見せかたも工夫しています。ふつうSNSサイトだと、サイトのなかにアプリがある……という印象だと思うのですが、Amebaではおもしろそうなアプリを遊んでみたら、じつはそれがAmebaのサービスだったという流れにしたいんです。

――ああ、入り口はポータルサイトではなくて、アプリだということですね? 発想の逆転だなあ。

小池 そうなんですよ。個々のアプリは独立したサービスであり、Amebaへの導線でもある感じですね。そして、新プラットフォームのAmebaのマイページでは、コミュニティーサービスが全部管理されているので、自然にAmebaのマイページに人が集まってくるようになっています。ここにくるユーザーが増えれば、ほかのアプリやコミュニティー、さらにはゲームを知るきっかけになっていく。それが、Amebaというサービスの拡大につながるわけです。そのため、私たちはコミュニティーサービスをもっと増やしていきたいと思っています。

――お話をうかがっていると、新生Amebaは、GREEやMobageなどとある意味で競合するのかなとも思うのですが、戦略は異なりそうですね。

小池 はい。現時点で、私たちと彼らでは相当な差がついていると認識しています(笑)。だから、二番煎じのサービスという形は取りたくなかった。スマートフォン専用のサービスにしようと決断したのもそのためです。振り切る決断が必要でした。そうしないと、「あれもやらなくてはいけない」、「これもやらなくてはいけない」と、何が正解だかわからなくなってしまう。このスピード感のある業界で、それは命取りです。幸いにも、僕らはSNSへの参入が遅かったので、フィーチャーフォンのことを考えなくてよい分、その足かせがないというのもありました。一方で、彼らがゲームに注力することでやらなくなったコミュニティーサービスをやろうと思っています。これから10月までに30を超えるコミュニティーサービスを提供します。スマートフォンのユーザーはコミュニティーに飢えていると思うので。

――それにしても、スマートフォン専用とは、思い切った振り切りっぷりですね。

小池 はい。「攻撃は最大の防御」という言葉もありますから。デバイスの大きな転換期に勝負をしようと思いました。

――Amebaで提供するコミュニティーサービスにはどのようなものがあるのですか?

小池 ニュースに自分の意見を書き込んだり、ほかの人のコメントを楽しんだりする『コメンテーター』や、ダイエットをしている女性をターゲットにしたSNS『GIRLS UP』など10月までに現状で30個以上のコミュニティーサービスの提供が決まっています。アプリに関しては、代表の藤田もいちから企画を考えているんですよ。「自分自身が、よいアプリを作れないとダメだ」と、本人は思っているようで、四六時中アプリのことを考えているみたいですね。何しろ、開発現場に入ると、画面内に表示されるテキストの大きさまで自分で指示を出ているくらいですから。藤田も開発に相当真剣に取り組んでいるようですね。ひとつのコミュニティーサービスにつき、会社をひとつ立ち上げた気持ちで取り組んでいるので、全サービスが妥協なく考え抜かれた至極のサービスと言っても過言ではないと思っています。魅力的なコミュニティーサービスをたくさん提供することで、ふだんはゲームに触れない人たちへ間口を大きく開放して、ユーザーへのタッチポイントをたくさん作りたいと思っています。当社の強みである芸能人のコンテンツもいろいろとと考えています。二番煎じ、三番煎じではなく、後発だからこそのオリジナルの戦術でスマートフォン市場に切り込んでいきたいと思います。

▲提供されるコミュニティーサービスのアプリの一例

――では、ソーシャルゲームはどういったものを?

 小池 オープン化と同時に内製のオリジナルタイトルを数本と開発パートナー様から提供いただいた7タイトルを公開しています。内製のゲームだと、ペットの育成ゲーム『Hugg Pet』や、美しいイラストが描かれたカードで戦う冒険ファンタジーゲーム『天空のクリスタリア』など。年内までにさらに、内製のオリジナルタイトルを10本ほどをリリースするつもりです。カードゲームや育成ゲームのほかに、当社ならではの『アメーバピグ』をモチーフにしたゲームや、芸能人を使ったゲームなどを用意していますよ。また、現時点で21社の開発パートナー様から年内に50タイトル程度のゲームを提供いただけることが決定しています。当社と、開発パートナー様の強みを掛け合わせたオリジナルのおもしろいゲームの企画も進んでいます。

 

――ゲーム関しては、何か方針のようなものはあったのですか?

小池 そもそもAmebaは、ブログや『アメーバピグ』を中心に成長してきたので、必ずしもゲーム好きな方が集まったサービスというわけではないという前提で、ユーザーの皆さんの楽しめるサービスのひとつの選択肢として、ゲームを用意しようということになりました。いきなり「ゲームを作ったので、遊んでみてくだい」というのでは、ちょっと唐突感がありすぎますし、ユーザーの皆さんが混乱してしまいます。この違和感をしっかり払拭して、ちゃんと「ゲームもおもしろいね」っていうきっかけを作ってあげたいと思っていました。先述した『アメーバピグ』をモチーフにしたゲームや芸能人を使ったゲームなどは、いままでゲームをプレイしたことがなかった人たちがゲームに触れるきっかけになると思っています。Amebaは、ほかのSNSサイトに比べて女性ユーザーの比率が高いので、好きになってもらう機会をしっかりしたアプローチで創れば、女性ユーザーの皆さんにもゲームを好きになって楽しんでもらうことも可能だと思っています。ひいてはそれが、ゲーム市場のさらなる拡大につながるのであれば、私たちとしてもうれしいです。

――Amebaはオープンプラットフォーム化をして、開発会社も自由にサービスが作れるようになるそうですが、反響などはいかがですか?

小池 かなりよいです。現時点でも多くの開発会社さまから問い合わせを頂いております。まだまだGREEさんやMobageさんと比べてしまうと、規模は小さいですが……、Amebaの新しいユーザー層に興味を持ってくださって、「いっしょに開拓したい」とおっしゃってくださる開発会社さんもたくさんいらっしゃいます。

――では最後に、新Amebaをサービスインするにあたっての抱負をお願いします。

小池 ユーザーの皆様がいまどんなサービスを欲しているのかをとことん考え抜き、求められるコミュニティーサービスや、ゲームを提供していきたいと思います。何が正解かというのはわからないので、トライ&エラーをくり返しながら改善を続け、スマートフォン市場で最強のプラットフォームを作り上げたいと思っています。ご期待ください。

 

スマートフォン時代を見据え、大胆なシフトチェンジを図ったAmeba。その取り組みは注目に値する。個々のアプリは社内でチームごとにプロジェクトが組まれており、さながら社内ベンチャーのような様相を呈しているという。スタッフひとりひとりが競争意識を持って働いているオフィスは、極めて活気に満ちていた。新生Amebaがどのような展開を見せるのか、今後が楽しみだ。

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