【おまけ追加】大作アドベンチャー『ボーダーウォーカー』の作り手、巨匠たちに突撃インタビュー!

2012-05-07 12:46 投稿

●巨匠たちと、彼らが生み出した大作『ボーダーウォーカー』とは一体……?

2012年5月7日にiPhone向けアドベンチャーゲーム『ボーダーウォーカー』がリリースされた。本作は、数々の名作を生み出してきた、赤尾実氏、植松伸夫氏、野島一成氏、羽入田新氏、皆葉英夫氏の5人のクリエイターが一堂に会し、スマートフォンプラットホームという新たなステージにチャレンジした作品。物語の舞台は、魔法使いの手によって、“デイランド”と“ナイトランド”のふたつに分断されてしまった世界。プレイヤーは、その境を越えるもの“ボーダー ウォーカー”として冒険をすることになる。ファンタジーストーリーを追うアドベンチャー要素のほかにも、敵とのバトルが楽しめるアクションパートも採用さ れているのが特徴だ。今回は『ボーダーウォーカー』をよく知るために、このゲームを開発したクリエイター5名にインタビューを行ってきたぞ! まずは改めて、今回インタビューを受けてくださった5人のクリエイターを紹介しておこう。(50音順)

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※『ボーダーウォーカー』植松伸夫氏らによる、昼と夜の境を越えた壮大なアクションアドベンチャーが配信

 

■赤尾 実 氏(以下、赤尾)
スクウェア黎明期から第一線で活躍し続けてきたサウンドプログラマー。『ファイナルファンタジー』シリーズや、『ライブ・ア・ライブ』、『クロノ・トリガー』など、手掛けた作品は数知れず。現在はRedSparkというプログラム開発会社を発足。RedSparkでは、iPhone/iPod touch向けアプリのリリースもしている。『ボーダーウォーカー』ではプログラムを担当

■植松 伸夫 氏(以下、植松)
おそらく、世界でもっとも有名なゲームミュージック作曲家。ゲーマーでなくとも、ドコかで一度は必ず植松氏の作品を耳にしていると断言しても問題ないほど、手掛けた作品や代表曲が多い。『ボーダーウォーカー』では作曲を担当。

■野島 一成 氏(以下、野島)
『探偵 神宮寺三郎』シリーズの原作や、『ファイナルファンタジー』シリーズ、『キングダムハーツ』シリーズなどのシナリオを手掛けた、シナリオライター。ファンタジー世界の描写を得意とし、その世界観に引き込まれるプレイヤーは今もなお後を絶たない。『ボーダーウォーカー』ではシナリオを担当。

羽入田 新 氏(以下、羽入田)
スクウェア・エニックス在職時には、数々の作品にPRやビジネスプロデューサーとして関わった人物。現在は、フリーとして音楽活動も続けており、植松伸夫氏率いるロックバンド”EARTHBOUND PAPAS”にもドラム担当として在籍している。クランジー・プロダクツ代表として、同社の第一作となる『ボーダーウォーカー』ではディレクションを担当。

■皆葉 英夫 氏(以下、皆葉)
 『ファイナルファンタジー』シリーズをはじめとする数多のゲームタイトルで活躍している、グラフィッカー兼デザイナー。現在は会社を設立し、活動の幅を広げている。『ボーダーウォーカー』ではキャラクターデザインを担当。

 

●植松さん求職宣言!? 『ボーダーウォーカー』制作秘話にズームイン!

――まず初めに、今回この5人で集まってゲームを作ることになったきっかけを教えてください。

羽入田 もともと、僕と野島さんと植松さんは、プロレスから仲良くなって、そこから音楽の趣味が合ったり、人間的にも合ったりで、親しい付き合いをさせていただいているんですけれども。その野島さんから「僕らが得意としているファンタジーの世界を、より気軽に楽しんでもらえる方法はないかな?」っていう話をずっと前から聞いてまして。その話は、野島さんが植松さんや皆葉さんとも前々からしていたそうなんです。それで、僕が会社を辞めてから、野島さんと何度か茶飲み話をしているうちに、これを企画として進めてみようという想いが強くなって。実際に野島さんに相談をしたら、話に乗ってくださって、ゲームの根幹となるシナリオを書いてくださったんですよ。そこから、一本のゲームとして形にしてゆくために、みなさんに発注をしたという感じですね。なので、植松さん、野島さん、皆葉さんの話を形にするために、僕が加わったという感じですね。

植松 そこまでできた話じゃなかったよ(笑) 「音と物語と絵で、なんか絵本みたいなことができるといいよねー」ってずっと考えていて。でも僕たちにはそれを具現化する力がなかったんだよね、チームとして率いてくれる人がいなくて。ずっと話のまま終わってたんだけど、ある日野島くんが羽入田くんからこの話を受けて、作ろうって感じになったんですよ。だから、ありがたかったですよ。ちゃんと形にする機会を与えてくれて。

皆葉 僕と植松さんと野島さんの3人で話をしていても、形にならずに、だいたい脱線して終わりますからね(笑)

――では、いざゲームを作ろうとなったときに、スマートフォンというプラットホームを選択した理由は何ですか?

羽入田 コンシューマ向けのゲームを作るとなると、パッケージを作るっていう工程が入るじゃないですか? そうなると、必要となってくる人や時間が大きく増えてくるんですよ。そうすると、いまある体制にはそぐわない。ダウンロードするという形であるならば、僕らだけでもいけるんじゃないかと判断しまして。それと、今回はストーリーを楽しむ絵本のようなもの、という話が根幹にあったので、画面を触るだけで動作できるiPhoneを選びました。あとは、画面に直接指示を出すという、スマートフォンが持つダイレクト感っていうのを採用したかったからですね。バトルでは、そのダイレクト感を大事にして、タップとスライドだけで技が出せるようにしています。

――ちなみに、技の種類は何種類くらいあるんですか?

羽入田 隠しもあるのでなんとも言えないんですが……数十個ありますね。でも、四捨五入をして100になるほどではないです(笑) あ、ちなみに一番探しにくいと思われる隠し技の効果音は、野島さんのギターの生音が収録されてるので、それも楽しみにしてください。

野島 ギューンって適当に弾いただけだけどね(笑)

――物語やバトルを気軽に楽しむというのが根幹にあるようですが、『ボーダーウォーカー』に、レベルやアイテム、装備といった概念はありますか?

羽入田 そういったRPG的な要素はいっさい導入していません。このメンバーだと、RPGっていうイメージが強いかもしれませんが、今回はアクションアドベンチャーです。

――ちなみに、構想段階に入ってから完成の形を見るまでに、どれくらいの時間がかかりましたか?

羽入田 1年ちょっとですかねぇ。本当はもっと早く出したかったんですけど、いろいろあってチョット遅くなりました。たとえば、僕たちは今は同じ会社、ひとつ屋根の下にいるわけではないですから、連絡を取るのもタイムラグが発生して。そういう小さなものが積み重なってしまったので、次なにかをやるときは、縮められるところは縮めていきたいですね。ただ、みなさんにお仕事を発注した上で、大きなリテイクが発生したことは一切なかったです。

――スマートフォンという新しいプラットホームで制作をしてみて、どう感じましたか?

植松 フットワークが軽くていいですね。たとえば、大きいタイトルだと、作るのに数百人必要になるわけだけど、今回スマートフォン向けに作ってみて、少人数でも作れるっていうのがわかったし。それに、少人数だと自分の意見が出しやすいし通りやすい。だから、イメージが新鮮なうちに形にもできる。僕は、大きなチームで動くよりは、こういう作り方のほうが好きかもしれない。

皆葉 コンシューマの大きいタイトルだと、作り始めてからリリースされるまでに2年とかかかるんですよ。そうなると、キャラクターをデザインするのに、2年後の服の流行とかを考えながらやらないといけないんですよね。作っているときの服やガラの流行を取り入れてしまうと、リリースされたときには廃れてて「これはないだろ」って言われたり(笑)。 そのほかにも、時間がかかるものだと気にしなくちゃいけない点が多いから、スピーディーに作れていいなぁって思いますね。

野島 確かに、スピーディーに作れるのはいいよね。ひとつのゲームタイトルに何年も関わっていると、その間にふと生まれちゃったアイデアの行き場がなくなっちゃうことがあるんですよ。そういうのがなくなったり、あとは植松さんが言ってたように、自分の意見を発することで、アイデアを採用させたりもしやすいから。あとは、シナリオどうこうってわけじゃないけど、参入するハードルが下がってるのはいいことですよね。少し知識があれば簡単に入れるプラットホームってなかなかなかったからね。まぁ実際にはそんな簡単ってわけではなかったけど(笑)。

――それでは、各クリエイターさんに質問です。羽入田さんが今回プランニングをする際に、何かコンシューマとの差を感じたことはありますか?

羽入田 プランニングっていう作業をしたのは、実は今回が初めてなんですよね。なので、何か違いを感じることもなければ、比較できることもないなぁ。いわば、今回がデビュー作ですよ(笑)。

――赤尾さんは今回プログラムを担当されて、特に苦労された部分はありますか?

赤尾 さっき羽入田さんが説明してくれたバトルの入力と判定は悩みましたね。あと、僕はめんどくさがりなんで、頂いたシナリオとかのデータを、いかに楽に終わらせるかっていうのに注力しましたね(笑)。

――植松さんは、今回デイランドとナイトランドを音楽で表現する際、どういったイメージを持って活動されましたか?

植松 うーん、自分なりにイメージをもって作ってはみたんですけど。完成した今になって、反省する点がいっぱいあるんですよね。デイランドとナイトランドで使ってる楽器をもっと明確に分けたらよかったかなぁとか。なので、続編を作れる機会があれば、その辺も煮詰めていきたいですね。

――皆葉さんがキャラクターをデザインする際に、デイランドの住人とナイトランドの住人、それぞれにどういったイメージを持ってデザインされましたか?

皆葉 世界が昼と夜に分けられてから500年も経っている設定ですから、やっぱり違いますよね。デイランドのほうが陽気だとか、ナイトランドの人は落ち着いているとか。でも、それに合わせて二極化してしまうと、すごくデジタルなものになってしまうので、あまり強い意識はしていません。それに、自分が持っているイメージでデザインをしても、裏に複雑な設定が入ってくると、ちょっと問題になっちゃうので、あまりイメージの差は出してないですね。

――その中で、皆葉さんが一番気に入っているキャラクターは誰ですか?

皆葉 このネオンっていう騎士が自分の基準点になったので、気に入っているキャラクターのひとりですね。

野島 まったく関係ないけど、ネオンっていう名前は、ブラック・サバスっていうロックバンドの曲『ネオン・ナイト』から取ってるんだよね。

羽入田 やっぱりそうだったんだ(笑)。

――そのほかにも、曲名に由来しているキャラクターはいますか?

野島 いやぁ、覚えてないな。でも、僕が作業しているところから見える何かにちなんだものになっているとは思う。

――今回野島さんが書かれたシナリオでは“境界”がキーワードとなっているようですが、“境界”を描くのに“昼”と“夜”を選んだ理由を教えてください。

野島 僕のTwitterのタイムラインは、午前3時から4時にかけて人が大きく入れ替わるんですよ。「おやすみなさい」っていう人と、「おはよう」っていう人が出現し始める時間帯。それがチョットおもしろくて、何かに使えないかなぁって前から思ってたんです。それと、僕自身は夜型人間なんですけど、子供は朝の8時くらいに学校に行くんですよ。で、見送ったら僕は寝ちゃう(笑)。 夜型の僕と、朝型の子供がほんの一瞬だけ、その境目にだけ接点を持つっていう生活が面白くて。

――なるほど。では、今回のシナリオをどんな人に読んで楽しんでもらいたいとお考えですか?

野島 最近は、ファンタジーと言いつつも結構ハードな、理詰めなものが多いんですよね。そうじゃなくて、もっと想像の余地がある、おとぎ話に近いノリが好きな人に楽しんでもらいたいです。「設定が完璧に決まっていないとダメ」という人は、ご自分で好きに解釈をして、その隙間を埋めていただければ楽しめると思いますよ。物語の解釈を楽しんでください、きっと答えはないので。

――みなさんは、スマートフォンのゲームで遊んだことはありますか?

羽入田 iPadは買ったばかりなので麻雀ゲームくらいしかやってないですね。息子が『太鼓の達人』にハマっています。僕はひたすら麻雀ばっかりやってますが(笑)。 あとは『ストリートファイター IV VOLT』をよくやってましたね。通信対戦でもストレスなく遊べましたし。

皆葉 僕はスマートフォンは持ってなくて、iPadしか持ってないんですけど、ゲームで遊んだことはないんですよね。そもそも、クレジットカードがいまだに信用しきれてなくて、アプリの購入ができないんですよ(笑)。 iTunesカードを買うのも、ちょっと面倒だし。なので、アプリ自体、そこまで入れてないですね。

野島 僕は、ゲームランキングの上のほうにあるやつをちょっとダウンロードして遊ぶくらいかなぁ。でも、『AngryBirds』は、かなり遊びましたね。あと『上海』! 『上海』は、人生に支障が出るくらいやったなぁ(笑) アイコンを触ったら即遊べる、立ち上がるのが早いとダメだね、ついつい遊んじゃうから(笑)。

赤尾 僕は野島さんと一緒で、ランキングの上位にあるやつをダウンロードするくらいかな? あとは、ゲームじゃないけど、自分たちで作ったアプリを触るくらい。

植松 『タングラム』っていうゲームアプリは人生を捧げるくらいやってます(笑)。 あと、音楽アプリは結構買っていろいろ試したなぁ。でもやっぱり、真剣に音楽制作をしようと思ったら、アプリよりもこの部屋の機材を使っちゃいます。

――では最後に、これからスマートフォンでゲームを作ろう、作りたいと思っている方、または現在ゲームを作っている方たちにアドバイスや一言コメントをお願いします。

赤尾 うーん……ガンバレ(笑)。

植松 僕らも、スマートフォンでゲームを作ったのは今回が初めてなので新参者なんですけど、スマートフォンゲームは特にアイディアが求められると思う。「○○みたいなゲームを作りたい!」だけじゃなくて、そこに自分だけの独自性を盛り込んでいかないとね。あと、仕事ください。オーダーをいただければ、喜んでお受けします!(笑)。

野島 ひとりで全部できちゃう人は、自分との闘いになると思うので、アドバイスは難しいんですけど……。仲間と作ろうって思っている人は、いいリーダーを見つけてください(笑)。僕らみたいに愉快なリーダーを見つければ、きっと楽しく作れますよ。

皆葉 世の中で、僕らがいちばん恐れている人は、素人なんですよ。素人は、変に常識に固められてないぶん、僕らにはない考えができるし、それが突発的なブームを作り出すことがあるんですよね。そういったムーブメントを作れるように、がんばって欲しいです。

羽入田 参入までのハードルは低くなってはいますが、やっぱり簡単に作れるものではないと思うんですよね。プログラムやインターフェイスを作ることを考えると。でも、作り手さんの熱意が込められているものは、必ず受け入れられると思うので、若いみなさんには熱意を持ってチャレンジしてほしいです。今回僕らが作った『ボーダーウォーカー』も、僕たちの熱意が込められているものだと信じているので、その熱意に触れてもらえればと思います。

偉大なクリエイター5人の熱意が込められたゲーム『ボーダーウォーカー』は、900円[税込]で絶賛リリース中! 作り手の熱意を感じ取りたい人も、ファンタジー世界を堪能したい人も、ぜひともダウンロードをして、巨匠たちの合作を味わってみてはいかがだろうか?

【おまけ】
●まさかの快諾!? アプリで作曲、作画をお願いしてみた!

さて、インタビューはこれで以上なのだが、そこで終わらないのが、我らファミ通App編集部。せっかく音楽が作れる人、絵が描ける人が集まっているんだから、アプリで何かをしてもらおうと思い立ち、失礼を承知でちょっとしたお願いをしてきたのだ! そこで今回お願いに利用したのが、シンセサイザー(?)アプリ『Beatwave』(無料)。これは、小難しく譜面をどうこうするアプリではなく、ただ画面に描いた絵が楽譜になるというもの。絵を描くという性質のほか、画面サイズの問題もあり、長い曲の作曲はできないが、音楽の知識がまるで必要ないため、誰でも数十秒で曲が作れてしまうというものだ。このアプリを植松さん、皆葉さん、羽入田さんの3人に実際に触ってもらい、作曲していただいた。しかも、その作品を公開してもいいとの許可もいただいてきたので、ここでドバーっと公開! なお、音源へのリンクは『Beatwave』がインストールされたiPhone、iPad、iPod touchでないと利用できないので注意されたし。

■植松さん作品

▲「あぁ、これは知識じゃなくて感覚で作るものなんだね、面白いよ」というコメントとともに頂いた譜面と曲がコチラ! 2枚目の譜面に遊び心が感じられる作品だ。ちなみに、仕様を把握されてから、完成までに30秒ほどしかかかっていない。
曲の試聴はコチラから
(※アプリ『Beatwave』をインストールしたiOS端末が必要です)
■皆葉さん作品
▲ドット絵時代から活躍されていたそのスキルは、今もなお健在。見事狭いキャンパス内にア○パンマン(らしきもの)を描きあげている。
曲の試聴はコチラから
(※アプリ『Beatwave』をインストールしたiOS端末が必要です)
■羽入田さん作品
▲「羽生田くんはゴ○ゴ13を描かせたら上手いよ」というコメントを野島さんから頂いたため、急遽羽生田さんにも依頼し、ゴル○13っぽいものを描いてもらった。ドットが大きいため、潰れてしまっている部分もあるが、なるほど上手い!
曲の試聴はコチラから
(※アプリ『Beatwave』をインストールしたiOS端末が必要です)

最後にお遊びに付き合っていただいた植松さん、皆葉さん、羽入田さん、本当にありがとうございました!

【Beatwave iPhone版】
メーカー:collect3
配信日:配信中
価格:無料
対応機種:iPhone/iPodTouch

【Beatwave iPad版】
メーカー:collect3
配信日:配信中
価格:無料
対応機種:iPad

ボーダーウォーカー

メーカー
クランジー・プロダクツ
配信日
配信中
価格
900円[税込]
対応機種
iPhone/iPodTouch

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